2015年12月21日月曜日

バー・カウンターでジントニックとシガーを

「いらっしゃいませ・・・」

「どうも・・・後から連れが1人来るんですけど」

「かしこまりました」

「それで、そうだな、今日はジントニックからお願いします」

「かしこまりました」

そう言うと彼、いや「彼」と言ってしまわない方が良い。

オレに16才の頃から、酒の味、文化、雰囲気を教えてくれた人。
そう、オレの酒の師匠とも言える人に「彼」はなかったな・・・。

この地域では、一番のベテラン・バーテンダーのKさん。
最近は「マスター」と呼ぶお客が多いが、馴染み客は名前で呼ぶ。

オレたち仲間にとっては、ガキの頃からずっとKさんだが。
Kさんは静かに手短な返事をすると、ボンベイサファイアのボトルに手を伸ばした。

その日も、突然の訪問だった。
もっとも、オレはバーに予約を入れるほどヤボじゃない。

そしてオレはいつもの席、一番奥のバーカウンターチェアに身を置いて。
となりの席に荷物を置くヤボなこと、コレもまた、いつもならしないのだが。

カウンターに「マスター」と呼ぶ輩(やから)が団体?で5名ほどいて。

バーカウンターにしては、騒がしくしているその連中との間に。
3席しかなかったので、あえて連れの席をキープするためカバンをおいた。

・・・バーに来て、男5人でカウンターね・・・・・。
しかも男にしては、おしゃべりでうるさいヤツラだな・・・・・・・・。

オレは心の中でつぶやいたが、「男にしては」と書けば。
バーカウンターが似合う女性に「ソレって女はおしゃべりってコト?」と怒られそうだ。

いやいや。そんなことを言うつもりは、ぜんぜんない。
またバーカウンターでは「男は黙って酒を飲め!」と言うつもりも、毛頭ない。

バーだっておしゃべりして、男も女も楽しくにぎやかに過ごして良いのだが。
にぎやか過ぎるのは、バー以外のレストランや飲食店でも迷惑な行為だと思う。

それほど彼らの話声は、他の人と隣接するカウンター席にしては大き過ぎて。
マル聞こえの内容に具体的な会社名など出ていて、ヤボな連中だっただけだ。

たとえて悪いが、ベテランのママを目当てに鼻の下を伸ばしたオッサンが。
カウンターを陣取るスナック、それはそれで味があるとしても、この店はちがうんだ。

いや、何よりも。スナックでもバーでも、カウンター席で。
男5人で連れ立って横並びなんて、絵にならない、ハッキリ言ってヤボだ。

「おまたせしました、ジントニックです・・・」

時間にして、こんなことを考えていたのも数分間だった。

オレのつまらんイラついた気持ちをすっーと静めるかのように。
Kさんの言葉と共に、そっと目の前にグラスがおかれた。

ジントニック。ジンとライムとトニックウォーターで構成された一杯。
シンプルだが、シンプルゆえにカクテルとしては奥が深いといえるだろう。

バーにより、それぞれの味があり、提供の仕方もちがう。
そのバーやバーテンダーさんの特徴、また好みが出やすいとも言える。

ちなみにマティーニも、同じジンベースで構成はシンプルだが。
まさに千差万別、カクテルのAにしてZ、入門にして卒業の一杯とも称される。

今、最新作が上映中の007、かのジェームズ・ボンドは。
ジンでなくウォッカで、しかもシェイクという指定までしている。

これが世に言うボンド・マティーニだが、シリーズ第1作で供された一杯が。
オマージュをこめて、最新作ではおもしろい形式で登場している。

そういえば。

先日の銀座のバーでお目当てにした一杯も、その店のオリジナル・マティーニ。
・・・そう、マティーニは、レシピがあるようでないのかもしれないな、と思い出しながら。

そのジントニックは、一口で心を静めるには十分すぎる一杯だった。

「いらっしゃいませ・・・」

「お待たせ・・・近いけどタクシーで来ちゃった・・・」

Kさんの声と共に、オレの隣に身を寄せる連れ。
タクシーで来た、少しでも早くアナタに会いたくて・・・なんて余分なセリフはない。

知り合いが見れば、不思議がるかもしれないが。
オレと連れは、二人きりの時は意外としゃべらない。

それでも、バーカウンターでの香水の話になって。
そして、それはシガー(葉巻)の話へと変わって言った。

「・・・反対に言えば、じゃなんでシガーはバーカウンターでOKなのか?

香りも強いのに、むしろ必需品として、酒のパートナーとして。
バーにはつきものだけど、香水がダメなのに!これじゃ不公平よ!って。

世の女性に言われそうな気もするね・・・」

「あら、シガーは当然でしょ?だってお酒の香りとシガーの香りのマリアージュ

きちんとしたフレンチのレストランでは、ワインとお料理と同じように
食後のお酒に合わせて、ソムリエさんがシガーをすすめてくれるわよね

・・・でも、あなたってシガーしないじゃない?いつも、お酒ばかりで・・・」

「ああ、興味があって、若い時にチャレンジしたいと思ったことがあってね
でもなんか、まだ背伸びしすぎかな、って感覚もあってさ、遠のいていたんだ

でも、そろそろ試してみようかな・・・始めるならこのKさんの店と決めていたんだ・・・」

「そうよね、アナタの師匠のお店だものね・・・でもこのお店、シガーなんてあったかしら?
目にしたことがない気がするわ?どこにあるの?見落としているのかしら?・・・」

「いや、シガーの品質を管理する意味もあって・・・
これ見よがしに、バックバー(カウンターうしろの棚)に置いていないだけさ

中には、これでもか!ってライトをあて、
バックバーのど真ん中にドーン!と飾っている店もあるけど・・・

ココはちがうんだ、シガーの状態を良好に保つためにきちんとしまってある・・・
たしか、そうですよね、Kさん?シガーのメニューもありましたよね・・・」

「はい、ウチでは品質を保つため、シガーは目に付くところにおいていません
ご興味がある、ご注文したい方にお声がけいただいて、初めてメニューをお出しします」

「そうですよね、それに銀座でしたっけ?初めてのバーでKさんがシガーを出して
アウェイ感いっぱいのカウンターが、一気に見る目が変わったという話は・・・」

「はい、銀座でなく、京都のバーの話です・・・職業柄、全国でバーはよく行きます
おもしろいもので、バーテンダーは同業者とわかるのですが、お客さんはわかりません

その日も、どこの誰が来たんだ?カウンターに陣取って・・・という目で見られていました

それがシガー大丈夫ですか?と聞いて、ポケットから出してシガー・カッターで切って
専用のライターで火をつけて味わい始めたんですが・・・ちょっとザワってして・・・・

アイツ、シガーを出したぞ!それに自分でカッター使って!専用ライターで!なんて!
何者なんだ?アイツは?・・・という感じが他のお客さんから伝わって来ました」

「なるほどね~・・・バーに通いなれた人間は、時に通っている常連よりも
バーテンダーさんに一目置かれることがあって、シガーもその一つ、って話

この間、したばかりなんですよ・・・」

・・・こうしてその日の夜も。

シガー以外にも、いろいろな話で盛り上がったが。
とうとうシガーは試すこともなく、楽しく連れと飲んだオレは。

ホームグランドをあとにした。

それでも思ったとおり、オレは酒を教わったKさんに。
次の機会に、シガーを教わった・・・少し大人の香りがする気分を味わいながら。

実に昔からのなじみのバー、いやバーに限らず通い続けているお店があるということは。
人生を豊かに、幸せにしてくれるものだ・・・これは、オレが曲げたくないポリシーの一つだ。

ぜひ2代目横丁の読者の方にも、男性・女性を問わず。
マイ・バー、通いなれた店、人生の止まり木を見つけて欲しいと思う。

では、次回は。
お寿司屋さんのカウンターで起きた事件についてお話しよう。

その事件は、バーで起きてきた一連の連続事件とは異なる性質の事件だ。

寿司屋さんのカウンターに関するものでなく、経営者としてリーダーとして。
社員やスタッフが辞めた、そんな時に感じるストレスについて少し話したい。

ではでは、また。
次の機会に、お会いしよう。

2015年12月15日火曜日

A君を想う・・・

「先輩、ホントにコイツはエライんですよ!」

・・・あれは10年ほど前のこと。

当時、地元で少しずつ評判が上がっていた新規開店のバー。
そのカウンターで、後輩のA君と2人で飲んでいた夜です。

後から1人で来た、後輩のB君が。
オレたちと肩を並べて、カウンターに座った時の第一声でした。

一緒にいたA君は、14才年下の後輩。
後から来たB君は、2才年下の後輩。

共に、ある青年経済人が集まる異業種の会で。
A君は現役、B君は卒業したばかり、私は卒業して数年が経っていました。

その青年経済人の会で、A君は自分自身のことでなく。
その会の諸先輩から、何かといろいろ言われていたらしく。

そのことに頭を下げていた、その姿がエライ!とB君は言い出したのです。

A君が何かと言われ、頭を下げていたこと。
それはA君の会社の先代社長、お父さんのことでした。

このお父さんもまた、同じ異業種の会に所属していました。
当然ながら、A君のお父さんを知る同世代の先輩方もいます。

そしてA君のお父さんは、自分にも周りの人にも厳格で。
周囲との摩擦を恐れず、ハッキリと意見を主張する方でしたので。

同世代の先輩方の中に、お父さんとハダがあわない方、嫌う方がいて。
A君は「オマエのオヤジは・・・」と、アーダコーダと言われていたのです。

このように、先代社長のことを世間からいろいろと言われる時。
特に男性の2代目社長が、父親である先代社長の評判を耳にする時。

数多くの2代目社長やその予備軍を目にしてきた経験と。
自分自身の経験からすれば、大きく3つのタイプに分かれる気がします。

というのも、考えてみれば。

2代目として先代から経営や会社を引き継ぐのは、財産の相続と同じです。
不動産やお金だけでなく、いろいろな目に見えない資産と負債が存在します。

先代に対する評価も、経営者として引き継いだ財産の一つ。
大事な資産もあれば、返さないといけない負債もあるからです。

そう、一つは2代目社長として自覚と責任があり、客観的に先代を見ているタイプ。
A君のように先代の負債を返しながら、社長として自分自身の資産を増やせていける人です。

二番目のタイプは、2代目社長として自覚と責任が薄く先代をライバルまたは無関係と考えて。
先代から相続しながら踏み倒して、社長として自分自身の負債を積み増している人です。

このタイプで、思い出すのは。
先代のお父さんとの約束を持ち出して、守ってくれるようにお願いした時に。

ある2代目社長が「そんなことは、先代に言ってくれ!」と怒り出して。
「もし文句があるなら、先代の位牌を自宅の庭に出してXXをかけてくれてイイから!」と。

言い放った事件です。

3つ目は、2代目社長として自覚と責任がほとんどなく先代にオンブにダッコのタイプ。
先代から本当の意味で経営や会社を相続してない、社長としてカタチだけの人です。

たぶん、このタイプの2代目社長は。
アナタの身の回りにも、何人かいないでしょうか?

肩書きは社長でも、先代にお伺いを立てないと返事ができない。
こんなことをしている2代目は、決して少なくない気がしています。

そんな・・・立派に先代からの資産も負債も引き継いで、自分自身の資産を積みまして。
自らの力でも、経営者として、リーダーとして、多くの資産を積み上げていたA君・・・・・・・・。

異業種の会で、数多くの若い仲間から慕われて。
社員を大切に、そして会社の業績をガンガンと伸ばしていた彼・・・・。

・・・そのA君が、10月半ば。

1年におよぶ闘病生活の中、社長としての職責を全(まっと)うしながら。
わずか40歳そこそこの若さで・・・・・亡くなってしまいました・・・・・・・・・・・・・・。

・・・このことを。

書き留めておきたい、と思いながら。
何度、このブログに掲載すべきか?迷ったことでしょう。

誰の眼に触れるか、わからないブログに書くべきことなのか?公開してよいのか?
自己満足の追悼記事にならないか?個人的に書き留めておけば良いのでは?・・・と。

悩み続けて、しばらくブログから離れていました。

たしかに、忙しく時間がなかったのも本当のことですが。
ブログを書く気になれない、それがブレーキとなっていたのも事実です。

そう。冒頭のバーでの話は、A君との思い出のエピソードの一つです。
それから、しばらくして。後でB君に話したのが、後段の先代の資産と負債の話です。

人は身近な人が亡くなった時、近しければ近しいほど。
それも、自分よりも若い人が亡くなった時にはなおさら。

心の整理がつくまで、より多くの時間がかかると思います。

そして亡くなった人に手を合わせながら、その人と自分の人生もふり返る。
いわゆる死生観を思い、生き残った者として、これからどう生きるべきか?と考える。

その結果。私の場合、ここにA君のことを記(しる)しておこうと。
同じ2代目経営者として、懸命に生きてきた彼のことを2代目横丁に記しておこうと。

それが先輩として、生き残った私の役目と思って。
今日、彼のことを書きつづる事にしました・・・。

A君のことは。

ただただ、残念であり、若すぎると思うばかりですが・・・。

その上で、このブログを読んでいるアナタに。
少しの時間、考えてもらいたいと願っています。

人は、生まれる場所と時間と。
亡くなる場所と時間は、自分では選べないといいます。

そうだからこそ、一生どころか、数年、1年、半年、1ヶ月とは言いません。
1日とも、半日とも、数時間とも、もしかしたら1時間とも言えないかもしれません。

30分でも、10分でも、今このブログを読んだ後の数分でも。
ホンのわずかと思える時間でよいので、悔いなく生きたいと。

このように思ってもらいたいと考えているのです。

これがA君のことをブログに記した、私の思いです・・・。

本当に、若すぎる・・・。
改めて、A君のご冥福を心から祈って。

合掌。

2015年12月11日金曜日

給与所得者は納税者?納税奴隷!?

最近、地元の新聞社さんなどが中心になって。
起業家を発掘する、育てるという事業が始まりました。

その中で、2代目経営者が既存の会社をベースに。
新しい戦略で、新規事業にチャレンジした実例が。

学生部門、新設企業部門など。
他の部門とあわせた総合評価で、最優秀賞になりました。

実は。この2代目経営者さんは、同業者で知人です。

社員11名の会社。

本社は、ハッキリ言って辺鄙(へんぴ)。
田舎の国道から、少し入った所にあります。

その会社が、海外で。
環境問題に取り組むビジネスで最優秀賞をとったのです。

このように。

身近な人、知っている人、地元の人、年令が近い人など。
なんとなくイメージが持てる人が、何かを成しとげると。

「何か自分にもできそうだな」
「何か自分もてきるんじゃないかな」と。

彼(彼女)ができたんだから。
自分も!と思うことが、誰でも1度はあると思います。

しかし。できそう、と。
できる、とは無限に離れています。

できそう、を別の視点で言い換えれば。
成功ゼロ、実績ゼロ、行動ゼロの世界。

できる、とは事の大小や程度は別にして。
何かに成功した、実績を出した、行動した世界。

ゼロと0.0001でも、そこには無限の格差が広がっています。

同じように。

やれること、と。
やっていること、も違います。

やれる、とは一定のレベルや程度に達した世界。
やっている、とはレベルや程度に関係ない世界。

プロとして自覚を持って仕事をしている状態が、やれる。
プロとは名ばかりで流れ作業をしている状態が、やっていると考えます。

私たちは経営者として、自分の経営を見る視点として。
また社員の仕事ぶりを見て、それを査定する立場として。

自分自身も、社員についても。
できそう、やっている、ことに高い点数はやれません。

できそう、やっている、に満足していては。
成長も、発展も、拡大も、成功もないでしょう。

そう、私たちは、自分自身にも、社員にも。

できる、やれる、ようになりたい!なってもらいたい!
できる、やれる、のレベルや程度を上げる!上げたい!と。

プロならば、職業としているならば。
このように思って仕事をしなくてはいけないはずです。

ところが、今の日本では。

できそう、やっている、で満足して。
できそう、やっている、で仕事をした気になって。

平気な顔して、給料や経費のお金を頂いて。
しかも平均的なビジネスマンより、かなり高額なお金を手にしている。

こんなトンでもない人種が、ほとんどを占める業界があります。

それは政治という業界、政治家という人種です。

「反対しても、票にならない」
「賛成すれば、票が減る」

これが、政治家の行動基準です。

どんな会社でも、その規模の大小に関係なく。
社員は給与所得者であり、納税は限りなく透明です。

同時に、その規模の大小に関係なく。
法人化された企業では、社長も給与所得者です。

そして。おそらく、多くの大会社の役職さんとか。
中小企業でも、そこそこのクラスの社長なら。

給与や所与や一時金などの給与所得の年収が。
1千万を超える人が、そんなに少なくないでしょうが。

実際は、年収が1千万を超す会社員は約199万人であって。
有権者の2%足らずという立場、少数派中の少数派なのです。

残りの98%の人から、成功した人、庶民じゃないと評されているので。
2%程度の極度な少数派の人たちをいじめるような法律や制度を作っても。

政治家の行動基準からすれば「票が増えても、減るわけない」のです。

その結果、消費税の食品関係の減免が。
声高かに論議されて、連日のようにマスコミでも騒がれる一方で。

この階層の人たちの増税や税率は高止まりしていて。
かなりの重税感がある、というのがホンネではないでしょうか。

実は。この2%の199万人で、所得税全体の25%を負担しているのです・・・。

しかも、一見すると所得税はお金持ちになる高収入ほど高くて。
最高は45%にもなるので、高い税負担も仕方ないようにも見えますが。

株式など金融資産を多く持つ資産家たち。
いわば本当のお金持ち、富裕層の人たちの税率は安いのです。

現実に、たとえば東京都下の銀行には。
一つの支店に、資産ウン十億円の人たちがかなりいます。

主に金融資産による売却益や利息、家賃など不労所得者で。
そんな彼らの暮らしぶりを見ると、給与所得がいかにバカらしいか。

こんな思いまで、起きてしまうほどノンビリと優雅に。
付き合いたい人とだけ付き合いながら、手取り所得を増やしています。

こうして、給与所得者は不公平感を持って。
労働対価に重税をかけられ、手取りを減らされて。

納税者でなく、納税奴隷として日本を支えていますが。

どうやら、さらに増税されるらしいです。

「社長の仕事は、社員のモチベーション・マネージメントにつきる」

と星のリゾートの星野社長は話していましたが。

政治家は、今の国を支えている給与所得者のモチベーションを。
下げることしか頭にないようで、日本人の納税意識が低いのも。

単たる国民性でなく、このような不公平な税制度にあると言えそうです。

2015年12月9日水曜日

1ヶ月あまりのお休み

マイッタ、という言葉が一番あっている表現だと思えます。

今年は、1月から何かと時間に追われることが多かったですが。

仕事だけでなく、組合のこと、そしてプライベートも。
すべてにおいて、これまでにないくらいガンガンと予定を入れて来ました。

そして、さまざまなお声がけやお誘いの中で生きて。
目の前の話や事柄に追われて、時間を消費、時には浪費。

そのピークが、10月~11月にやって来た結果。
このブログも、1ヶ月あまり休んでしまいました・・・。

時間を消費するとは、日常的に発生する業務や依頼を淡々とこなすこと。
目前のことや突発的なこともあり、緊急度が高いものへの対応と考えています。

浪費とは、緊急度が高いが重要度が低いことに時間を無駄遣いすること。
義理や儀礼やおつきあい、私の時間を奪いに来る多様な依頼などのことです。

本来は、投資、重要度が高いけれど、緊急度が低いもの。
たとえば、知的生産、健康維持、新しい事へのチャレンジやテストなど。

年当初から、24時間という限られた時間を投資にシフトしたいが。
なかなか叶うことなく、忸怩(じくじ)たる思いの中で時を過ごして来ました。

最近、ようやく少し落ち着いて。

その投資の時間を増やすために、どうしたらよいか?と。
ドタバタあえぎながら、時間の許す限り考えてみたのですが。

もちろん、手法としてはスケジュール管理やタイムマネージメントでしょうが。
根本的な考え方を間違えていて、このような現状があると感じていたので。

時間が。なぜなくなるのか?なぜ投資にまわせないのか?と悩んでみました。

その結果。

人とのかかわりをどうしていくのか?という工夫が足りないと時間はなくなる。
人とのかかわりをコントロールすることがタイムマネージメントの目的である。

という発想にたどり着きました。

なぜなら、人間社会にドップリとハマっている私を含めた多くの人にとって。
日常の時間とは、そのすべてが人とのかかわりから生まれるものだからです。

その一方で、投資とはタイミングが大事。

時間でも、株式でも、刻々と変化する未来からの流れの中で。
タイミングが合うものが現在、現実、事象となって現れて投資の機会が起こる。

タイミングが合わないものは、自分とは関係ないままに過去へと流れていく。
その合わない流れを無理に追えば、過去にとらわれ道に迷うことになる。

失った時間、失った株の損失、失った投資の機会、それらを取り戻そうと。
再投資するあまり、かえって状況が悪化、苦境に立たされる事例は多い気がします。

過去から現在、そして未来へ時間は流れるのでなく。
未来から現在、そして過去へ時間は流れていくのであって。

タイミング合わず、過去になったものは。
消失したものであり、まったく同じには手にできないのです。

そしてまた、人とのかかわりもタイミング、まさにご縁。

ご縁が未来からやって来て、ご縁が現在できて、時にはご縁は切れて過去となる。
だから来るご縁を大切に、できたご縁を育んで、切れたご縁は無理に追わない。

タイムマネージメントと程遠い状況で、生き急ぎ感は否めないのですが。
忙中閑あり、それなりに楽しみながら、心根をこのブログに綴り、愛する人とのご縁を紡いで。

今、どうにか生きている気がしています。

2横ブログ、復活です!

2015年10月14日水曜日

銀座のバーでヤッチマッタ!【回答編】


その日、2軒目のバーも。
運がイイことに、カウンターに座れた。

もっとも。この時間、この曜日、週末の夜。

食前か、食後に立ち寄るお客が多いであろうバーは。
しかも銀座ともなれば、混んでいているだろうと予測していて。

実は。最初から「本店」を目指さなかった。

著名なバーテンダーさんの弟子が、店長&バーテンダーを務めるバー。
「本店」やその系列店で飲める、オリジナル・カクテルが飲みたくて。

いや、連れにすすめたくて。
座れる可能性の高い、このバーに来たのだ。

「・・・・ところで、さっきのバーのカップルの女性は。
まさにヤッチマッタ!よね・・・君ならわかると思うけど・・・」

オレは、一杯目にオーダーしたオリジナルのマティーニに口をつけたあと。
となりの連れに、前のバーで起きた一つ目の事件を切り出した。

「そうね・・・バーで、しかもカウンターで女性が避けてほしい3つのこと。

1つはバッグ、お鮨屋さんでも他の飲食店でもそうだけど。
バッグをカウンターに置く、というのはやめた方がイイわね。」

連れは、オリジナルの見た目も美しいカクテルを楽しみながら。
そのクォリティに満足した様子で、微笑を浮かべながら応えた。

「そのとおり、バッグはドコにおくか?
その点、このバーも前のバーも、事前にお店側が対応してくれたね。

そして2つ目は、同じくお鮨屋さんのカウンターでもNG。
女性の香水。香水の香りが魚、そして酒の香りを消しちまう・・・。」

「まぁ、そこまで香りをさせている人は、バーや飲食店だけでなくNGだわ。
この間、ゴルフ場のロッカールームでいたわよ、ちよっと・・・ね!という人が。」

「あと1つ、女性がバーのカウンターでやってしまいそうなこと。

それを前のバーの彼女は、ヤッチマッタ!わけだけど。
君には聞こえた?彼女のオーダーの言葉、耳にしたかな?」

「ええ、結構ハシャイでたというか、あのバーに来たくて。
初めて連れてきてもらったみたいで、若い子だったみたいだけど。

おススメで!って言っちゃってたわよね・・・。」

「そうそう、おススメで!って目の前にいたサブのバーテンダーさんに言った瞬間。
ほら、オレたちの前にいた大ベテランのバーテンダーさん、その人さ、ひと言。

ウチは定食屋じゃないんだけど!って、小声でボソッ!っとつぶやいたんだ!
お見事!というか、そうだよなぁ~とオレも思ったけどさ、ちょっとおもしろかったよ。」

「へぇ~そうなの、あのバーテンダーさんがね、それは私には聞こえなかったけど。
でも彼女のおススメで!を耳にして、私もアララ!ヤッチャッタ!って思ったわよ。

ある意味で、バーのオーダーでの禁句の一つだもの、でもね、今は少し違うわ。
最近の若いバーテンダーさんは、きちんと受けとめてくれるもの、大丈夫よ。」

「そうだね、まぁ定食屋じゃないよ!というのは、ベテランさんらしいセリフ。
というかホンネかな、あの大ベテランさんのクラスならではことだと思うよ。

たしかに、あの女性がおススメで!とオーダーしたら。
サブのバーテンダーさん、ちゃんとサポートして。

彼女の味の好みやアルコールの強さなど、聞いていたからね。
それで何かしら、彼女に合うようなカクテルを出していたっけ。

そういう点では、最近は女性のおひとり様でも、安心して。
イイ感じで飲める、そんなバーもたくさんあるからね。」

「そうよ、だってあなたの一番のお気に入りのバー。
あそこのマスターだって、ベテランのバーテンダーさんだけどやさしいわ。

女性ひとりでもいい感じて飲めるし、安心してお酒を楽しめるわよね。」

「たしかに。バーに一人できた女性を安心させること、というか。
ヘンな酔っ払い男から、声をかけたり、不快な思いをさせたりしないように。

さりげなくガードするのも、バーテンダーの役目かな・・・。

そうそう!女性に声をかける、っていえば。

オレの右隣にいた30代くらいの若い男なんだけどさ、コイツがさ・・・。
そのまた隣にいた白人の女性の二人連れに話しかけてたんだけど。」

「え?そうなの?そんな人、いたんだ。
あなたの影で、見えなかったけど・・・。

ふーん、でもどうして白人とわかった?
あなたも、その二人に興味があったわけ?」

「え?いや、そんなことはないよ!
チラッ!と見えた横顔が、白人だったというだけで・・・。

うん、まぁ、そういう男がいたんたけど。
この人は、どうやらあのバーの常連さんらしいんだよ。

自分はこのバーに通って、育ったようなもんだ、って。
大ベテランさんに話していたのを聞くともなく耳にしたからね。

それがさ、俺たちにモスコミュールをつくってくれた人。
別の大ベテランさんの女性がいたろ?」

「フフフ、横顔ねぇ~。
まぁいいわ、白人だったのね?

その白人の女性に、声をかけていた男がいて・・・。

あのオバァちゃんのバーテンダーさんね。
彼女の出してくれたモスコミュール、おいしかったわ!

あのバーで、一度は飲みたかったのよ!」

「そう!その人にね、そのモスコミュールの話をしていたんだ。
この間、別のバーに行ってモスコミュールをオーダーしたらしいんだけど。

そこで、これはオレがいつも飲んでいるモスコミュールじゃない!って。
オレは文句つけたんだって!こういう話をしていたんだよ。」

「アララ!その男子も、ヤッチャッタ!わね!
これも、バーで禁句の一つって言ってイイわよね。

モスコミュールは食前や食後を問わないオールディだし。
多くの人が知る、メジャーなスタンダードカクテルよね。

アレンジやそのスタイルは、あの老舗のバーを含めて。
バーの数と同じくらいあるわよ、それを比べても、ね!

まぁバーに限らないけど、他のお店と比べて文句を言われたら!
どうぞ!そちらのお店にお行き下さい!って。

失礼な人!って私なら思うわよ。」

「そうなんだよ、それでその男性もたしなめられたの。
そういうことは、口にすべきことじゃないですよ!って。

そのバーテンダーさんに・・・。」

「フフフ・・・なるほど、さすがだわね・・・。

そうだ!次は何しようかな・・・。
今夜はもうカクテルじゃなく、何かモルトにして・・・。

いつもならロックか、水割りだけど・・・。
今日はあなたがススメテくれた、トワイスアップで楽しもうかしら・・・。」

・・・・こうして、銀座の夜は。

小雨の中、静かに時を重ねるバーと共に。
連れとオレの時間をさらに豊かに、そして心暖かく。

演出してくれるのであった・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・。

ここで最後に・・・・告白しよう。

実は・・・この日、オレが行ったバーは2軒とも。
初めて行った!つまり一見さん!だったのである。

にも関わらず、10代のころから。
バーカウンターの隅っこで、周囲の大人を見て。

そのころの愛読書が、カクテルのレシピ集だったり。
仲間からの誕生日プレゼントが、洋酒の大辞典だったり。

酒やバーに、それなりになじんできたオレは。

地元や出張先で、予約などせずに。
事前にリストアップしたか、紹介されたバーに行くこと。

これを趣味としていて、ある程度なれていると自負している。

そのため2軒目のバーでは、一見さんにも関わらず。
若い店長も勤めるバーテンダーさんからは、再訪のお客か。

自分の師匠筋のバーのお客と思われたが。
あたり前だが肯定もせず、といって誤解を解くわけでもなく。

ただ、静かにその場と酒を心ゆくまで楽しんでいた。

もちろん、いくら年齢がオレより若いとしても。
実は、ここのバーテンダーさんは女性であったが。

無論のこと、女性であっても。
オレは、言葉遣いやオーダーには気をつけている。

それは、若いバーテンダーさんを試すとか。
陰険で偉そうに、上から目線でいるのでなく。

オレの流儀として、バーでは余分なことを語らないこと。
オレも連れも楽しく飲めればイイ、これに徹しただけだ。

それにオレだけでなく、そのバーの常連でなくても。
バーに通いなれた人間は、時に通っている常連よりも。

おそらく、バーテンダーさんに一目置かれるだろう。

そう。次回はシガー、葉巻とバーの関係を酒の肴に。
みなさんにお話したいと思うが、このシガーも。

バーになれている人、という印象を持つ一つのアイテムだ。

ではでは。
また次の機会に、お会いしよう。

2015年10月7日水曜日

銀座のバーでヤッチマッタ!【事件編】

今月から、新しいシリーズを始めます。

ビジネス関係でなく、経営者やビジネスマンのプライベートタイムとか。
接待やデートなどに使えそうな話題づくりや話のネタをご提供します。

どちらかというと、男性や女性の心理や恋愛の話とか。
日が沈んでからの時間帯、そこで起きた出来事などが中心になります。

そういう意味では大人のコラム、というべきでしょうか。

また形式としては「越後屋の商い帳」と同様に小説です。

ただ時代小説風でなく、舞台は現代。
酒とシガーと女性を愛する男が主人公。

題して「2代目マイク・ハマーの事件簿」シリーズ。

本家・マイク・ハマーの小説がハードボイルドなら。
こちらは半熟?ソフトボイルドくらいだと思います。

書いているのは、経験したことなど事実に基づいていますが。
そこは小説、一部に脚色や演出ががあることはご了解下さい。

そのため、本作で想像される実在の人物や会社や店とは関係なく。
また極めて私的な見解もあるので、その点もお許し下さいますようお願いします。

そういう意味では、サササッ!と流し読み頂けると幸いです。

ではでは。

「2代目マイク・ハマーの事件簿」その第1話を始めさせて頂きます・・・。

■ ■ ■ □ ■ ■ ================================== ■ ■ ■ ■

東京・銀座。

あらゆる種類の人が、集まり、そして散っていく華やかな街。
近代的なビルのすぐウラ、路地裏と呼ぶにふさわしい一角に。

バー好きなら、知る人ぞ知るバー。
一度は行ってみたいと願う老舗のバーがある。

夜。9時を少し回った、小雨の降る日だった。

小さな看板がポツンと一つ、窓一つない壁についている。

その薄明かりのすぐ下には、やや大きめの木製ドア。

そのドアは。

開ける人を選ぶ、いやドアを開けるかどうかの勇気を試すかのように。
そのバーと共に時間を重ねてきた自信と誇りにあふれ、重厚感をたたえていた。

スゥー・・・・・・。

だが見た目以上に、ドアはスムーズに開いた。

そして、開けた者を暖かく迎え入れるように。
さまざま人の声が聞こえてきた。

いったい、いつ造られたのだろう?

ドアの先には、半世紀近く生きてきたオレより。
ずっと年季の入った木製の階段が地下へ続いていた。

今宵が楽しいく時となるか?
それとも、忘れたい思い出になるか?

少しの緊張感と大きな期待の中、食事で飲んだシャンパンとワインが。
オレの気持ちを膨らませると共に、足元に気をつけろ!とささやいていた。

地下に降りると。

そこには、大勢の男女と数名のバーテンダーさんが。
にこやかに集う、80年の歴史を超える空間が広がっていた。

「どうぞ、ちょうどカウンターが空いたところです・・・」

なんという幸運だろう。

この曜日、しかもこの時間帯では。
まず満席だろうと思っていたが、想像どおりの混み具合だった。

しかも、銀座のバーで事前に予約を入れておくほど。
オレはヤボじゃない、たとえ大切な連れがいてもしない。

もし混んでいて、入れないなら。
次のバーへ行くだけのことだ。

それほど銀座には、バーというものがいくつもある。

万が一、そのバーに入れないなら。
その日はツイてないだけのこと。

一人なら帰るかもしれないし、もしそれなりの連れがいれば。
あまりアレコレ考えず、歩くにも負担がない程度の距離。

近くの席数のある大きめのバーに行って、それなりに過ごすか。
空いている可能性がある、無名で未知のバーで冒険するか。

この程度で、終わってしまうのだが。
しかし、この日は違っていた・・・。

まずこのバーに来たかった。

それは、連れのリクエストでもあった。
そして。何よりオレ自身が、このバーに行きたい日だった。

そのため、もし入れなかったら。
大きめのバーや無名のバーでの冒険でなく。

次、次と。

その日は小雨でも、ビル風でズボンの膝まで濡れてしまうような日だったが。
びしょ濡れになっても、行きたいバーへはやる足取りで行っていただろう。

しかし。混んでいると思ったが、入れたこと。
しかもカウンターに座れる、それもトップのバーテンダーさんの前に。

銀座でも、いや全国でも名の知れた大ベテランの方。

その方の目の前、カウンターに座れるなんて!

入れただけでも幸運だが、その何倍もの幸運を感じながら。

オレは、オレ以上にバー慣れしている連れを。
それでも、静かにリードするように。

このバーで飲みたかった、モスコミュールを。
連れの分と合わせて2つ、オーダーした。

そして。その日、2杯目のオリジナルカクテルを。
連れとにこやかに、オレが思うバーの3大要素。

何より、バーテンダーさんの人柄。
カクテルや提供されるモルトの種類や質。
カウンターに代表される店の内装や構え。

「ここは、場全体になにか魅力を感じるわ」

という連れの言葉に表されるように。
その3つが融合された空間と共に楽しんでいた。

その時。事件は起きた・・・。

後から来た、20代~30代と思われる女性と。
たぶん50代~60代と思われる男性のカップルが。

ちょうど空いた、オレと連れから少し離れたカウンターに座った時のことだった・・・。

実は。

女性がバーに行って、もしカウンターに座ったら。
してしまうと、ヤッチマッタ!と思われることが3つある。

バーに慣れているというか、バーが好きな人なら。
おそらく誰でも知っていることだ。

それをさりげなくカバーするのが、連れの男の役目というか。
オレに言わせれば、ある意味では義務であり、男の技量なのだが。

そのヤッチマッタ!ということの一つを。
カウンターに座ってすぐに、その女性がしてしまった!

それは、彼女のオーダーの一言だった。

しかも、なんと!連れの男は。
となりの女性、その女性も男性と来店していたが。

そんな見知らぬ女性に話しかけていて、何の行動も示さなかった!

・・・そして見事に!オレの予想どおり。

大ベテランのバーテンダーさんは。
このカップルに聞こえないほどの小さな声で。

「ウチは、定食屋じゃないよ・・・」

とつぶやき、ヤッチマッタ!感を漂わせたのだった。

これだけでも、まさに絵に書いたような事件だったが。

その日は、まさにバーならではの事件がもう一つ。

今度はオレの右隣の席にいた男性、年は30代~40代だろうか。

すぐとなりのため、つい聞こえてきてしまう会話から。
この老舗のバーに通いつめている、なじみの客だと思われた。

そんな男性客は、先ほどのバーテンダーさんのささやきを耳にして時。
思わず苦笑をもらしていたのだが、今度は自ら発した次の一言。

「ここのバーで、ここで育ったようなオレだから
別のバーでモスコミュールを飲んだ時、XXXXっていったんですよ!」

この発言で・・・別のバーテンダーさんからたしなめられることになる。

そう。彼もまた、ヤッチマッタ!事件を引き起こしたのだ・・・。

この事件で、ヤッチマッタ!男性はバーに通っている割には。

いや、恐らくいろいろなバーに通いなれているのでなく。
ただ単に、このバーに通いつめた常連客では?と。

こんな思いをオレの中で引き起こした。

実のところ、バーは。
正確にいうと、バーテンダーさんは。

顔なじみの通いつめた常連客よりも。
身も知らない、一見の客だが「バー慣れしている!」と感じる客に。

一目を置いて、接客することがよくある。

もちろん、どっちの客が上とか下とか。
バー慣れしているから、偉い!とかいうことではない。

あまりバーがお好きでない、敷居が高いと思っている方に。
念のため伝えておくが、この夜のヤッチマッタ!カップルには。

決して不快な思いも、恥ずかしい思いもさせることもなく。
上手にサブのバーテンダーさんが、丁寧にフォローしていた。

また物知り顔で、このヤッチマッタ!女性に講釈をたれるつまらん客も。
このバーのカウンターにはいなかった、これも申しそえておこう。

そして、たしなめられた男性客もまた。
その心境はうかがい知れないが、その後の彼の会話や態度とか。

彼がこの老舗のバーに通い、他のバーにも行くほどの人物だからこそ。
不快な思いではなく、きっと学びの機会として良かったと思っているだろう。

このようにバーは、酔っ払いや訳知り顔の人、バーに慣れていない人に。
きわめて優しい存在であり、その雰囲気をバーに作り、演出するのも。

バーテンダーの役割であり、不可欠な技量だと言えるだろう。

そしてこの老舗バーも、やさしい空間をもったバーの一つであった。

・・・そんなバーで立て続けて起きた、バーならではの事件。

それを尻目に。

「さっ、行こうか!」

と2杯飲み干し、サッと席を立ったオレと連れ。

最初から2~3杯飲んで。
次のバーへハジコの予定でいたのだ。

そして次のバーのカウンターに座り、一杯目のカクテルをオーダーした時。
この2つの事件をオレは、このカップルと男性客には申し訳ないが。

連れと「酒の肴」にしていた・・・。

さて。ここで読者のみなさんには、この事件の真相を推理して欲しい。

はたして、カップルの女性は。
いったい、どんなオーダーをしたのか。

そして、男性客は。
モスコミュールについて、どんなコメントを他の店でしたのか。

その回答編は、次回に。

ではでは。また。

2015年9月30日水曜日

番頭さんの苦闘とは


前回。

○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○

会社の継続、会社経営には。

困難がつきものであり、困難から生じる苦闘や苦悩がつきものであって。
2代目経営者として苦闘や苦悩がないのは、ただ単に困難に目をつぶって先送りしているか。

創業者や起業家と違って、2代目経営者の場合は。

社内の他の誰かが、先送りする2代目経営者の尻を叩いたり。
その人なりの立場や力で、2代目に代わって困難に立ち向かったり。

誰かに苦闘や苦悩を押し付けている状態も、決して少なくない気がします。

○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○

とお話しましたが。

この「誰かに苦闘や苦悩を押し付けている」という典型的な実例をお話したいと思います・・・・。

「・・・2代目師匠さん、ウチの社長のことをどう思います?
正直に言って下さい、ウチの2代目の評判はどうでしょう?・・・」

先日、古い取引先のある方から。
会合の後のお酒の席、しかもだいぶ酔いも回った3次会となったスナックで。

席に着くなり、こんな質問を投げかけられました。

この方は、ある会社の古参幹部さん。
創業者である先代の右腕であった、いわゆる番頭さんです。

仮にAさん、としましょう。

Aさんとは10年以上前から、昼間の会合や商談でご一緒だったり。
会合後の懇親会やパーティーで、テーブルが一緒の時はありましたが。

2次会、3次会と少人数で流れる席は、今回が初めてでした。

一方で創業者のお父さまが、急な病気で倒れてから。
経営の実権を継いだAさんの会社の2代目社長さんは。

年下なので仮にB君としますが。
商工会の会合や異業種会などで、時おり少人数で飲みに行くことがありました。

B君とは、仲が良いわけでもなく。
もちろん、仲が悪いというわけでもないですが。

どちらかというと、一定の距離をとっているような関係でした。

というのも以前、B君に頼まれて紹介した2代目経営者の先輩から。

「2代目師匠君に紹介されたから会ったけど、彼(B君)はちょっと・・・」

というお話があって、しかも紹介したわりには結果の報告もなくて。
B君は・・・どちらというと不義理な人なんだ、という印象があったり。

B君の同世代の2代目経営者の人からは、異口同音に。
周囲と協調する、周りに気をつかうタイプでないという評判を耳にしたりして。

何となく、彼とは「大人のつきあい」をしていたのです。

加えて、飲み会や商工会などのお付き合い場だけでなく。
B君の商売に対する姿勢についても、あまり良くない話を聞いていましたが。

あくまでも、これらの話は「また聞き」で私自身が感じていることでなく。
ましてやお酒の席で、あーだ、こーだ、と言うのも気が挽けて。

Aさんの真意もわからない中、お茶を濁すように。

「大丈夫じゃないですか?経営者として立派にやっていると思いますよ」

と応えたところ、Aさんは。

「いえ、外での評判は良くないことばかり耳にしています・・・
というの外部の方から、いろいろと言われているのです・・・

他の人の評判を落とすような話をしたとか、
ウラでヘンなことをお客に吹き込んだとか・・・

お客さんとの接待の場や主催した場なのに、
いつの間にか断りもなくいなくなるとか・・・

それでウチの2代目に社内で確かめると、
やはりそういうことをしているんです・・・

別に商売ですから、
何かしらの文句や批評はあって当然かもしれませんが・・・

騒いでかき回すだけで、契約にならない、
またお客さんの気分を悪くしただけで・・・

その後始末を私がしているんです・・・

何かと飲み会だ、ゴルフだと・・・
実績がない、仕事になっていないのに・・・

交際費をつかって、何をしているんだか・・・
先代が倒れた時も飲み歩いていて・・・

倒れたのに、プライベートな旅行に行くと言い出して・・・
正直、ウチの若い社員からも、批判が出ているんですよ・・・

・・・・弱ったものでして・・・・・・・・・・・」

と言って、最後にポツリ。

「もう、今の会社は辞めようかとも思っているんですよ・・・」

とAさんは、悲しそうに話していました。

あとで聞けば、Aさんが辞めたら。
あの会社はもたない、と同業者の方たちは口にしているそうです。

経営トップであるB君が、社長として幹部のAさんをサポートするどころか。
Aさんを苦悩や苦闘の淵に立たせている、辞めたいと思うまでにしている・・・。

たしかに、古参の番頭さんと2代目がぶつかって。
番頭さんが辞める、2代目が辞めさせるという話はよくあります。

ただ、それは経営方針や価値観の違いで生まれるものもあれば。
Aさんのように、2代目の尻拭いにイヤ気が差すようなこともあります。

経営方針や価値観の相違が引き金の場合は。

たとえば、このまま番頭さんを放置しておくと若手や会社のためにならないと。
社内での支持を得ながら、2代目が番頭さんを辞めさせることもあるでしょう。

また2代目と番頭さんが、お互いに会社に良かれと思ってした行動の結果として。
時代認識や市場に対する感覚のズレなどで、番頭さんが自ら辞めることもあると思います。

それに比べて、Aさんのように2代目のお守りや尻拭いに疲れて辞めるとか。
たとえば単に気に入らない、口うるさいからと短絡的に辞めさせてしまうとかでは。

その後の会社の状況は、行って帰ってくるほどの違いがあるものです。

その上でどちらにしても、2代目経営者は古参の番頭さんの処遇について。
誰か信頼のできる第三者の方に、相談しながら決めた方がより良いと思います。

ずっと前の話ですが、別の2代目経営者のC君から。
先代が同業他社からスカウトしてきた、番頭さんのことで。

先代が急逝して、業界にも社内にも慣れないC君が社長となってから。
事あるごとに彼の意向を無視して、勝手なことを社の内外でしている。

どのように対処や処遇したら良いか?と相談を受けたことがあります。

その時に、C君にまず話したのは「コンパス(方位磁石)」のことです。

やり方、たとえば山に登るとして。
ヘリコプターで行くのか、登山道を行くのか、けもの道を行くのかなど。

いろいろな登り方、考え方、ビジネスの方法や進め方に違いがあっても。

大きな観点で「北へ向かう」という方角があっていれば。
私心がなく、会社や社員やお客さんのためなどの意識があるならば。

C君と番頭さんでコンパスの指す方位が一緒なら、もう少し様子を見た方が良い。
もしそうでなければ辞めさせてもイイ、いや辞めさせるべきと思う、と話したのです。

結果、C君は私心で番頭さんが会社の実権を握ろうと画策していたこと。
さらに外部の取引先にも、彼の批判をバラまいて巻き込もうとしていたことなどが判明して。

C君は、番頭さんを辞めさせました。

その後、この番頭さんは別の同業者に移って。
何かとC君の批判を続け、古巣である彼の会社の評判を落とそうとしました。

ハッキリ申し上げて。

以前であっても、現在進行形であっても。
立場が番頭や幹部社員であっても、一般社員であっても。

勤めていた会社、勤めている会社の批判を声高に話して。
評判を落とすような行為をするヤカラに、優秀な人はいません。

C君のところの元・番頭さんは、転職先も追われるように辞めた後に。
県外の同業者の支援を受けるような形で、会社を起こして巻き返しを図りましたが。

何の実績も業績も残さないまま、いつしか消えて行きました。

このように番頭さんは、番頭さんであるゆえに経営者の苦闘とは違って。
辞めることもできれば、とんでもない経営者から理不尽にもクビにされることもあります。

その中でも、本来なら軽減されるべき苦闘を背負わさせているAさん。
反対に本来なら番頭としての背負うべき苦闘を放棄したC君の元・番頭さん。

2人は、同じ番頭さんという立場でも。

AさんとC君の元・番頭さんの苦闘や苦悩や悩みは。
その方向や周囲からの評価が、大きく違って見えます。

あなたの会社には、古参の番頭さんがいますか?
その番頭さんは、Aさんのタイプ?それともC君の元・番頭さんのタイプでしょうか?

もしAさんのように、辞めるという選択肢を持たずに。
2代目経営者の苦闘を親身になり、分かち合ってくれる番頭さんならば。

世代的な価値観の違いや新旧のやり方の相違があっても。
それは2代目の苦闘を自ら背負って苦闘してくれる番頭さんとして。

しっかりと引き留めておくべきではないでしょうか。

ではでは。また。

2015年9月3日木曜日

経営者の苦闘とは

かなり以前、経営に思い悩んでいる時。
すごく考えさせられた記憶があるのですが。

『企業の継続年数というのは、
その企業がどれだけ困難に「耐えたか」の指標であり、
また経営者が精神的困難をどれだけ乗り越えたかの指標でもあります』

先日、このような言葉を。

起業家に投資するベンチャーキャピタルの方が書いた本から目にしました。

たしかに、会社を継続するというのは数値的に見ても困難です。

統計や計算したもの、諸説いろいろある中で。
企業生存率を一番高めに出している数値でも。

創業後10年続く会社は、100社中70~80社くらいと言われて。
それが、長年にわたり2代目、3代目・・・と存続していくとしたら。

創業者から2代目に継ぐ時期になるであろう、創業後20~30年では。
100社中50社前後となり、それが3代目に継ぐ段階の創業後50年となると。

100社中16社ほどになっています。

さらに3代目が経営を全うするあろう、創業後100年ともなれば。

わずか1000社に1~3社程度だと言われています。

もちろん今、2横ブログをお読みの創業者や2代目や3代目以上の経営者の方なら。
こんな数字を目にするまでもなく、経営をする困難、企業を継続する困難をハダで感じて。

それに伴う「経営者の精神的困難」は、骨身にしみているはず。

経営には困難がつきものであり、困難なことでもあり。
企業の継続年数は、まさにそれに耐えた証(あかし)であって。

企業が困難に耐えるとは、経営者が精神的困難を乗り越えたことに他ならない・・・。

経営者の末席にいる私としても、このように。
日々の経営活動で感じ、骨の髄までしみ込んで思うのです。

その上で、企業をゼロから立ち上げた創業者や起業家はもとより。
2代目や3代目といった、企業の継続年数を重ねる役目の経営者も。

創業者や起業家、また世間から見れば、甘いのかもしれませんが。
それでもその姿は、まさに苦闘、苦しみ、戦うことの連続のようにも思えます。

そんなシビアな創業者や起業家の苦闘について、冒頭の言葉と共に。

・苦闘とは、そもそもなぜ会社を始めたのだろうと思うこと

・苦闘とは、あなたはなぜ辞めないのかと聞かれ、その答えを自分もわからないこと

・苦闘とは、自分自身がCEOであるべきだと思えないこと

・苦闘とは、自分の能力を超えた状況だとわかっていながら、代わりが誰もいないこと

・苦闘とは、全員があなたをろくでなしだと思っているのに、誰もあなたをクビにしないこと

・苦闘とは、失敗ではないが、失敗を起こさせる、
               特にあなたが弱っているときにはそうだ、弱っているときは必ず

と語っていたのが、次の「ハード シングス」という本です。



もしこの創業者や起業家向けの「苦闘とは」の言葉を。
2代目経営者に、置き換えるとすれば。

・苦闘とは、そもそもなぜ会社を継いだのだろうと思うこと

・苦闘とは、あなたはなぜ2代目社長をしているのかと聞かれ、
その答えを自分もわからないこと

・苦闘とは、自分自身が2代目社長であるべきだと思えないこと

・苦闘とは、自分の能力を超えた状況だとわかっていながら、
先代の跡を継いだり、代わったりりする人が誰もいないこと

・苦闘とは、周りがあなたをボンボンやオジョウちゃんと思っているのに、
誰もあなたをクビにしようとしないこと

・苦闘とは、失敗ではないが、失敗を起こさせる、
特にあなたが弱っているときにはそうだ、弱っているときは必ず・・・。

となるのではないでしょうか?

その一方で、世の中には。
経営者としての苦闘とは無縁に、先代の財産や資産を回すだけで。

2代目社長です!と胸を張り、いつしか先代の遺産がなくなることに気づかずに。
そのままズルズルとジリ貧になっていく、そんな2代目がいるのも現実です。

そういう2代目は、得てして。

周りの人に、大きく見せようとか、強く見せようか。
えらく見せようとか、力や金があるところを見せようとか。

こんな立ち居振る舞いをしているわけで、特に男性の2代目経営者に。
こういう人が少なからずいて、その多くが自滅に至っている気がします。

一方で、反対に卑下するような態度の2代目も。
やはり男性の2代目経営者の中に、少なからずいますが。

内実はバカにされたくないだけ、本質は変わらないとも感じます。

もちろん、苦闘、苦悩すれば一人前!という話をしたいわけではありません。

また私自身を含め、誰もが苦闘や苦悩なしに生きられたなら。
苦闘や苦悩なしに、会社を継続できて次の代へバトンタッチできたなら。

こんなにイイことは、ないとも言えるでしょう。

しかし、冒頭の言葉とおり。
会社の継続、会社経営には。

困難がつきものであり、困難から生じる苦闘や苦悩がつきものであって。
2代目経営者として苦闘や苦悩がないのは、ただ単に困難に目をつぶって先送りしているか。

創業者や起業家と違って、2代目経営者の場合は。

社内の他の誰かが、先送りする2代目経営者の尻を叩いたり。
その人なりの立場や力で、2代目に代わって困難に立ち向かったり。

誰かに苦闘や苦悩を押し付けている状態も、決して少なくない気がします。

最後に。

この本で語られていた「つらいときに役に立つかもしれない知識」をご紹介します。

・ひとりで背負い込んではいけない
・単純なゲームではない(苦闘は戦略が必要なチェスだ)
・長く戦っていれば、運をつかめるかもしれない
・被害者意識を持つな
・良い手がないときに最善の手を打つ

この言葉のように、つらい時には。

世の中からは、創業者や起業家から見れば。
苦労や苦闘も苦悩もしていない、楽な立場と言われて。

実際に、楽ばかり追い求めているヤカラも。
2代目経営者にいることも、実感していますが。

日本のどこかで、額に汗して、ワキに冷や汗をかいて。
今日も東奔西走、マジメに経営に取り組む2代目のために。

苦闘する姿や苦悩する心を少しでも分け合うことができる場になれば・・・と願って。

2代目横丁は、存在しているのです。

ではでは。また。

2015年8月28日金曜日

史上ワースト・ワン!ある2代目のセリフ

自分で商売をしている人、たとえば商店主や経営者や部門長など。
リーダーとして自覚や積極性があり、自ら先頭に立って行こう!という人も。

他の人からの指示や指導で仕事をしている人、一般的な会社員など。
主に他動的であり、あえて先頭には立たちたくないな!という人も。

商売をしている、仕事をしている以上は誰でも。
利益や売上げなどの結果や新商品の開発や経費節減などの成果を求められる。

そう。職業として、プロとして何かを行なう上で。
自らも他の人からも、社内からも社外からも、そして世間からも。

必ず求められるのが、結果や成果ではないでしょうか?

別の角度から言えば、結果や成果を求めないとしたら。
商売や仕事でなく、趣味やボランティア、またプロでなくアマチュアの話。

このように解釈ができるかもしれませんが、よくよく考えてみれば。

趣味でもコンクールの入選とか、自分自身の満足感、他の人からの評判とか。
ボランティアやアマチュアであっても、何かの結果や成果を求めて活動するわけで。

だから、たとえばスポーツやトレッキングなど体を動かすことでも。
俳句をつくる、小説を書く、絵を描くなど頭や感性を使うようなことでも。

そして、商売や仕事などビジネスの分野は言うまでもなく。

結果や成果が得られるやり方や考え方など、いわゆるノウハウ本とか。
結果や成果を得た人の体験や行動パターンなど、いわゆる成功者本とか。

出版不況と言われて、活字離れや本離れが進んでいるとされても。
印刷された本でもデジタル化された文字でも、書店でもネット販売でも。

ノウハウ本やノウハウの情報、成功者本や成功者に関する情報は。
今の世の中にあふれ、ということは多く人が欲しているのだと思います。

ちがう言い方をすれば、どんな行動についても結果や成果がすべて。
100%すべてとは言わないまでも、結果や成果に対する欲求は高い割合を占める。

そのため、結果や成果が気になる、思うような結果や成果を得たい。
成功したい、評判を得たい、反対に失敗したくない、批評は受けたくない。

これが多くの人が持つ心理であって、たとえば。

もし今のやり方を変えて、商売が傾いたらどうしよう?仕事に失敗したら?
もしこんなプライベートの姿を他の人に見られたら?こんな趣味を知られたら?
もしかしたら他にもっとイイ方法とか、もっと短期間で成果が出るやり方があるのでは?

などなど、このように思うと。

商売も仕事も、自分のプライベートも、なかなか行動に移せない。
行動が狭くなる、制限される、ある意味で行動に臆病になるなど。

誰でも、それなりに結果や成果に対する不安感みたいなものを抱いていると思います。

中でも、特に2代目といわれる人たちには自分の行動について。
子どもの頃から、イイ子でいなさい!これはダメ!こうしなさい!など。

いろいろな面で制限をされていることが多く、行動に対して慎重というか。
世間体や近所や地域の評判を気にする、気にしすぎるという傾向が強くて。

石橋を叩いても渡らない人、先代から継いだものを守ることに熱心な人がいる一方で。

世間体や他の人の評判、さらに先代に対する評価や実績を気にするあまりに。
無謀な行動や放蕩に走り、引き継いだ資産や良い評判を壊す人も少なくありません。

「2代目師匠さん、オヤジが言った約束はオヤジのこと、オレはオレですよ
死んだオヤジに言いたいことがあるなら、位牌があるから庭先に出しますよ
それで文句があるなら位牌にXX(とても書けません!)をかけてもらって結構です!」

と言った同業者の2代目社長は、先代が亡くなり会社を引き継いでしばらくすると。
いつの間にか会社の資産を外部に引っ張るだけ引っ張って、計画的に倒産します。

こうして社員、そして取引先や仕入先に多大な迷惑をかけながらも。

今も経営規模を縮小して、同じ商売やっているので。
その後の「失われた20年」での大きな苦労や試練を避けて。

経営者とすれば、早めに「うまく逃げ切った」??「リストラに成功した」??

・・・と思っている人も、いるかもしれません。
また商売を続けているという点では、結果や成果を出しているのかもしれませんが。

経営者というか、2代目というか、それ以前に人として。
私とはハダが合わない、相容(あいい)れない人でした。

そう。言うにこと欠いて、まさか先代の位牌に・・・。

実は、この先代には若い時から可愛がって頂いて。
商売のことを教えてもらったり、いろいろな商売のやり取りもあったり。

プライベートでも、いろいろと目をかけてくれた方でした。

その上で。

「2代目師匠くん、ウチの息子はどうだい?他の若い2代目と比べてさ
うまく商売をやっていけそうかい?オレの跡を継がせて大丈夫かな?」

と言われた時、すでに他の2代目や共通の仕入先や取引先から。
あまりパッとしない評判を耳にして、実際に彼の行動にもクエスチョンがつくもの多くて。

ホンネでは「ヤバいかな?」と思っていたのですが、この先代に心配をかけたくなくて。

「大丈夫ですよ、彼なら立派に跡を継ぎますよ!
それに社長のところは、経営が安定していて資産も豊富じゃないですか!
よほど市場や経済事情が大きく変わらない限り、おかしくなることもありませんよ!」

と応えて、そうかそうか!と目を細めてお酒を飲んでいた先代の顔を思い浮かべると。

彼の「先代の位牌を・・・」というセリフは、先代の思いを知っているつもりだけに。
2代目経営者から耳にしたセリフ、ダントツのワースト・ワンと言わざるを得ません。

結果を出す、成果を得る、たしかに大事なことです。

商売や仕事、プロである以上、いくらプロセスや理念が立派でも。
結果や成果につながらないことは、意味がないのかもしれません。

さらにプロセスや理念が立派なら、必ず結果や成果がついてくるほど。
商売や仕事は、簡単なものでも、キレイ事で済むことでもないと実感もしています。

そんな思いがある中で。
昨日、ある言葉を目にしました。

「物ごとのやり方を決めるのは、人間ではなく自然である」

一見、表面上は。
いや実際に、現実の社会では。

人は商売や仕事、趣味やプライベートで、自分で考え行動して。
望む結果や成果を得るために、ノウハウや成功事例を探して。

やり方や考え方を決めていると思うのですが。

物ごとのやり方は「人間でなく自然が決めている」と考えたら。

商売や仕事の結果や成果も、自然の産物であって。
100%完全に、予測も計画もコントロールもできない。

このように思えて、ワースト・ワンのセリフを吐いたあの2代目も。
それに嫌悪さえ覚えながら、キレイ事ばかりでないと骨身にしみている私も。

やり方を自然の中に身を委ねて決めている、と考えることができて。

結果や成果も自然の中、気にしすぎてはいけないと。

改めて、思ったのでした。

ではでは。また。


2015年8月21日金曜日

日々の試練と恋

ある本のご紹介を頂いた記事に出ているものですが。

※「ブックマラソン」さんのメルマガ※※
↓↓↓↓↓
http://eliesbook.co.jp/review/


「言葉の力を弱める8つの落とし穴」というものがありまして。

・約束を破る
・不用意な言葉を使う
・悪口を言う
・裏口をつくる
・前言を否定する
・噂話をする
・しゃべりすぎる
・知的不誠実

という8つなのですが。

特に、前段の「約束を・・・」から「噂話を・・・」の6つは。
たしかに言葉の力が弱まることも、そうでしょうが。

極めて不誠実で、不信感をもたれる人物だと。
そう感じさせてしまう、6つの話ぶりだと感じました。

実は、一昨日。
この6つにピッタリの話をする人と。

2時間ほど、商談になりました。

結果として、当初の予定どおりの成果として。
商売にはなったのですが、後味の悪い気分になりました。

何回、テーブルを蹴飛ばして。
席を立ってやろう、商談を中止しようと。

破壊的、感情的な衝動に駆られながら。
ひたすら、ある意味では耐えていたのです。

すると、ご商売が上手な経営者の方からとか。
日々、セールスや営業で身を粉にして働いている方からは。

「なんだ、商売人ならそんなこと気にしてちゃいけないよ!」
「相手が不誠実であろうと、商いになったんだからイイじゃない!」
「商談をまとめたいんだったら、それくらいのことは当然じゃないの?」

など。商人は、頭を下げてナンボ!という声が聞こえてきそうです。

でも、私のストレスは120%を超えて。
次の機会でどういうものか?は、お話しますが。

私の心の中にある「怒りのスタンプカード」というものが満杯になって。

TUTAYAカードやポンタカードなどと同様に。
他の店でためたスタンプをその店で使うかのように。

一昨日はスタンプを使って、商談の相手とは別の人に。
怒りをばらまくような発言と行動に出てしまいました。

そう。冒頭に取り上げた「8つの落とし穴」の中の6つにあるように。
怒りにまかせて、不用意な言葉を使い、悪口を言って、噂話をしたのです。

その中で、一昨日の夜は。
あることで、怒りを癒すことが出来ました。

そして今朝、この本の紹介記事を目にして。
おお!これは!と目をうばわれた言葉がありました。

『大成功を収めた人たちは。
日々の試練と恋に落ちる方法を知っている』

という言葉です。

はじめ、この言葉を目にして一瞬。

成功を収める人は「日々の試練」と。
加えて「恋に落ちる方法」の2つを知っている人なんだ!と思いました。

なぜなら、一昨日の夜に「怒りのスタンプ」を減らせたのは。
自分の中にある恋心であり、それを伝える言葉であったからです。

心理学的にも、他人への怒りや嫌悪も、自分自身への怒りや嫌悪も。
自分の中にある愛、何かや誰かそして自分自身を愛することとか。

その愛に気づくこと、愛の言葉を何かや誰かや自分に投げかけることによって。
怒りや嫌悪をマネージメントできる、減らしたり、転換できたりすると言われています。

ですから、成功するためには「日々の試練」と「恋」が必要で。
そのことを知っている人になること、と解釈してしまったのです。

しかし、この後に続く言葉。

『成功者とは、目標を達成するために、面倒くさいことや
気が進まないことでも、我慢して実行できる人である』

という言葉を見た時に、あ!そうか!と。
2つのこと「日々の試練」と「恋」ではなくて。

「日々の試練と恋に落ちること」というワンフレーズだったのか!
と気づかされて、恋という言葉に反応した自分が恥かしい・・・。

・・・・・でも・・・いくつになっても、何回しても、恋は素敵だと・・・。
・・・それに試練と恋に落ちるほど、オレはできちゃいないな・・・と。

このように思った次第です。

さてさて。

あなたは、最初から「日々の試練と恋に落ちる」と理解できましたか?
それとも、私と同じく「日々の試練」と「恋に落ちる」と思ってしまいましたか?
もしかしたら、まったく別の解釈や気づきをあなたは感じたのでしょうか?

そして、あなたは。
何か、誰か、自分と「恋に落ちて」いますか?

このあと、この本では。
成功へ向かうために必要な行動について、書かれているのですが。



それは、後ほど。
改めて別の機会にお伝えします。

ではでは。また。

2015年8月11日火曜日

夫婦喧嘩が犬なら、親子喧嘩はサル?

あの大作「ローマ人の物語」の作者、塩野七生さんが。

「多くの人は見たいと欲するものしか見ない」

というカエサルの言葉がお好きだそうで。
その中で、リーダーと一兵卒について。

見るものが違うかと言ったら、 本当は同じ。
だけど一兵卒は、その重要性に気づかない。

いや、気づきたくないわけで。
たとえば敵が来るなんて思いたくないから敵を見ない。

そこが、リーダーとリーダーでない人の間に存在する、厳とした差。

という話をしています。

そう、会社経営だとすれば。
塩野さんが話されている、リーダーとリーダーでない人とは。

まさに、社長と社員、部門長と部下、といったところでしょうか?

それに2代目経営者にとっては、もっとやっかいな存在。
自分が社長、会社のリーダーになったのですが。

リーダーでない人、しかも自分をリーダーと認めない人たち。

社長の座を譲ったにもかかわらず、口をはさむ先代社長に始まって。
先代の頃からいる古参幹部、お手並み拝見と黙っている社員など。

この人たちも「見たいと欲するものしか見ない」のです。

すると。

「え?でも、それは先代の親心でしょ?心配しているんですよ」
「頼りない2代目ボンボンをサポートしようとしている、イイ社員じゃないか」
「実績も実力もないのに、肩書きだけではリーダーになれないってことさ」

という声が聞こえてきそうですが。

実は心理学的にも、判断がわかれる、言い切れない、不明な事柄。
たとえば会社経営、世間が騒ぐ安保法制や原子力発電の是非など。

たしかに人は最初から見たい、信じたいことの裏付けや評価を探して。

たとえば業界や市場のある一段面を中心に見る、自分の実績を信じる。
戦争になった過去を見る、現状の中国を見る、放射能の危険性だけ信じる。

最初から直感で、実は個人的な経験で、過去の結果で、一断面の報道で。
最初から決めているにも関わらず、あたかも客観的で理論的だとして。

たとえば業界の動向はこうだ、市場はこうだ、ウチの会社はこうだ、とか。
戦争になる?戦争回避になる?とか、今の原子力規制の安全の可否、とか。

自分の主張や考えが正しいとしたがるのです。

しかし、リーダーは。
そうは、いけません。

見たくないものを見る、信じたくないことの可能性を考えなければ。
会社や国が大きく傾くことも起こるわけで、大きな視野が必要です。

そして。得てして、経営でも国際情勢でも、実際にたびたび起こるのが。
見たくない脅威、信じたくない事故、その結果としての悪い事態ですが。

たとえ運が良いこと、良い結果であっても。

見たくないというか、見てなかったこと。
願っていないというか、願っていない以上の結果もよくあって。

その点で「幸運の女神」は、前髪もない坊主頭の結果論なのですが。
見たくないものや信じたくないものまで、見る必要は良悪の双方にあります。

特に、私たち2代目経営者は。
たとえ結果が良くても、また仮に悪くでも。

見たくないもの、それは見たくない自分の姿や態度。
そして、自分はよく見ていた!と思っていた人や事も含めて。

信じたくないこと、これもまた信じたくない自分の行動。
そして、この人は!これは!と信じていて人や事も含めて。

見たくないものを見ようとしたり、信じたくないものの可能性を考えようとしたり。

こういう感覚を身につけていた方が、より良いと思います。

というのも、先ほどの話。

たしかに、先代や古参幹部は「良かれと思って」口をはさむ。
社員は「肩書きでなく実力で」と、あたり前の感覚でいるだけかもしれません。

でも、あなたがリーダーなのです。

先代も古参幹部も、自分の成功体験や過去の実績で。
自分が見てきたこと、信じてきたことを言っているのです。

社員は、自分の立場や習慣、クセや好み、また過去の社内慣習などで。
自分が見てきたこと、信じてきたことに基づいて行動しているのです。

もちろん、私たち2代目経営者もそうです。

本で読みかじった知識、しかも自分好みの理論や手法。
若い世代感覚で感じる社内や業界や市場の雰囲気や慣習など。

それをリーダーになったから、振りかざそうとしたり。
先代や古参幹部や社員、業界や市場にぶつけてみたり。

リーダーとして「見たくないものまで見る」のでなく。
自分自身や物事に関して「見たいと欲するものしか見ない」タイプ。

むしろ、創業者や古参幹部や社員や同業他社のベテラン経営者よりも。
見たいものしか見ない2代目経営者のほうが、多いと感じることさえあります。

ただし。これも私自身が見たい、信じたいと思っている考えです。
だから賛否両論、好き嫌い、賛同や批判の両方があって当然です。

ただ否定されても、嫌いでも、批判しても。
それもまた、あなたが見たくないだけのこと。

リーダーならば、そこに気をつけなくてはいけない。
いわゆる「器を広げる」ために、見る努力が必要ではないでしょうか。

古いコマーシャルですが「反省だけならサルでもできる」というコピーがありました。
元気をなくて、飲みすぎや食べ過ぎで、その時に!その前に!という薬の宣伝でした。

もし「見たいもの」や「信じたいもの」だけ、頑なに見たり、信じたりしていれば。
反省もなく、否定や批判するだけで論議にならず、ただただ感情的になるだけですが。

先代と2代目、血縁があるからこそ感情が先に立つ。
株主総会のあとは、裁判になっているどこかの家具屋さんではありませんが。

この手の話、2代目にはよくあるものです。

夫婦喧嘩は、犬も食わぬなら。
あのような親子喧嘩は、世間やはたから見れば。

まさに、サルにも劣ると言ったら。
言い過ぎかもしれませんね・・・関係者の方、お許しを・。

2015年8月6日木曜日

他の人をモノとして扱えば・・・

さてさて、前回の話の続きでございます。

昨年、先代で創業者の父を亡くした備前屋の2代目の若だんな。
ご城下の商い仲間で、中堅どころの越後屋に「ちょっと相談が・・・」と。

神妙な面持ちで、もちかけまして。
2人は人目につかない場所で会ったのですが。

てっきり、商いの相談だと思っていた越後屋の想像とは違って。
備前屋の若だんなからの相談は「女性のこと」でありました・・・。

それが、今から10日ほど前の出来事です。
その時をふり返りながら、越後屋と女将の会話は進みます。

○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○   ○

「・・・それでね、備前屋さんは雑談の後、こう切り出したんだ・・・」

越後屋は、女将が注いでくれた酒をクッ!と飲み干すと。

「越後屋さん、本日ご相談があったのは、ほかでもございません・・・
実はある料理屋に奉公しています女中と・・・ひょんなことから・・・・

男女の仲になりまして、お恥ずかしいお話、その関係を続けたい、と・・・
このように話しましたところ、それならお手当てが欲しいと言われて・・・」

やや芝居がかった口調で、あの日の備前屋との話を語りだしました。

「自分には、弟がいて面倒も見なけりゃいけない、だからお金がいると・・・
・・・そこで備前屋の若だんなは、こういう時には、普通にお金は出すもので
越後屋さんも、そうしていますか?と・・・・こう、私に尋ねるんだ・・・・・・」

すると女将は、口元に微笑を浮かべながら。

「そないな話・・・あんさんも、されたことあるんどすか?・・・
ほんでお相手に、お金を渡したりしはったんどすか?・・・」

と言いながら、越後屋の手のひらの上に自分の人差し指を重ねて。
やさしくそっと、ゆっくり回すようになぞって来ました。

「と、とんでもないよ!私には、そんな経験はないさ!
でもね、世間ではよく耳にする話、だとは思うんだよ

かわら版に書かれたり、どこの誰とは言えないけれど
実際にお金を渡したというお人もいたりするからねぇ~」

やや慌てて、こう応える越後屋を見て。
クスっと笑う女将に、やられた!からかっただけか!と思いながら。

「少なくとも、私には経験がないけれど、お金のやりとりをする人もいるわけで・・・
で、備前屋さん、あんたはお金を渡してあげたの?と彼に尋ね返したんだよ・・・・・・

すると、いや、渡していない、でも渡した方が良いのか?
それとも断るべきなのか?・・・越後屋さんならどうしますか?ときいてくるんだ・・・」

こう越後屋は、話を続けるのでした。

「そんなん、よう答えられへん話どすな、難儀なお話・・・」

こういいながら、女将は越後屋の空いた杯にお酒を注いで。
越後屋もまた、ご返杯とばかりに、女将の杯にお酒を注ぎながら。

「そうなんだよ、厄介な話さ、どっちでも備前屋さんが自分で決めればイイ
そこで、若だんなは渡したくないの?それとも渡したいと思っているの?って・・・

そしたら、今まで自分はお金を渡したことはない、渡すには違和感がある・・・
それでも一般的にどうなのか?越後屋さんなら経験あるだろうし・・・・それに・・・・・・・」

とここまで言いかけて、言葉を飲み込む越後屋に。

「それに・・・なんどすか?・・・」

中途半端な言い方に、女将は少し首をかしげながら尋ねます。

「・・・いや、なに・・・・それに、越後屋さんは女将にいくら出してるんですか?と・・・
オマエにお金を出して、この店をやらせているんでしょう?と言うんだよ・・・・」

すると女将は、ヤレヤレまたかと。

「・・・フ~・・・そのお話どすか・・・男衆は、すぐしょうもないこと、言わはりますな~
あんさんをいれて、6人くらいのお人に、うっとこはお金を出してもらったって・・・・

こないな話になってます・・・もう、すかたんもエエところ・・・アホらしくて反論する気かて
何回も言われるうちに、なくなってます・・・うちは自分のお金でお店出したんどすけど・・・」

つまらん男どものウワサに、あきれるのでした。

そして、越後屋も越後屋で。

「そうだろう?私のことはどうでもイイとして、オマエに無礼でぶしつけな話さ・・・
というか、備前屋の若だんなの若さというか、人としての厚みがまだないというか・・・

それで、静かに、まず金など出していませんよ、それに、男と女の間にお金をはさむのは
ヤボなこと、ヤボ天のすることです、私はヤボなことをしたことないし、する気もありません

ただ備前屋さん、お金をはさみたがる女性もいる、別に悪気があるわけじゃない・・・・
聞けば弟さんがいる、お金がいるっていう話、それはそれで、まず認めてあげだ上で

それでもお金を出したければ出せばイイ、出したくなければ断ればイイ、自分で決めること
イイも悪いもない、自分がしたいか?したくないか?であって、一般論は関係ないと思う・・・

こう話してやったら、確かにそうですね、と若だんなも話がわかってくれたようで・・・・
ちょっと自分なりに考えてみます、という結論になったんだけど・・・・・・」

と半ば、あきれながら事の次第を話した上で。

「男と女の仲をお金を尺度にして見るようになると、商いもイイことがない気がしてね
本来なら、お金は出さない方が・・・と備前屋の若だんなに言うべきでは?とも感じたんだよ・・・

たとえば商い仲間のある大店(おおだな)の2代目は、その昔にタチの悪い女にひっかかって
お店までお金を取り立てに来られて、ウワサも広まって、このお城下にいられなくなったり・・・

あるお店の2代目は、水茶屋の女に手を出して、その女とどんな約束をしたかしらないが・・・
ある朝、お店の木戸に事の顛末を張り出されたり、看板に女の肌着か巻き付けられたり・・・

店の丁稚から小僧に至るまで、2代目のことをカゲであきれて、愛想をつかしていて・・・
とうとう先代から仕えていた大番頭さんが、別のお店に移ってしまって、店が傾いて・・・」

このように、女性関係で大きな失敗になった2代目について語るのでした・・・。

「そういえば昔、お店を継いで間もない頃、商い上手で、気もよく回って
先代の時の10倍にお店を広げた徳島屋さん、というお店の今の2代目は

女性関係も盛んで、私が見たり、耳にしたりしだけでも片手じゃ足りないくらい
いろいろなタイプの女性、チョー美人から、どうして?と首を傾けたくなる女性まで

あちこちで浮名を流して、それでもトラブルが一つもなくて、スゴイお人だけど
その方が言うには、お金の話を含めて、女性をモノのように扱うとダメだ、って

でも2代目には、勘違い野郎が少なくなくて、飲みに行ったも、遊びに行っても
モノのように扱うヤカラがいて、得てしてそういう2代目の店は早晩、傾くことになる

こんな話をしていたけど、確かにそのとおりだと思うな・・・・・もっとも、2代目に限らず
他の人、特に女性をモノとして扱ような男は、商いも仕事も大成しないな、そう思うよ」

何やら、遠くを見つめながら。
かみしめるような話し方をする越後屋に。

「男はんだけとは限りまへんえ、女も男をモノのように扱えば・・・えげつないお人は・・・
男も女もあきまへん・・・さぁ、そんなしんきくさい話は止めて、今晩はゆっくり・・・・・・」

やさしく手を取り、しだれかかる女将。
どうやら越後屋と女将の間は、ヤボではないようで・・・。

というわけで。

越後屋の商い帳シリーズ、女性関係のお話。
ここいらあたりで、お開きとさせていただきます。

ではでは。次のお話でお会いできます日まで。
お後がよろしいようで、しばらくのお別れでございます・・・・。

2015年8月1日土曜日

2代目の若だんな 商いの次に失敗が多いのは!?

どこぞの町と同じで。
この物語の舞台である、とある城下町も。

風鈴がちりん、ちりん。
そんな優雅な夕涼みとは、無縁の暑い日が続いております。

まぁ、それはそれとして。
よし夏だ!今年はガンバるゾ!と。

気合十分なお天道様には、ちょっと申しわけないですが。

今日も今日とて、越後屋はなじみのお店で。
やや明るい夕刻のうちから、しっとりと女将と過ごしおりました。

「なぁ、女将・・・先日の若い二人との話だけど・・・」

「先日?・・・あぁぁ!あの武蔵屋と庄内屋の若だんさんとのお話どすなぁ~」

そう。女将は、越後屋と二人きりの時は。
生まれ育った京言葉で、時おり応えるのですが。

京にいたのも、まだ10代のころ。
女として、より一層の磨きがかかった今は。

人前でめったに、京言葉を使うことはありません。

「あの時に、チャンスの女神の話をしたけれどさ」

「はい、確かに」

「ようするに、チャンスとピンチはよく入れ替わる
チャンスと思っても調子に乗ると、足元をすくわれるって話なんだが・・・」

「はい、そうどしたなぁ」

「いやね、イヤな感はあたるというか・・・老婆心の話だったんだけど・・・
やはり大商いをまとめた庄内屋さん、ちょっとムリがあったみたいでね・・・」

「・・・何か、あったんどすか?庄内屋はん・・・」

「うん、やはり商い中にしくじって、大変なことになっているらしいわ・・・」

「そうどしたか・・・」

「それで、何か寝覚めが悪くてね・・・自分の予感があたった、ヤッパリな!という気持ち
あと言わんこっちゃない、それ見たことか!という気持ち、それにもう一つ・・・・」

「・・・もう一つ?・・・なんどすの?」

「いや、心のどこかで・・・失敗するように期待していたというか、何というか・・・
それで寝覚めが悪くて、今日はこうして一人で女将に会いに来たわけさ」

「そうどしたか・・・越後屋のだんはんは、ホンマにお優しい方どすなぁ~・・・」

「いや、やさしいわけじゃないよ・・・細かいところが気になるだけというか・・・
やはり他の人の不幸を願ったようで、そんな自分がイヤなんだろうね・・・」

「それが優しさとちがいますか・・・そんなあんさんが好きどす・・・ウチは・・・」

こういうと、やさしく頬を越後屋の肩に乗せる女将。

「ありがとう、オレも同じさ・・・」

そういって女将の肩をそっと抱く越後屋。

「・・・・そうそう、惚れた、好きだ、という話で一つ思いだしたよ・・・」

「へぇ、なんどすの?」

そっと杯に酒を注ぎながら、上目遣いで女将は越後屋を見上げます。
その色っぽさに、胸をキュンとつかまれる越後屋。

「・・・つくづく、思うわ・・・年がいくつになっても、何回も恋をして来たとしても・・・
恋に落ちたときめきと恋を失った悲しみに、慣れることはないもんだな・・・」

と、独り言のように女将につぶきます。

「それはウチも一緒どす、こんなお店をしてると
ぎょうさん、男衆はんを女将として見てきたんどすが・・・」

今日は二人きり、ということでお酒を付き合ってくれている女将に。
今度はそっと、越後屋がお酒を注ぐと。

「女将でなく、一人の女として・・・
好いたお人を見る眼は、それとは別のもんどすぇ・・・」

杯に少し口をつけながら、よりいっそう潤んだ瞳で。
女将は、越後屋に微笑みかけるのでした。

「そりゃ女将から好かれるなんて、男冥利につきるなぁ~
どこのどいつや?うらやましいかぎりだわ~」

「いけずせんといて下さい、知ってはるくせに・・・
思い出したって、そんな話どしたん?ウチの気持ちどすか?」

少しすねたように、越後屋の手をぎゅっと握る女将でした。

「ち、ちがうよ!女将の気持ちじゃないよ!
いやね、この間、備前屋の若だんなから相談があるって言われてね・・・」

年甲斐もなく、慌てた越後屋は。
女将の手のひらで、コロコロ転がされる若造のようです。

そんな越後屋の様子に、クスッ!笑いながら。

「備前屋はんって、昨年にお父さまを亡くして、跡を継ぎはったって言う・・・」

「そうそう、その跡を継いだ備前屋の2代目さ、それが相談ごとがあるというんで
人目につかないように、となりの宿場町の料理屋で会ったんだよ、そしたらね・・・」

「そしたら?」

「てっきり商いの相談かと思ったら、ちがうんだ、女、女の相談さ」

「おんな?なんでまた、越後屋はんに女の相談を・・・」

「そうだろう、そしたら、備前屋さんこういうんだ、
越後屋さんは女にも慣れているようだから、相談したって・・・」

「そうどしたか・・・越後屋はんは、おなごの扱いに慣れてるんどすか?・・・」

「おいおい女将、かんべんしておくれ、オマエが一番知っているじゃないか
こう見えてもオレは、あちらこちらで浮名を流すようなヤツじゃないって・・・」

「・・・フフフ、そうどすなぁ~あんさんは・・・出会ったころは・・・
こんな風にお店にも来いへんような、まるで漬物石みたいなお人どしたから・・・」

「漬物石ってか!そりゃ通い詰めるお店もなく、いつもおつきあいばかり・・・
そこまで思わせるおなごもおらんかったしな・・・オマエに出会うまでは・・・

・・・おっと!・・・おいおい、その話じゃないよ、備前屋の2代目の話さ・・・
どうもいかんなぁ~オマエと話していると、話が横道にそれていかん・・・・・・」

相変わらず、1人の男というか。
女将の前では、素にもどる越後屋でしたが。

「ようするに、何が言いたいか?って言うと、商いをやっているといろんな誘惑がある
一つは、さっき話に出た庄内屋さん、商いに対する欲、大きく儲けたい!という気持ち

そして儲けた人がうらやましい、武蔵屋の若だんなみたいな気持ち、嫉妬というのかネ
それは私も同じ、心のどこかで儲けたヤツがうらやましいというか、何というか・・・」

ここで、いつもの商人の顔になって、静かに話し始めます。

「その他に、もう一つ、よくある誘惑、それが女性の話さ・・・というのもね・・・
私は以前から、南蛮渡来の心理学って言うヤツの先生、それも学問所で学んだのでなく

養生所にいるお年寄り、牢に入れられた罪人、それに夫婦(めおと)や親子など・・・
いろんな現場で実践の経験を積んできたお人に、10数年、教えてもらってきたんだけど

・・・その先生が言うには、女性とのいろんな快楽や喜びは、商いの快楽や喜びと比べると
男性の行動欲と所有欲、何かをして何かをつかまえるという狩猟的な欲望と一致していて・・・」

そこまで言うと、杯のお酒をクッ!と空けて。

「・・・それで昔から、英雄色を好む、と言われたり
仕事のできるヤツは女性にモテる、と言われたりしているって話さ・・・」

さてさて。一見すると、男の勝手な言い分や言いわけ?に聞こえるかもしれませんが。

それは、それとして。

世の中には2代目と言われる、親の跡を継いだ息子さんが。
商いとか仕事の次くらいに女性で失敗したお話、決して少なくないように思います。

もちろん。程度の大小があって、ウワサ程度からちょっとしたトラブルから。
大きくなると商いを傾かせたり、世間さまに顔向けできないほどヒドかったりと。

いろんなケースがございますが、それも何よりも。
越後屋に相談してきた備前屋の2代目も、その手の話でございます・・・。

どうも越後屋の商い帳、実際に様々な2代目とあった話を物語にした上で。
備忘録として自分の反省も入れておりますことから、長くなっております。

その点は、お許し頂いて。

この話は、またまた次回。
お後がよろしいようで、続きまする・・・。

2015年7月23日木曜日

商いも恋も 一目ぼれこそ・・・

「まぁまぁ落ち着いて、話を最後まで聞いておくれよ、武蔵屋さん
まず人は、感情で行動を起こして、あとから理屈や理性で理由付けする・・・」

さすがに、マズいと思った越後屋は。
きちんと武蔵屋の若だんなの方を向いて語り始めると。

「というか、この感情というのは、子どもの頃からの親や周囲の人の教育や影響など
一見すると自分の感情や価値観だと思うかもしれないが、実は他の人からの伝承・・・」

は?一体、何が言いたいんだ?この人は?と顔をしかめる武蔵屋に。
まるで気づいていないかのように、淡々と話を続けていくのでした。

「たとえば富くじがあるよね
買う人からみれば夢があるとか、100両当たった人がいるとか

反対に買わない人から言わせれば
確率が悪いとか、当たるはずないとか、このように判断が分かれるね

どちらもある意味やある面では正しい、しかし別の面では間違っている・・・
どっちもどっち、甲乙つけがたいこと、世の中に多いというか、商売も人生も

白か黒か、右か左か、ハッキリしないものがほとんどだと言える・・・」

こう立て続けに、たたみかけるように越後屋は話します。

「そのとおりですけど、富くじの話とチャンスがつかめないという話は、関係あるんですか?
私は頭がグチャグチャで、何が何だか、よくわからなくなってますよ・・・」

今度は、やや弱りきった表情を浮かべる武蔵屋の若だんな。
ここから越後屋の話は佳境に入り、続いてまいります。

「ところがもし、誰も当たったことがない富くじならどうなる?
誰だって、決して買わないね、ところが確率は別として

確実に誰かには100両とか1両とか当たっているわけで
しかも他の人に当たって、自分には当たらないこともない

他人も自分も当たる確率、可能性は同じ、別の言い方や考え方をすれば
買わなきゃいつまでも、絶対に当たらないわけで、これもまた理屈に合った判断になるね」

こう一気に語り上げる越後屋に対して、押し黙ったままの武蔵屋は。

・・・・このおっさん、何を言いたいんだか・・・なんで富くじの話なんだ??・・・・

とまぁ、心の中でブツブツつぶやいておりましたが。

「言い換えれば、富くじを買う人は、最初から100両が当たった人の話とか
当たりやすい買い方や売り場の話を集めて、それを元に行動しているわけで

なぜ、そのような情報や話を最初から集めてしまうのか?といえば
子どもの頃からの親や周囲の人の教育や影響で、富くじを信じているからなんだ

反対に富くじを買わない人も同じこと、最初から富くじなんかお金のムダ遣い!
当てにならん!当てにしちゃだめだ!と教え込まれている、刷り込まれているのさ

このように人は、一見すると客観的な判断、たとえば多くの人が富ぐしを買っているとか
実際に100両が当たった人が、かわら版に出ていた、だからオレは富くじを買うんだと

こういう客観的な状況で考えて、自分は買うと決めたと
自分では、そう思っているかもしれないが・・・本当のところは

最初から富くじを買いたい!買ってもいいんだ!と感情で判断している
そんな自分の感情、直感的であいまいな判断を認める、自分を正当化するために

最初から買うと決めていたにも関わらず
富くじに当たった話や当たる方法の情報を集めて

あたかも客観的、冷静に分析して判断した
だからこの行動は正しいと後付で考えるんだよ」

ここまで越後屋が言い終わると。
武蔵屋の若だんな、ハッ!とした表情を急に浮かべて。

「そうか!富くじでなくても、たとえば商いの投資や売り買い
あとお客さんの行動も同じで、感情というか、子どもの頃からの価値観

潜在意識ってもんで、判断していると・・・」

武蔵屋は、自分に言い聞かせるように。

「だからこれはチャンスだ、今が良いタイミングだ
なぜなら、こういう情報があって、こういう数字かある

ソロバンや損得の計算も、ピッタリ
理論的にも、良いとされていると考えたとしても

そもそも最初から、これはチャンスだ!と決めてやっていることで

チャンスの女神がいる、というのも後付けの理屈や考え方
本当にチャンスがどうか、そういう意味では誰の保証も理屈もないわけで

チャンスの女神がどうか、わからない、違うかもしれないと考えれば!」

と話すと、越後屋はニッコリ笑って。

「その通り!武蔵屋さん、だから商いでチャンスと思える時
中でも、商品でもしくみでも、新しいことに商いで挑戦する時は

こうなったら止めよう、ここまでに結果が出なければ退くと
最初から決めて、臨んでいる商人ほど強いものはないんだよ

別の言い方をすれば、商人としてセンスの高い人は
商いを始めるとともに、撤退する道や相場、ラインを決めておける人さ

ましてや情報があふれかえって、良いものも悪いものも
とんでももない情報やインチキでも、一瞬に世の中に拡大する今の時代は

いろいろな出来事や状況が複雑に絡み合って
仮に筋が立っていた、理論や方法もすぐに陳腐化する

南蛮の国にあるという砂の海みたいな、砂漠という場所で
万が一に、道を外れると、水場に到着できず死ぬという考え方でなく

森や林の中、道に迷っっても、たまたま水場がある
ブラブラしていたら水が飲めた、くらいに考えて

チャンスやタイミングをつかんで成功したことは、あくまでも結果論
だからこそ、水が手に入ったことに安住してはいけないんだよ・・・」

今や目をキラキラと輝かせている武蔵屋に、こう告げるのでした。

「わかりました!越後屋さん!だから庄内屋の若だんなの大商いも同じで
大商いをまとめた!チャンスの女神をものにした!と思っても、油断してはいけないと

チャンスの女神が、魔女に化けて襲いかかるようになる、こう言いたいんですね・・・
・・・・・でも庄内屋さんの件、なぜ女神が魔女に化けるって考えたんですか?・・・・」

このような質問する武蔵屋に、越後屋は人目をはばかるように小声で。

「そうだね、ハッキリは武蔵屋さんにも言えないけど、庄内屋さんはかなりムリした節がある
まぁ、お縄になるほどヤバいことでないにしても、出入り商人の仲間内では問題になるな・・・

正直なところ、さっきのお城の出入り商人の寄り合いでも
庄内屋さんに聞こえないカゲでね・・・・

この敵(かたき)はとってやる!という人がいてね・・・
いくら商売の競争相手とは言え、敵と恨まれてはね・・・

たぶん長い目で見たら、この目先の成功より
ツケの方が大きくなるだろうね、それに一般的にも・・・・・・

・・・一度で3年分の商い、ってムリがあるとは思わないかい?
よく耳にしないかい?扇と同じ、広げすぎると倒れるもんさ・・・・」

と・・・マユをひそめながら話しかけました。

「ああ!その話は、少しウチの店にも聞こえて来ましたよ
でもウチのオヤジは、その手の話はキライで、人様の悪口は聞きたくないというか

実は私もキライで・・・あ!そうか!これも感情の判断、子どもの頃の価値観か!」

またまた理解を深めた武蔵屋の若だんな、そんな彼を見ながらうなづく越後屋は。

「いいかい武蔵屋さん、店の主人のそんな個人的な感情、価値観、感覚というものは
主人だけでなく、多くの店で番頭や手代、丁稚まで知っている、ウチの店はこうだ!って

たとえば、人様の悪口は言ってはいけないよ!って
武蔵屋さんの店では、良く店の者同士で話してないかい?

もしかしたら番頭さんが手代や丁稚さんにを叱る時とか
武蔵屋のオヤジさんや若だんな自身が、お店や家の人に良く口にするとか

これが商いでは大事な店の風土、家で言うなら家風になっていて、どんなことをする時も
風土や家風から外れる判断や行動は、チャンスの女神に化けた魔女に騙される元になる

別の角度から言えば、女神に化けた魔女を見抜く方法がコレ!

店の風土や文化、家の家風、自分の個人的な感情や価値観など・・・
この手のものを精神論と片付けたり、逆らっちゃたりしてはいけないんだよ

逆らうと目がくらんで、短期的には良い目にあってもね・・・
・・・・・・・・まぁ、その先は真っ暗闇、ということがよくあるんだ・・・」

ここまで言い尽くすと、ふと遠くを見つめながら。
遠い昔、いや自分の心の何かを見つけ出すように。

「・・・商いだけじゃないね、男女の恋仲もねそうさね・・・
・・・良い女、本当の女神に出会うには感情を曲げてはいけないよ

いくら美人だから、姿かたちが良いからって
そんな見方をするのでなく、惚れたかどうか?感情に身をゆだねる・・・・・」

そんな風に言うと、越後屋はそっと女将の手を握って。
やさしい眼差しで微笑みかけながら。

「・・・出会った意味や損得なんてなくていい・・・
・・・一緒にいられる、そんな時間が幸せならば、ね・・・・・・

商いも恋も、無意識のうちに出来た価値観での一目ぼれ
これが本当の女神に出会うコツさ、そうだよなぁ女将・・・・・・・・・」

と語りかけると。

女将もまた微笑みながら、黙ってうなずきます。

・・・え!?は!?・・・・・こりゃ~、オジャマかな・・・・・・

男女の中には疎(うと)い、武蔵屋の若だんなも。
さすがに感じるものがあったのか、二人のそんな様子に気押しされたのか。

「・・・おっ!もうこんな時刻だ!

越後屋さん、今日はいろいろな話をありがとうございました
私はこれでカゴを呼んで帰ります、越後屋さんはどうなされ・・・・・・・

おっととと、まだいらっしゃいますよね・・・・ではでは、失礼しま~す・・・・・・・」

と座敷をそっとあとにしました。

さてさて。このあと、越後屋と女将がどうなったか・・・・。

それは、みなさまのご想像にオマカセしまして。

越後屋の商い帳、その一の巻き。
チャンスの女神に前髪はない、というお話は。

ここいらあたりで、お開きとさせていただきます。

ではでは。次のお話でお会いできます日まで。
お後がよろしいようで、しばらくのお別れでございます・・・・。

2015年7月17日金曜日

商いの判断は、すべて一目ぼれ!?

え~本日も、備忘録。
越後屋の商い帳シリーズです。

うん?備忘録?越後屋の商い帳?
何だ?この話は?と思われる方は。

このシリーズの第1回目「むかし、むかし、あるご城下での話」編と。
前回の「チャンスは、つかめない・計れない・わからない!?」編をお読み下さい。

備忘録の解説や全体のあらすじが書いてあります。

ではでは、そういうことで。
お話の続きのはじまり~、はじまり~です!・・・・・・・・チョン!チョチョチョン!

○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○

越後屋は、ゆっくりと。

「まず知りたいのは、チャンスや良いタイミングというものは
なぜ自分でつかめない・計れない・わからないのか?その理由や原因だね?」

と言い、武蔵屋の顔をじっと覗き込みながら言葉を続けます。

「もう一つは、チャンスだ!良いタイミングだ!女神にオレは出会った!と思っても
実は落とし穴、ピンチ、悪いタイミング、というように魔女みたいなヤツがいる理由や原因」

そう!それです!と言わんばかりに、武蔵屋は大きくうなずきます。

「その上で、女神に化けた魔女を見抜く法則を知りたい、ということだね?」

ここまで武蔵屋の若だんなの質問を確認すると。

「では、最初に・・・
なぜチャンスやタイミングは、つかめない・計れない・わからないのか?から・・・」

相変わらず、片方の手に杯(さかずき)を。
もう片方の手は、そっと女将の手にやさしく添えながら。

「武蔵屋さん、商いってもんは、チャンスの後にピンチありとか、
ピンチの後にチャンスありとか、こう言われているのは耳にしたことがあるでしょ?」

こう言うと、越後屋は武蔵屋をひとにらみ。
にらむ、というよりじっと彼の目を見つめた、という感じでしょうか。

・・・・・この人は、酔っているのか?それともシラフ?わかんないな・・・・・・

武蔵屋は、するどく自分を見つめる相手の心を探るように。

「はい・・・たしかに、たまに・・・いや、よく耳にする話ですね・・・」

言葉を選びながら答えました。

「言いかえればチャンスとピンチは表裏一体、コインのオモテとウラ
クルクルと変わりやすい、パッと!ひっくり返るという話であるんだけど」

越後屋は、こう話すと、たたみ掛けるように語りかけます。

「昔もそうだけど、単純に情報量が増えて、何百倍にもなった今なら、
まさに混合玉石、チャンスを見分けがつきづらくなってきていると言えるな・・・

チャンスや良いタイミングをつかまえて一気に簡単に儲けたという話とか
反対に、ちょっとしたタイミングや出来事で大きなトラブルに巻き込まれた話とか

これをおもしろおかしく、注目を集めたい、目立ちたいとか、ウケを狙ったり
ロクに自分の目や足で調べもしないで、これこそ正論だ!真相だ!と言い放ったり

こんなヤカラが、ネット屋とか、かわら版屋などで幅を利かせているわけだね・・・・
これがつかめない、計れない、先が見えない、という表面的な原因なんだけど・・・」

ここまで一気に話すと、杯をグッと飲み干して。
フゥ~と一息、空いた杯をすっと女将に差し出して、酒を注いでもらいながら。

「そもそも、人間なら誰でも持つ2つの心、考え方があって
一つは世の中のどこかにチャンス、おいしい話があるにちがいない、こういった願望や欲望と

もう一つはチャンスか、良いタイミングか、正しいか、間違いかなど、判断するその基準が
実は必ずと言って良いほど、人は偏っている、これが根本的な原因と言えるだろうね・・・」

と続けるのですが、何やら眉間にシワを寄せながら。

「でも情報量が増えて、細部までわかることで、チャンスやタイミングが分析しやすくなって
かえって見分けや区分けがしやすくなる、客観的に見られる、私はそう感じるんですけど・・・」

武蔵屋の若だんなは、こう言うと食い入るように越後屋を見つめました。

「そうだね、たしかに選択肢や情報量が多ければ、分析はしやすいかもしれない
細かいところまで見えるから、細かい違いもつかめるかもしれないね・・・」

今度は一転、目を細めてやさしい眼差しでとなりの女将を見つめながら応える越後屋。
自分の話を真剣に聞いてない、目の前にまるで自分はいないかのようなその態度に。

「でしょ!しっかり分析して、よく吟味すれば
チャンスや良いタイミングを見わけられるんじゃないですか?」

少しムッ!とした武蔵屋は、やや大きな声でまくしたてます。

「ところが武蔵屋さん、その選択肢や情報に
最初から色や膜(まく)のようなものがついているとしたら?」

そんな武蔵屋の様子もかまわずに、越後屋が女将に微笑みながら。

「一体、どうなると思う?そう女将、お前さんはどう思うかい?
最初から色つきメガネで、世間様やまわりを見ていたとしたらさ?」

と語りかけると。

「いやですよ、越後屋のだんなは・・・武蔵屋の若だんなが真剣に話しているのに
そんな目で私を見つめて・・・色メガネは色メガネでも、ちがう色がお顔に出ていますよ・・・」

と微笑み返して女将が応えるもんですから、見てられんわ!とイライラしながら武蔵屋は。

「そうですよ!越後屋さん!女将とイチャつくのは後にして、今は私と真剣に話してくださいな!
私ゃ~どうしてもチャンスやタイミングをつかんで、庄内屋の若だんなを見返したいですよ!!」

ついホンネがポロリ、と出てしまいました。

おやおや、ヤッパリね!と思いながら、おだやかな表情を浮かべる越後屋が。
そのまま武蔵屋の若だんなの方に、やさしい眼差しを振り向けると。

「いやいや、悪かった、悪かった、武蔵屋さん、真剣に聞いてないわけじゃないんだよ
いやね、最初から色メガネで見ている、というのは男女の仲も同じで・・・そう、一目ぼれね・・・」

と話すもんですから、武蔵屋はますます興奮して。

「だから!商いの話をしているんで、男女の恋仲の話をしているんじゃんないんですよ!!
第一、私ゃ女に一目ぼれするような軽い男じゃありません!一目ぼれしたことないですよ!!」

とまぁ、お酒で赤くなった顔をさらに赤くして。
かみつくように話すと、越後屋はさらに優しい顔になって。

「いいかい、若だんな、女に一目ぼれしたことがない、ということが違っているんだよ
人は男も女も、恋仲になるのはすべて一目ぼれ、そして商いの判断も、すべて一目ぼれさ・・・」

またまた女将を見つめながら応えたもんですから、さぁ大変。

「商いも一目ぼれ!?そんなわけないでしょ!そんないい加減なことで商いはできないでしょ!
一目ぼれで商いしたら、失敗が増えて、いつか店つぶして、身代なくすのがオチですよ!!」

武蔵屋はヒートアップ、興奮もピークになります。

さてさて。百歩譲って、男女の恋仲が一目ぼれだとしても。
商いまで一目ぼれ、という越後屋の言わんとしていることとは。

この話は、またまた次回に。
いよいよ最終回、チャンスの女神が魔女に変身するナゾも解けます。

お後がよろしいようで・・・。

2015年7月7日火曜日

チャンスは、つかめない・計れない・わからない!?

え~ここまでお話が、だいぶ長くなりまして。
途中からお読みの方もいるんじゃないか、と。

そう思いますんで、少しここまでのあらすじをご紹介します。

とある城下町で、お城の出入り商人3人が酒席を開いておりました。

ご城下でも、中堅の規模のお店を開いております越後屋さん。
あとは大店の庄内屋の若だんな、そして庄内屋と同い年の武蔵屋の若だんなです。

庄内屋の若だんな、どちらかっていうと普段から遊び人というか。
あまり商売に身が入っておりませんが、なんと1500両もの大商いをまとめます。

いつもは厳しい庄内屋の主、父親からもほめられて。
うれしさのあまりハシャギすぎて、飲みすぎて、先に帰ってしまいます。

その自慢話や様子を見ていた、武蔵屋の若だんなは。
いつもマジメにコツコツやっているのに、なんで庄内屋が!と思いつつ。

歯がゆさに、庄内屋さんは運がいい。
それに比べ、自分は・・・と落ち込んでしまいます。

そんな武蔵屋の様子を見て、少し年配の越後屋は。
商売をする上で、大事な柱、人、モノ、お金、情報のうちで。

情報を一番に大事にしていて、その中でも商いの流れ、タイミングを。
とりわけ大切にしている、と諭すように武蔵屋の若だんなに語るのでした。

すると、タイミング、チャンスの流れ、それをつかむこと。
よく耳にする、チャンスの女神の前髪をつかむことが大事なのか?と。

こう尋ねる武蔵屋に、越後屋はチャンスの女神は神話の世界のつくり話。
前髪どころが坊主頭、だから誰にもつかめない、後付けのお話と語って。

チャンスの女神より、大事なのはジャッジの女神。
しかも女神に化けた、魔女を見抜くことが大切だと話すのです。

ますます、?マークがいっぱいの武蔵屋の若だんな。
そんな様子に理解を示しつつ、越後屋の話は続くのでした・・・・。

「いいかい、武蔵屋さん、わたしは、商いでタイミングを大切にしていると話したね?」

怪訝そうな武蔵屋の顔を覗き込みながら、越後屋は話を続けます。

「そのタイミングなんだけど、いくらタイミングをとろうとしても、自分じゃとれない
良いタイミングを計ろうとしても、自分じゃ計れない、わかんないとわたしは思っているんだ・・・」

そういうと、いつの間にか。

越後屋と武蔵屋の話をジャマしないように、そっと座敷に入ってきた女将が。
静かに微笑みながら、新しくもってきたお酒を越後屋に注ぎます。

その微笑に、微笑をかえしながらお酒に少し口をつけると。

「そういう意味では、チャンスとは、良いタイミングだった、と言えるけど
自分じゃチャンスは、とれない、計れない、わかんないわけで・・・・」

越後屋は、話を続けながら。

「だからチャンスの女神はいない、いるとしたら前髪もなく、坊主頭で
つかみようがない、いるとしたらチャンスの女神でなく、ジャッジの女神だと
あれがチャンス、良いタイミングだったか?とジャッジ、判断する女神しかいないわけで」

越後屋は、ここまで話すと。
またまた武蔵屋から見えないように、そっと女将の白い細い手を握りながら。

「そのジャッジの女神に、実は魔女がいる、と言ったわけさ・・・
ま、女は魔物、という話と同じかもしれないけどなぁ~・・・」

と今度は、武蔵屋にもハッキリわかるくらいに。
ニコリと女将を見つめると、女将もおやおや!というように越後屋を見つめ返します。

だいぶ男女の仲や女性に疎い(うとい)?武蔵屋の若だんなですが。
さすがに越後屋と女将の関係に、何ならぬ雰囲気を感じながら。

「ほっ?あっ!?え!・・・女は魔物、女神だから魔女、ってわけですか・・・」

かえって、そんな二人に自分が恥ずかしくなったかのように。
言葉につまりながら、武蔵屋は素っとん狂な声を上げて返事をします。

「そう、女は魔物、だからおもしろいんだが・・・おっと!話が横道にそれたね・・・」

武蔵屋の動揺した様子にも、気にせず手をとったまま女将を見つめていた越後屋ですが。
武蔵屋の方に目を向けて、彼の表情を確かめるように、静かに語り始めました。

「要するに、タイミング良かった、チャンスをつかめた、または良い結果だと思ったら
実はタイミングが悪い、つまりチャンスのようで落とし穴、悪い結果があるということでね」

そういうと、静かに杯(さかずき)を空けると。
そっと差し出す女将からの徳利を受けながら。

「だから良かった、チャンスをつかめた、女神に出会った!と思ったら
悪かった、落とし穴だった、本当は魔女だった!となるわけで」

こう続けた越後屋は、さらに声を低めて。

「その女神と魔女を見分ける法則、魔女を見抜く法則がある・・・・
と話したわけだけど、まだ興味があるかい?武蔵屋さんは?」

と語りかけるのでした。

すると。

「ええ!もちろんです!とういか、チャンスは、なぜ自分ではつかめないのか?
計れないのか?わからないのか?それに、なぜ女神のように見える魔女がいるのか?
そういうことも、よくわかっていないんで、そのことから教えててもらえませんか?」

武蔵屋の若だんなは、グッと身を乗り出すようにこたえるのでした。

さてさて。

なぜチャンス、つまり良いタイミングは。
自分では、つかめない・計れない・わからないのか?

また結果が出てから、良いタイミングやチャンス、良い結果だったと判断する時に。
なぜ、女神に化けた魔女がいるのか?女神の中に魔女が隠れているのか?

そして、その魔女を見抜く法則とは?いったい?・・・・・・

この話の続きは、次回へ続きます。
お後がよろしいようで・・・。

2015年7月3日金曜日

女神に化けた魔女!

さてさて。お話の続きでございます。

越後屋がつぶやくナゾの一言。

「チャンスの女神が坊主頭」

に対して、え?坊主頭?なんでだ???
そんな思いをぶつけるように。

「でも運のイイヤツ、悪いヤツ、早く成功するヤツ、なかなか成功できないヤツ
っているじゃないですか!まるで庄内屋の若だんなと私のように!!」

と叫ぶ武蔵屋の若だんな。
どうやら、彼には越後屋の話がよくわからないようで。

そのまま、ショボン!と視線をタタミに落としてしまいました。

ま、理解できないのも仕方ないか・・・と内心は思いながら。

「いいかい、武蔵屋さん、わたしゃ~こう思っているんだ
運は単なる結果や成果が出てからの理由付け、成功するもしないも結果論・・・って」

なぜか、昔を思い出すかのように遠くを見つめて。
かみしめるように、越後屋は話を続けます。

「成功だってそう、誰でも100%成功すると最初からわかっていることはない
結果として、成功した!失敗した!となって、初めてわかるもんなんだ・・・」

今度は、目の前の杯(さかずき)の酒に。
小さく写る、自分の顔を見つめながら語る越後屋。

「だからチャンスの女神も、後からの理由付け 結果論なんだよ
もし、いたとしても、誰にも気づかれずにそっと通り過ぎて、すっ~と静かに消える」

そういうと、酒をグッ!と飲み干し、自分の杯に酒を注ぎながら。

「そう、後からアレが女神だったかも?と思ってオレは女神を見たぞ!
女神の前髪をつかんだぞ!って、ある意味のつくり話、神話にしただけと思うよ」

越後屋は、そう言うと。
武蔵屋に、最後の徳利を差し向けながら。

「まぁ武蔵屋さん、もう少しオレの酒に付き合いながら聞いて下さいな
他の誰にも言っていないんだけどね、後からつくられたチャンスの女神にもね・・・」

一段と小さな、低い声でゆっくりと語りかけます。

「・・・・実は、本当の女神と相手を呪い殺すような魔女がいるとしたら、武蔵屋さん
アンタ、いったいどう思う?恐くはないかい?私は、何より一番に恐ろしいと思うけどね・・・」

・・・すると。

「え?女神じゃなく、魔女?ですか??」

とようやく顔を上げ、徳利が差し出されているのに気づいた武蔵屋の杯に。
ホンの少しだけ、残った酒を注ぎながら大きくうなづいた越後屋は。

「そう、本当に女神と魔女がいるんだ・・・正直に話すと、私自身も何回か出会ってきた
それでね、苦労しながらね、女神か?魔女か?見抜く法則を見つけたんだけど・・・
武蔵屋さん、もしそんな法則があったら、興味があるかい?知りたいと思うかい?どう?」

と続けました。

「そりゃ~知りたいですよ!ぜひ!女神と魔女がわかればイイですよね!
・・・・あれ?待てよ・・・越後屋さんは、さっき女神なんて後付だ!いない!って
こう話していましたよね?じゃあ女神と魔女を見分けても、意味なんてないんじゃ??」

食いつくように目を見開いたと思ったら、またマユをしかめる武蔵屋に。

「そのとおり、みんなが話すようなチャンスの女神はいない、坊主頭で先にはつかめない
さっきも言ったとおり神話の世界、後から結果論として現れる女神さ・・・でもね・・・」

と武蔵屋の若だんなをじっと見つめる越後屋は。

「チャンスの女神に化けて、美しいけど、本当は恐ろしい魔女はいるんだ」

と諭すように語りかけました。

「えええ???チャンスの女神に化けた魔女??って???
よくわかんないですよ!なんなんです?その魔女は???」

間髪をいれず、言い返してくる武蔵屋の肩をポンポンと叩きながら。

「まぁ落ち着いてよ、武蔵屋さん、そう急かさないで下さいな」

と言いながら、さっ、お飲みよ!と酒を進める越後屋は。

「あれがチャンスだったのか?それともあれがチャンスじゃなかったのか?と
結果や成果が出てから、結果論として理論つげする、判断する、ジャッジする女神
これがわたしの考える、チャンスの女神、ってヤツの正体なんだけどね・・・」

自分も、杯をグッと空けながら。

「始末に悪いのは、その中に女神に化けた恐ろしい魔女がいることなんだ・・・・」

越後屋が、こう続けると。

「・・・・でも、後からジャッジって・・・女神とか魔女とかの意味がない気がしますが・・・」

合点がいかない武蔵屋は、怪訝そうな顔をしています。

「いや、そうでもない、というよりも、武蔵屋さんをはじめ、みんなの思うチャンスの女神
前髪があって、成功のために先につかむ女神よりも、ジャッジの女神の方がね・・・・・・・
・・・そうだねぇ~・・・・何倍、何十倍も大切、それくらい重要な女神だと思うけどね・・・・」

またまた、昔を思い出すように遠くに視線を投げかけながら。

「・・・・・そう考えると、庄内屋さんの1500両の大商いも、女神でなくて・・・・・・
もしかしたら魔女、しかも飛び切り性悪な魔女が関係していそうなんだよね・・・」

とつぶやくのでした・・・・・・・・。

さてさて。一体、チャンスの女神より大事なジャッジの女神とは?
その女神に化けた魔女とは?庄内屋の大商いに隠れている魔女の正体は?

この話は、次回に続きます。
お後がよろしいようで・・・。

2015年6月23日火曜日

チャンスの女神は坊主頭?

さてさて。越後屋の話、その続きをさせていただます。

とある城下町、そこの大店の御用商人の一つ庄内屋。
そこの若だんなが、はじめて大商(おおあきな)いをまとめました。

そして鼻高々に、連れの越後屋や料理屋の女将に自慢したのですが・・・。
1500両もの大商い、そりゃ他人に話したくもなるってもんです。

そこで、越後屋は。
若だんなを持ち上げようと、話を続けます。

「いいかい女将、庄内屋の若だんなのところのお城との商いは・・・
そうだね、1年で500両くらいだから3年分にはなるだろうねぇ~!
それくらいの大商いを若だんなは、一人でまとめ上げたってわけさ!」

そんな越後屋の言葉を耳にして。
案の定、テンションが上がった庄内屋の若だんな。

グイグイと機嫌よく、女将から注がれ杯を重ねると。
カワヤへ、っと言ってフラ~っと立ち上がったと思ったら。

そのまんま!ガラガラガッシャーン!と転んでしまいました・・・。

そんな様子を心配になった越後屋は。

「今日は、お帰りな庄内屋さん、また後でお祝いだ!」

ポンポンと肩をやさしく叩きながら、庄内屋の若だんなを諭すと。
さすがに飲みすぎた!と思ったのか、庄内屋もうなずきながら。

「ええ、そうさせてもらいます・・・」

というので、越後屋は女将に言ってカゴを呼ぶと。
芸者さんをつけて、庄内屋の若だんなを店の外へ見送らせます。

越後屋と武蔵屋の若だんなと女将の3人になって。
さっきまでの大騒ぎが、ウソのように静かになった部屋で。

「いいな、庄内屋の若だんなは・・・オレなんか・・・
せいぜいガンバっても1本、100両の商いが精一杯・・・」

今度はポツリ、武蔵屋の若だんなが小声でつぶやきました。

「ウン!?どうしたい、武蔵屋さん、そんなことはないさ
いいかい、商いってもんは一発勝負じゃないんだ、わかるかい?・・・・」

いつになく、やさしい声で話しかける越後屋に対して。

「はい、そりゃ~わかります・・・でも・・・わたしの15倍ですよ・・・
大したもんだ、というか・・・正直、うらやましいなぁ~って・・・・・・・」

武蔵屋の若だんなは肩を落として、うつむき加減に。
途切れ気味の声で、自分に言い聞かせるように小声で話します。

「なるほどね、100両の15倍は1500両だなねぇ~
それを庄内屋の若だんなは一発で決めた、確かに15倍だねぇ~」

グチの始めた庄内屋を見て、こりゃ~弱ったとばかり苦笑い。
となりの女将の方に顔を向け、にこやかに見つめながら応える越後屋に。

女将もまた「おやおや、越後屋さん、また大変ね!」という感じで。
やさしい微笑を浮かべて、何やらイイ雰囲気で越後屋を見つめ返します。

この二人、武蔵屋が視線を落としていることをイイことに。
そのまま、お互いの手をそっと握りあってしまいました。

ところが!不意に!顔を上げた武蔵屋の若だんなが。

「だってそうでしょ!越後屋さん!
15倍ですよ!15倍!それもたった1回の商いですよ!」

と叫ぶもんですから、慌ててパッ!と手を離す越後屋と女将。

そんな二人の様子には、気づくはずもない武蔵屋の若だんな。

「・・・その点、私なんか100両と言っても・・・月に20両・・・
しかも1回あたりの商いが5両で月4回、それで5ヶ月で100両・・・」

今度は、一転してまたうつむくいて。
ブツブツと独り言のようにつぶやいたと思ったら。

またまた急に顔を上げて、天井を仰ぎながら。

「1回あたりだったら・・・300倍!300倍ですよ!
とんでもない差だぁ~!あああ!庄内屋なんて!」

ここで、武蔵屋は杯をグィ!と干すと。

「アイツなんか、いつも飲んでばかりで芸者遊びして!
オレはコツコツ、コツコツ・・・まじめに商いしているのに!」

とまぁ~一人で叫び始めまして。
次の瞬間、またガクッ!と肩を落としてうつむいてしまいました。

そんな武蔵屋の様子を見て、越後屋と女将はまた見つめ合って苦笑い。
これまでにない、低い落ち着いた声で、ゆっくりと越後屋が語りかけます。

「いいかい武蔵屋さん、わたしゃ~商いにはいろんな要素がある中で
簡単にいえば、商いは、人、モノ、金、情報、この4つで出来てると思ってるんだ」

ここまでいうと、一息ついて。
女将が新しく注いでくれた杯をクッと空ける越後屋は。

さらに低い声の落ち着いた口調で。
目の前の武蔵屋の若だんなでなく。

まるで、自分に言い聞かせるように。

「その中でもね、私自身は情報が一番に大事で
その情報の中でも、とりわけ商いの流れ、タイミングを大切にしているんだ」

と続けます。

「よく言う、チャンスの女神は前髪しかない
だから、タイミングよく、速めに商いのことは進めろ、って話ですか?」

うつむいて、その表情はわかりませんが。
そんなことは知っているよ、と言わんばかりの口調の武蔵屋に対して。

越後屋は、意に介さずに。

「いやいや、そうじゃないんだ
チャンスの女神がいるとしたら、前髪も後ろ髪もないんだよ」

と言いながら、女将に目を向けると。

「そうだね、尼さんみたいに坊主頭のような気がするな
それも色っぽい尼さん、女神というくらいだからイイ女なんだろうね~」

また越後屋と女将は見つめ合い、そして手を握り合いながら。
オレのイイ女はココにいる、とばかり女将を見つめながら応えます。

「そんなもんですかねぇ~・・・私はまだ若いから・・・
尼さんの色気って、わかんないですよ!そんで尼さんをそんな目で見たことないし!」

何か、からかわれていると感じたのでしょうか?
武蔵屋の若だんなは、はき捨てるように言うと。

まさにヤケ酒、目の前の徳利を手にすると。
一気にゴクゴク!と、ラッパ飲みしてしまいました。

おやおや、弱ったもんだ・・・とまたまた越後屋は苦笑いしながら。
黙って女将にカラの徳利を振って、ちょっと席を外すように促すと。

女将は微笑んでうなずくと「お酒のお代わり、お持ちしますね」と言いながら。
スッと立ち上がり、カラの徳利を持って静かに座敷を出て行きます・・・。

女将がふすまを閉める音を合図に、グッ!と武蔵屋に身を乗り出して。
彼の肩に手をおくと、おもむろに越後屋は。

「いいかい武蔵屋さん、私が言いたいのはね
そもそも商いに、チャンスの女神はいないということなんだよ」

と語りはじめました。

「仮にいたとししても、前髪も後ろ髪もない、本当に坊主頭なんだ
だからつかみようがない、つかもうと思ってもムリなんだよ」

と諭すように、武蔵屋に話しかけますが。

さてさて。チャンスの女神が坊主頭って???

この話は、次回に続きます。
お後がよろしいようで・・・。

2015年6月19日金曜日

むかし、むかし、あるご城下でのお話

え~とある城下町でのお話です。

お城の御用商人の大きな寄合いがありまして。
主だった町の商人たちが、ズラッ~と一堂に会しました。

その帰り道なんですが、一杯やろう!っていうんで。
3人のだんな衆が、料理屋さんに軽い足取りで入ってまいります。

少し年の離れた越後屋のだんなと。
同い年の庄内屋、武蔵屋それぞれの若だんなです。

そこで芸者さんをいれて、ドンチャン、ドンチャンと。
騒いでおりましたところ、だいぶお酒もすすみまして。

庄内屋の若だんなが、ふいに。

「聞いてくださいよ、越後屋のだんな!
わたしゃねぇ~スゴイ御用をお城から頂くことができたんですよ~!」

やや?トロ~ンとした目で越後屋の前へ来ると話しだします。

「ほう、そりゃ、そりゃ・・・・で。いったい、どんな御用なんだい?庄内屋さん」

越後屋は、年も離れているせいか。
芸者さんは、み~んな若い2人に追いやって。

ドンチャン、ワイワイと楽しそうに騒ぐよう芸者さんたちを盛り上げながら。
芸者あがりの料理屋の女将にお酌をしてもらい、上機嫌でおりましたが。

おや?何を言い出すんだろう?と少し困惑しながら聞きました。

「いやね、大商いです!お・お・あ・き・な・い!なんですよ!」

「大商いねぇ~・・・ほう!あんさんがずっと追いかけていたアレかい?」

「そう!そうなんですよ!越後屋のだんな!!アレ!例のアレですよ!
いゃ~嬉しくて嬉しくて!オヤジもね、大したもんだ!とホメてくれてんですよ~!」

「そいつは良かったね、庄内屋さん!
庄内屋のオヤジさんは、なかなかホメるようなお人じゃないからねぇ~!」

「ホント、そうなんですよ!めったにホメないウチのオヤジもホメてくれた!
ところで、一体いくらくらいの大商いだと思う?ねぇ~女将さん!」

庄内屋の若だんな、越後屋に寄り添っていた料理屋の女将に切り出します。

「さぁ~私には、思いもつきませんねぇ~
さぞかし大金、すごい大商いなんでしょうねぇ~」

酒席でのこの手の話に、手馴れた女将は。
まるで少女のように、ニコニコしながら聞き返すと。

「15本、じゅうご!だよ!女将さん、15!」

庄内屋の若だんなは、テンションを上げながら。
両手で1回、片手で1回、女将の前へ突き出しながら叫びます。

ココで、あまり適当なことを言って。
気分を悪くしては困るといった表情を少し浮かべた女将に。

すかさず、越後屋が助け舟をだして。

「女将、オレたちの商いは、1本といったら100両さ
だから1500両ということになるなぁ~」

と女将の耳元でささやきます。

すると、パァっとにこやかに女将が。

「まぁ!それは良うございましたね!おめでとうございます!」

やや大きな声で言いながら、庄内屋にお酌をします。

「そうでしょう女将さん!2年もガンバった甲斐がありましたよ!」

いただいたお酒をグッ!と飲み干すと、庄内屋の若だんなは。
大きな声で顔中クシャクシャにしながら、ニコニコと話すのでした。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

・・・今回から。

新シリーズ「越後屋の商い帳」をお送りします。

越後屋がいろいろと語る、商いの考え方や発想など。
実は、私の周りで実際にあった2代目経営者の話を元に。

これは忘れてはいけないな、と。
自分への戒めや教訓をまとめた寓話、作り話です。

言い換えれば、私の備忘録。
ある面では、自己満足のかたまりのようなものです。

そのためササササッ!と軽く読み流してもらうために。
架空の商人、越後屋を主人公にした物語としました。

もちろん、登場人物には実在のモデルはいますが。
現実にある同じ屋号や特定の会社、人物とは関係がありません。

その点を差し引いて、お読みいただくと幸いです。

ではでは。この話は、次回に続きます。
お後がよろしいようで。

2015年6月10日水曜日

忍耐力、自分は弱いという覚悟

経営者にとって、大事な考え方やスタンス。
経営や仕事で、脱落して行く人の特徴。

これらに関して、ある経営者がコメントしています。

藤田晋さん、という方なのですが。
名前を聞いて、パッ!と顔を思い浮かべた方も少なくないでしょう。

そう。あのアメーバブログ、アメブロで有名なサイバーエージェント。
IT業界のトップランナーの一人、藤田晋社長のことです。

彼が、競争社会とも言える企業社会で。

「同世代の数多くいたライバルをボクが抜いたのではない。
 彼らが、勝手に落ちていったのだ。」

と話しています。

その上で、仕事のレースで脱落していく人を。

1.忍耐力のない人
2.目標設定が低い人
3.固定観念が強くて変化できない人

という順番で上げています。

2の目標設定が低い人は、高い人にはかないません。

高い目標を掲げ、必死であがいている人とは。
所詮、志やモチベーションが違うのです。

3の変化できない人は、遅かれ早かれ行き詰ります。

仮に高い目標や志やモチベーションがあっても。
固定観念に縛られていては、いつかは手詰まりなるのです。

しかし、一番に早く脱落するのは。
忍耐力のない人、と藤田社長は述べています。

考えてみれば、私たちのような2代目経営者も。

企業社会に生き、競争社会に生きているのですから。
当然といえば当然ですが、見事に当てはまると思います。

たとえばライバルが、新規事業や新商品で成功したとか。
知人が新市場で売上げや利益を伸ばしていると、ついつい。

オレも何か!と考える、これからはコレだ!とウキウキと走り出す。
実は浮き足立って、地に足が着かないでいることに気づかずに。

地味な現状に忍耐できず、ガマンできずに進んだ結果。

やがて自分のペースは乱れ、空回りしてパッタリ。
広げすぎた扇のように、パッターンと倒れる。

恐らく、先代からの教えや地味な事業を頑なに守っていく人より。
このような経営姿勢の2代目の方が、会社をつぶしている気がします。

その上で大事なのは、耐えながら、何もしないのではなく。
守る、流れを見極める、潮目の変わるの観察する、不安と戦う。

自分のタイミングでなく、しのいで、しのいで、しのいだ先に。
やってきたチャンスやきっかけをつかみ、勝負していく。

藤田社長は、このようにも話しています。

おもしろいのは、これらの話を藤田社長が。
師事している、20年間無敗の伝説の雀鬼(じゃんき)。

実は以前。足かけ6年、131号まで発行していた2代目横丁のメルマガ。
2代目横丁「かわら版」では、何度か登場していた桜井章一さんという方。

この方が述べる話に感化されて述べている点です。

桜井章一さんをご存じない人もおられるかもしれませんが。
この方は、いわゆるプロの「麻雀打ち(プロ雀士)」でした。

しかも、いろいろな権力者(ウラ社会も含む)からの依頼を受けて。
大金や利権を賭けて麻雀する「代打ち(代理で打つ)」をしていた人。

たとえ莫大なお金をつまれようとも、刃物を首に突き付けられても。
自分の納得のいかない麻雀は打たない、自分の姿勢を貫き通した人。

そのような世界で、20年間無敗を続けた麻雀の鬼「雀鬼」と呼ばれた男。

それが桜井章一さんなのです。

この方の元で、藤田社長は麻雀を通じて。
さまざまなことを学んだそうです。

たとえば、自分が弱いと自覚している。
弱いことを認める、これが真の強さというもの。

その上で。

ゲームの流れやライバルの動向を考えて。
そして弱いという前提で、行動する、決断する。

弱いから、あきらめるのでなく。
弱いと、覚悟を決めて事柄に臨む。

これは、私たち2代目に必要な心構えの一つ。
事業の継続のために不可欠なスタンスだと思います。

もちろん、私たち2代目経営者から見れば。

藤田社長は、日本でも指折りの起業家であり、創業経営者。
その藤田社長の師、伝説の雀鬼と言われる桜井章一さんは勝負師。

忍耐力にしても、自分は弱いという覚悟にしても。
比べようもないほど、強く、深く、大きいものです。

それでも、桜井さんが藤田社長に語った一言。

「負けの99%は自滅である」

という言葉にあるように、どうしても私を含めて2代目という立場の人は。
忍耐力と自分は弱いという覚悟に乏しく、自滅する人が多いように思えます。

あなたの周りにも、一人や二人いませんか?

周りの人に、大きく見せようとか、強く見せようか。
えらく見せようとか、力や金があるところを見せようとか。

こんな立ち居振る舞いをする2代目経営者、特に男性の人!です。

また一方で、反対に卑下するような態度の2代目経営者もいます。

しかし、内心はバカにされたくないだけで。
強く見せたいという本質は、変わらないのではないでしょうか。

最後に、一つだけ本のご紹介を。

忍耐力、弱いという覚悟、負けの99%は自滅。

これら一連の話の他に、さまざまな桜井さんの言葉を元に藤田社長が。
麻雀の世界、勝負事の世界の話を経営やビジネスの視点で語った一冊。

「運を支配する」(桜井章一、藤田晋・著)が新書で出ています。

もしよろしければ、ご一読下さい。

ではでは。また。






2015年5月27日水曜日

置かれた場所で咲くことも、逃げることも

置かれた場所で咲きなさい、という言葉があります。

たしか、どなたかの本のタイトルだと思いますが。
本、テレビ、SNS、ブログ、Twitterなどなど。

いろいろな媒体で、言葉を発する時、意見を述べる時。
言葉そのものの意味よりも、発信した人にフォーカスして。

誰が言ったのか?どんな立場の人がコメントしたのか?
その人の経歴や経験は?日頃の言動はどうなのか?

このような人の評価、また発信した人と自分を比べることで。
言葉の受け止め方や感じ方が、大きく違うことがあります。

それは何かを注意された時、たとえば仕事上の判断ややり方とか。
箸の使い方や食べ方、また自分が劣っていると思っている点とか。

尊敬する上司か、それとも普段から生意気だと思っている新人からか。
愛してやまない異性か、それとも気にもならないどうでも良い異性か。
自分が理想とする先輩か、それとも自分と同等と思っている同僚か。

同じ「その判断は間違っている、そのままだと成功しない」と言われても。
同じ「箸の持ち方が違うよ」とか「それは、こう食べた方がイイ」と言われても。
同じ「そこは変えた方がイイ」とか「そのことは直すべきだよ」と言われても。

素直に言葉のとおり、耳を傾けられることもあれば。
無視したり、反発したりすることもあると思います。

それも、普段なら素直に聞ける尊敬できる上司でも。
愛している恋人でも、理想とする先輩でも。

自分の心が体が疲れているとか、ちょっとした言い回しや言い方とか。
自分の状態や相手の無意識な態度などでも、受け止め方が大きく違うでしょう。

当然、この「2代目横丁」のコメントもそうです。

同じ2代目経営者、という立場で発信しているつもりでも。
AさんとBさんでは、受け止め方が大きく違うことが起こる。

これが自然であり、あたり前のことだと思うのです。

そう。置かれた場所で咲きなさい、という言葉も。

その時、その場を受け入れて。
自分なりに懸命に咲く、という意味合いでは。

先代から事業を引き継ぎ、何の苦労もなく財産を手にして。
恵まれた環境に見えているが、実際は実を削る思いをもって。

ボンボン、アマちゃん、お嬢ちゃんと言われ反発しながらも。
至らない自分、力のない自分を反省しながら進もうとしている2代目には。

まさに、生まれ持った2代目という「置かれた場所」で。
先代の色を活かしつつ、先代ほどの大輪でなくとも。

自分なりの花を咲かすために、場合によれば別の花を咲かそうと。
まじめに精進している、周囲の人に心を砕いている2代目にとっては。

そうだよな、と共感しやすい言葉だと思います。

一方で、同じ2代目から見ても温室で育った2代目。
世間でよく言われるだけあって、決して少なくない真のボンボンやお嬢ちゃん。

ワキのアマい2代目、周囲の人に配慮もない2代目、自分を特別視している2代目。
恐らくこのような方たちは、この「2代目横丁」を読むことも、気にすることもないでしょうが。

置かれた場所で咲きなさい、と言われても。
生まれ持った2代目という置かれた場所に、疑問や悩むこともなく。

感心することも、関心を持つこともなく。
また奸臣に足元をすくわれるまで、寒心することなく。

日々を過ごしているように思えます。

もちろん、置かれた場所で咲きなさい、という言葉に。

共感した努力を重ねる2代目が偉いとか、良い2代目とか。
無関心で寒心の経験ない2代目はダメとか、悪い2代目とか。

このような話をするつもりは、1ミリもありません。

それぞれで良いのです。
自分の感じ方で、受け止め方で何の問題もないのです。

ただ「2代目横丁」は、前者の悩んだり、迷ったりしている2代目。
毎日、頭やワキに冷や汗をかき、前へ進もうとしている2代目に。

共感して、少しでもお役に立ちたくて。
さまざまなコメントや情報を発信している存在です。

ですから、置かれた場所で咲きなさい、という言葉も。

置かれた場所、生まれ持ったというだけの2代目という場所であったり。
置かれた環境や配偶者との関係で、跡を継いだ2代目という場所であったり。

自分の意志や決断より、生まれや血縁や婚姻などで2代目となって。
それでも継いだ以上は、自分なりに努力を重ねて、苦労をしている。

このような思いを持つ2代目に、伝えたい解釈があります。

置かれた場所で咲く、このような心持ちは。
環境や現状を受け入れる、心に徳のある人が持ちえる心境で。

ニュートラル、自然体、という言葉にも近くて。
まさに無の境地とは、何もないのでなく、すべてを受け入れることですから。

素晴らしい信条、目標としたい考え方になるかもしれません。

しかし、同時に。

生きるためだけに、食べ物を探して、食べて、寝て。
子孫を残すためだけに、本能のままに行動する生きものでなく。

人は、自分の意思や心や感情で行動する生きものです。
人は、自分の意志や心や感情を折り曲げて行動すると病になる生きものです。

置かれた場所がガマンできなければ、ひどければ。
そこから出て行っても良い、むしろ逃げるべき場所や場合もあるのです。

置かれた場所から出る、逃げる、避ける。
壁を乗り越えるのでなく、回り道をする、時には穴を開ける。

このような判断や行動を含めて、すべてが自然体であって。
すべてを受け入れる、そのような大きな器であると考えて良いのです。

置かれた場所で咲くという心構えや行動も大事ですが、逃げるも大事。
置かれた場所で咲くから器が大きい人なのでなく、逃げられるのも器が大きい人。

まじめな2代目の方、自らを律することができる2代目の方は。
置かれた場所に、踏みとどまり過ぎない、こだわらない。

このような行動も、ぜひ大切にして下さい。

ではでは。また。


2015年5月19日火曜日

人を見る目

人、モノ、お金、情報。

よくビジネスや企業を構成する4つの要素と言われているものです。

おもしろいもので、世の中を見ると。
人、モノ、お金、情報の順番でなく、情報、お金、モノ、人の順番で。

業界や地域や国や人種などの境界線を越えて。
より広く、より遠くとやりとりができることになっています。

それは別に、今のインターネットやスマホといった技術が出来たからでなく。

まだ海外へ行ける人も数少なく、輸入品は高額な高級品で手に入りづらく。
1ドル=360円のように、お金のレートも固定化されて自由にならなかった時代。

こんな時代でも、テレビではオリンピック中継や大統領暗殺事件といった情報が。
リアルタイムや短期間のうちに、ほとんどんの家のお茶の間へ配信されていました。

一方で。人が一番初めにあるのは、モノも金も情報も。
すべて人が生み出して、人から人へ広げてきたからでしょう。

最初はモノ、原始時代には動物の骨で作った釣り針や矢と弓やオノだったかもしれませんが。
これら道具や製品を生み出して、人から人へ最初はモノとモノの交換で広げていきました。

次にお金を生み出して、人から人へモノとお金の交換を広げて。
やがて株や為替や利息など、お金がお金を生み出すしくみを作って。

人から人へお金とお金の直接交換も始まり、かわら版や新聞や本など。
情報がお金になるしくみも生み出して、ドンドンとお金と情報の交換が急拡大。

今やブログや投稿でお金を稼いだり、情報起業家やノウハウ販売で稼いだりなど。
モノとお金を交換するより、情報とお金を交換するほうがお金になる時代となりました。

これらすべてが、人が考えて作ったビジネスや経済の流れです。

このようなことから考えても、ビジネスや企業を構成する4つの要素の中で。
基礎となるのが人であり、人を見て商売する、企業は人なりという言葉があるように。

人と人とのつながりや人脈が、ビジネスや会社の基礎を作っているともいえます。

すると。2代目経営者の中に少なくないのは、人と人とのつながりや人脈を。

「アイツは、先代(親)から引き継いだ人脈で商売ができてうらやましい!」
「金持ちや富裕層と人脈があればなぁ~!もっと稼げるのになぁ~!」
「あの会社は政治家や大会社の役員とつながって、オイシイ商売をしている!」

などなど。利害関係やお金の大小とか、自分より上位の地位にいるとか。
何かしらの権力があるとか、このような視点だけでとらえている人たちです。

彼らの特徴は、自分より地位や権限がない人たちには冷たくて。
社員や自分がお客としていくお店、たとえば飲食店や小売のお店などで働く人には。

上から目線でモノを言ったり、極端な場合は何をしても許されると思ったり。
パワハラやセクハラ、男性だと女性関係のトラブルに発展するなどもあって。

ビジネスや私生活に悪影響が出た話も、しばしば耳にします。

もちろん、私たちは経営者であってビジネスパーソンですから。
ボランティアで、人と人とのつながりや人脈を大切にしろ!とは言いません。

ただ、人と人とのつながりや人脈をつくり広げる「人を見る目」として。
利害や地位や権力ではなく、自分ができないこと、知らないこと、苦手なことを。

できる人、知っている人、得意とする人、という視点をもつことで。
本当の意味で大切な人と人とのつながりや人脈ができると思うのです。

この考えでいけば、たとえば社員は「自分一人ではできないこと」をカバーしている人。
先代からの古参幹部も「自分の苦手なこと」や「気づかない点」を教えてくれる人。

サービス業や小売業の店員さんも、自分にはできない「笑顔で接客」に取り組んでいる人。
飲み屋さんで働く女性も、自分にはできない「酔っ払ったオッサンの相手」をしてくれる人など。

このように見ることができるのではないでしょうか。

その結果として、利害やお金に関係なく「真に大切な情報」を手に入れたり。
自分自身の発想や価値観が広がったり、精神的な成長もできたりするとも思うのです。

だからといって。当然ですが、誰とでもつながりを広げればいいものじゃありません。
また自分は利害やお金に関係がないと考えても、相手は利害やお金の場合もあります。

これらの点を含めて、経営者やリーダーという立場の人は。
多面的に「人を見る目」を養うこと、そして「人を見抜く力」をつけることが重要ですが。

特に2代目経営者が、先代から引き継いだ会社の経営に行き詰まる最大の原因は。
会社の内外での人の問題であって、この「人を見る目」がなかったことが多いと思われます。

お互い、ぜひ気をつけたいですね。

ではでは。また。

2015年5月13日水曜日

企業、変わるためには

前回お話したように日本全体で、根本的に。
これまでの護送船団方式からの脱皮が迫られています。

その流れの中で、地方経済は衰退。
そのため、地方を拠点とする中小企業は大きな変革をしなければ。

変わらなければ生き残れない、きびしい経営環境に突入します。

すると。

「そんなこと言っても昔から、変わらないと生き残れない!と言われて変わって来たよ!」

「そうそう!バブルの崩壊も、失われた20年も乗り越えて来たから!どうにかなるわ!」

「ウチはお客さんの言葉によく耳を傾けて、ドンドン商品構成を変えているから大丈夫!」

などなど。このような声も聞こえてきそうですが、これまでと今後の経営環境がちがう点を。
商品やサービスの改革や開発、またマーケティング(集客)の視点から説明したいと思います。

戦後の焼け野原、1945年から1960年代末にかけて。
モノを作れば、商品を製造すれば売れる時代がありました。

この頃はモノ不足であり、消費意欲も高く、いわゆるプロダクトアウトといわれて。
良いものを作れば売れる!という、企業が主体で発想する商品開発の時代でした。

やがて1970年代から、モノが満ち足りて、やがてモノがあふれる時代となって。
1990年前後、あのバブルの崩壊により、良いものを作れば売れる時代も吹き飛びます。

そして失われた20年とか25年とか言われる、1990年前後から近年まで。
デフレ不況と言われましたが、一方でお客さんや市場の要望から商品をつくる時代へ。

マーケットイン、お客さんや市場を主体に発想した商品なら売れるようになりました。

実は。ご存じの方もおられるでしょうが、マーケティングや市場の分析や予測とか。
企業の盛衰期の研究や予測に用いられる「成長曲線の法則」というものがあります。

それは初期の黎明(れいめい)期、中期の成長期、後期の低迷(成熟)期が。
ほぼ同じ間隔、年月によって変化していくという考え方です。

この観点からすれば、黎明期から成長期に至るまで。
戦後1945年から1960年代末、約20数年がかかって。

次に成長期から低迷(成熟)期に至るまで。
1970年から1990年前後、同じく約20数年がかかっていることがわかります。

そして1990年前後から約20数年後。

そう。この法則から考えれば、2015年前後までが低迷(成熟)期にあたって。
いよいよ今、次の黎明期、新しい時代が幕開けする時が来ていると予測できるのです。

では企業が主導する商品開発から、市場が主導する商品開発の時代を経て。
次は、どのような商品開発やマーケティングの流れになると考えられるのでしょうか。

一言でいえば、企業主導と市場主導のハイブリッド。
プロダクトアウトとマーケットインの融合になると思われます。

別の言い方をすれば、先日もこの場でお伝えした話。
市場から商品をつくるのでなく、商品が市場を生み出す時代。

言いかえれば、企業主導のプロダクトアウトで生まれた商品やサービスが。
新たな市場主導のマーケットインを生み出すという時代となるのです。

というのも。黎明期は、一部の新しいものや珍しいもの好きや好奇心旺盛な人たち。
マーケティング用語でいうイノベーター(革新者)が、市場をリードする時代だからです。

企業も革新の時代であり、戦後の黎明期には数多くの日本を代表する会社が。
革新的な経営者のもと、次々と生まれていったのは、今さら説明する必要もないでしょう。

たった一人のイノベーターが、スマホやインターネットで発信することで。
社会に大きな流れを生む時代、いいね!が集まって一気に行列ができる店となる時代。

戦後の時なら空想の産物、おとぎ話やSF小説の世界が現実となって。
コンピュータというものが生まれて、会社はおろか、家庭でも、一人に一台となって。

今やスマホやタブレットなど、時間と場所を選ぶ必要もなく。
モノすごいスピードと範囲で、イノベーターが生まれ育つ環境があります。

ではこのような時代、後にネオ・黎明期と呼ばれるであろう今後の約20数年間の日本で。
国内市場を主体とする私たち中小企業経営者、特に地方に拠点を置く若い2代目経営者は。

ネオ・黎明期を乗り越えるために、どのようにして新しい発想やアイデアに基づいて。
先代から引き継いだ商品やサービスを変えていけばよいのでしょうか。

もちろん、地域性や業界の特性、また自社のポジションや市場動向など。
100社いれば、100通りの経営環境がありますので、一概には言えませんが。

大原則ともいえる、新しい発想やアイデアのためのヒントがあります。

それは、ズバリ!

2つ以上の異なったものを組み合わせる!

という考え方です。

アメリカでは「アイデアを出そうよ!」と言うと。
相手から「お前の言うアイデアって何?」と返されるといいます。

そこでアイデアの定義として「2つ以上の異なったものを組み合わせる」と。
このような説明がされて、はじめて議論が始まるのだそうです。

なるほど。

たとえば、携帯電話にカメラといった異なった機能とか。
ガソリンエンジンに電気といった異なったシステムとか。
平安時代の町屋を改装したレストランといった異なった時代とか。

商品が市場を生み出した事例は、異なった2つ以上のものを組み合わせています。

また別の角度から考えれば、業界や自分が「あり得んでしょう!」という組み合わせ。
たとえば、高級食材による一流のシェフの料理が格安で食べられる「俺のイタリアン」とか。

このような異なった発想の組み合わせ、異業種のしくみとの組み合わせもあります。

まさにイノベーター、革新的アイデアやしくみが新たな市場を生んだわけです。

あなたが持つ、今の商品、サービスをこのような切り口で様々なものとくっつけてみる。

連休で十分に休養をとり、まだスッキリしている頭でも。
連休ボケでボーっとした頭も、もう直った頃でしょうから。

今週末あたり、じっくり腰をすえてアイデアを考えるのもイイかもしれませんね。

ではでは。また。

2015年5月8日金曜日

日本、護送船団方式からの脱皮へ

新聞やテレビのニュースで、商工会議所や同業者の集まりで。
はたまた先月、全国各地で行なわれていた地方選挙で。

さらに、社内でも。
場合によれば、ご家庭でも(笑)。

「今の年金制度は、構造から変えなければ維持できません!」

「この町を衰退させないためにも、商売のしくみを変えましょう!」

「XXノミクス効果で、私たちの地域もこれからドンドン変わります!」

「おい、あの商品のレイアウトは変えた方が効果的じゃないか?」

「結婚したトタンに男は変わるっていうけど、ウチはホントにそうよ!」

などなど。

必ずどこかで、また毎日のように。

変わる、変える、変わらなければ、変わる時、変えれば。
また改革とか変革など、変わる、という言葉をよく耳にすると思います。

昔、二十数年前ですが。
ある経済評論家の講演会で。

「変わらない、というのは、10年前、1年前、1ヶ月前、1週間前、昨日と比べて、
今日もまた、同じことを繰り返していること、同じ状況や状態にあることを意味しています」

「その点、日本では相変わらずの護送船団方式で、変わっていない業界が3つあります」

「それは金融業界、建築業界、そして政治業界です!」

という話を聞きました。

ウィキペデイアによれば、護送船団方式とは。

『船団の中で最も速度の遅い船に速度を合わせて、
全体が統制を確保しつつ進んでいくことになぞらえて、
日本の特定の業界において経営体力・競争力に最も欠ける事業者(企業)が、
落伍することなく存続していけるよう、
行政官庁がその許認可権限などを駆使して業界全体をコントロールしていくこと』

となっていますが、現状を見ますと。

もともと金融業界は、護送船団方式の語源となっていたような業界ですが。
平成に入ってから「金融ビッグバン」という大改革を受けて、かなり変わって来ています。

また建築業界は「某政権時のおバカな担当大臣」の政策や20年来の建設不況で。
業界を取り巻く環境が大きく変わり、地方を中心にかなりの数の業者が淘汰されてきました。

そして、最後に政治業界ですが・・・。

先の地方選挙では、数多くの選挙区で候補者がいないほど衰退してきた一方で。
中央の政治業界は10年前どころか戦後70年の間、相変わらずのままのように見えます。

そして今、日本は変わらないと経済が崩壊する、変わらなければいけないと言われて。
社会構造や税制や財政の改革、経済構造や規制緩和などの変革が叫ばれていますが。

まさに本腰を入れて、日本全体が護送船団方式から脱皮を目指す時代になったと思います。

政治的には「速度の遅い船」つまり地方都市、特に田舎の切捨てや自立促進になります。

今の政権は、そのために地方活性化政策を打ち出している!と叫んでいますが。
過去の事例、市町村合併の政策を見れば、最後は切り捨てるし切り捨てざる得ないでしょう。

なぜなら。地方にバラまく財政的な余裕が、国にドンドンなくなっているからで。
それと同じ理由で、年金制度や社会保障制度も切り捨てに走り始めているわけです。

すると。国内全体の市場規模が縮小する中、若年者の人口流失が止まらない市町村は。
年金生活もままならないお年寄りの増加もあって、市場が目に見えて縮減、衰退していきます。

その結果、国内市場を相手とする多くの中小企業、特に地方を拠点とする中小企業は。
より一層の本格的な淘汰の時代、生き残りをかけた企業間の競争に突入していくでしょう。

もし今は大丈夫だと感じても、同じ県内や隣接県のより小さな町村を見ればわかります。

よくよく見ると、以前から小規模な町村では。
役場と農業や林業、そして建設業くらいしか若い人の勤め口がありませんでした。

農業と林業、そして建設業は、その就労スタイルから若者に敬遠されて来ましたが。
最後の役場も淘汰や統合となり、田舎には若い人の就職先はほぼゼロになります。

やがて、その流れは県内でも比較的大きな市まで広がって。

多くの中小企業は、地方に留まっていては、今のままでは、変わらなければ。
衰退や廃業、場合によれば倒産の憂き目となる可能性が高まります。

たしかに、いつの時代も。

私たち中小企業の2代目経営者にとっては。
今も昔も変化への対応こそが、企業存続の大命題でしたが。

過去にない大変革の時代、まったく新しい発想、新しいアイデアに基づく改革が求められます。

では、新しい発想やアイデアを出すには?どうしたらいいのでしょうか。

次回、そのヒントをお伝えしたいと思います。

ではでは。また。

2015年4月28日火曜日

富山の薬売りにみる商売や生き方

2代目、3代目、4代目と代を重ねて。
老舗といわれる商家を築く商人の一例として。

「富山の薬売り」があります。

その富山商人に「七楽の教え」というものがあるそうです。

それは。

「楽すれば、楽が邪魔して楽ならず、楽せぬ楽が、はるか楽楽」

という言葉で。

楽しようと思って楽すると、結果として楽は出来ないもの。
反対に楽しようとせず、楽しんで努力して物事に臨むことが。

はるかに楽で、そちらの方がすばらしい人生になる、という意味だそうです。

このような考え方があって「置き薬」が全国に広まって。
320年間にわたり、今も続いているそうなのです。

私たちは、2代目や3代目、またさらに代を重ねたい者として。
商売を続けること、老舗と呼ばれる商家にしていくことが。

イの一番に考えることであり、一番の目標となることだと思います。

ある経営コンサルタントの方の言葉を借りれば。
続かない商売は成功ではない、と言っても過言ではないとも感じます。

では。商売を続けるために大事なこと、とは。
別の言い方をすれば、安定した生活を維持するコツでもありますが。

それを一言で言うならば、借金せずに収入以上に支出しないこと。
いわゆる「手仕舞い」できる範囲で、商売や生活をすること。

投資をするなら、資産を生むものにするのであって。
投資と言いながら、負債を生むようなものにしないこと。

という点につきると思います。

その一方で、2代目や3代目経営者の中には。

「でもさぁ~新商品や新事業って魅力的で、手を出して儲けている人を知ってるよ!」
「株だって儲けている人が大勢いるんだから、オレだって儲けられると思うよ!」
「レバレッジを効かせた方が、商売はグ~ンと伸びるでしょう?投資しなくっちゃ!」

という考え方で、生活や商売をしている人も少なくありません。

もちろん、中には新商品や新事業で成功したり。
株で儲けたり、借金して事業投資して会社を大きくしたり。

このような2代目や3代目経営者もいますが。

新商品や新事業でつまづいたり、本業に毀損が生じたり。
株など金融商品で失敗したり、借金が膨らんで回収できなかったり。

どちらかというと、このような人の方が多い気がします。

特に何より典型的なのが、いわゆる目先の利益や快感に誘われて。
本業外へ投資を拡大したり、遊びや趣味に走ったりする2代目や3代目。

よく世間から2代目や3代目を評してささやかれる言葉。
ボンボンとか、放蕩息子と言われる跡継ぎの男性なのですが。

彼らの特徴には、思いつきやその場の感覚で投資や趣味に支出しても。
この投資は儲かるから、これは必要であって付き合いがあるからなど。

何かと理屈をつけて正当化しながら、目移りしやすい。
すぐに別のもの、もっとイイものがほしくなってしまって。

結果として、次々と支出を増やして商売を傾けてしまうとか。
周囲の人間関係を壊す、女性とのトラブルを起こすという点があります。

同時に、支出を抑えるあまりに。
俗に言う「安物買いのゼニ失い」の2代目や3代目もおります。

安い物を買ったり、少ないお金を投資したりして。
それで性能や効果に満足したり、十分な収益があったり。

支出が少なくて済むなら、その方が良いでしょうが。

得てして、安い物は性能や効果や耐久性が低くて。
修理や余分な手間に、かえってお金や時間がかかるもの。

少ない投資や安い金融商品は、収益も少なくて。
赤字が続く、不良資産となり損益が出ることもよくあります。

こちらもまた、短期間で終わるのでなく。
永く大切に使える品物、継続的に収益や資産となることが大切。

その点、最初にお話した「七楽の教え」は。
買い物で商品を選ぶ基準や投資の考え方にも使えそうです。

そう、考えてみれば。

人間関係も、商売や買い物や投資と同じく。
安いもので終わらせないためには、安物買いせずに。

「七楽の教え」をもとに、楽や見返りを考えずに投資する。

特に大切にしたい人、信用した人たち。
お客さん、取引先、友人、仲間、家族、恋人など。

このような人たちには、つくせるだけつくしてみる。

こうして。

楽を求めないで、出来る限りお金をかけ質の高い物を買って。
楽を求めないで、出来るだけつくして質の高い人間関係を築いて。
楽を求めないで、出来るだけの支出や投資をして商売を行なって。

これが買い物でも、人間関係でも、商売でも。
永く付き合える、永く続くすばらしいものとなり得るコツだと思いました。

まさに、富山商人には。

「商品を見るな、目の前の人を見ろ」

という言葉もあるそうです。

商売を考えると、ついつい商品を売り込むばかりなって。
目の前の人、つまりお客さんを見なくなってしまう。

結果、お客さんは離れて行き、商売は続かなくなるでしょう。

人間関係や買い物に出る、その人の性格やクセや価値観は。
やはり商売にも、人生にも色濃く出るものです。

「楽すれば、楽が邪魔して楽ならず、楽せぬ楽が、はるか楽楽」

自分の商売や人生における収入にも、支出にも。
楽しようとせずに、楽しんで努力をすることで、はるかに楽になる。

この「七楽」の考え方は、いろいろな場面で大切だと思いました。

ではでは。また。

2015年4月22日水曜日

夢や理想の人物や会社を追いかけるな!

もし、あなたに。

「あなたの夢や理想、目標や希望は何ですか?」と質問をしたら。
私を含めて、多くの人が「こうしたい」「こうなりたい」「こうありたい」など。

したいこと、手にいれたいこと、なりたいものを語るでしょうし。
もし、あなたが2代目経営者や社内でリーダーの立場の方なら、たとえば。

こんな会社にしたい!お客様に気に入られたい!売上げを増やしたい!とか。
収入を増やしたい!成功してほめられたい!社員を幸せにしたい!とか。

このような答も出てくると思います。

一方で、ご存じのように。

現実には、夢をかなえよう、理想を手にしよう、目標を達成しようとしても。

ノウハウを追いかけ回したり、夢や理想ばかり見てまわりを見なかったり。
その結果、まわりの人を不幸にしたり、会社をヅフしたり、心や体をこわしたり。

このように、うまくいかない人、途中で挫折する人、逆に現状を悪化させる人。
成功しない会社、かえって損害を出してしまう会社が少なくない気がします。

そう。根本的に、夢や理想や目標や希望は。
努力してかなえるものでなく、かなえられるものであると考えて。

たとえば、理想の人、あこがれの人、成功者とよばれる人を追いかけるのでなく。
成功している会社、目標を達成している会社のノウハウやしくみをマネるのでなく。

まず、自分の出来ること、今の会社で出来ることを積み重ねることで。
一つ一つの小さな夢や理想や目標をクリアしながら、一段ずつ上がることで。

その結果として、夢や理想や目標や希望がかなえられた!と。
このように考えて行動していく方が良いように思います。

スポーツでも、プロとして活躍している人は。
やたらに夢や理想や目標を追い求めていません。

たとえば、テニスの錦織選手とか、ゴルフの松山選手とか。
今の活躍のカゲで、地道な体づくりや基本練習を重ねています。

トレーニングや練習もせずに、いきなりコートやコースとか。
ボクシングのリングや野球のグランドに立つようなプロは。

一人としていない、こう言っても良いのではないでしょうか。

プロとは、職業という意味でもありますが。
その道の名人や達人、特別な専門家という意味もあります。

その点、私たちはプロとして仕事や会社経営をしています。
自分の人生をマネージメントする専門家として、世界でただ一人の存在です。

そして、その道や仕事や経営の名人や達人になりたい。
人生の名人や達人と呼ばれたい、それがビジネスや人生において。

一つの大きな夢や理想や目標であると思います。

このよう考えれば、何より夢や理想や目標を達成するための近道も。
決まりきったノウハウも、誰でもできる方法もない、という話が。

単なる理想論や成功できない人の言い訳ではないと感じられるでしょう。

その上で。ただ一つの道があるとするなら、地道な行動を積み重ねること。
そのための一里塚、身近な夢や目標や理想を達成していくことであって。

だから、自分が夢や理想や目標とする人や会社でなく。

一里塚を一つ一つ通っていくために、導いてくれる人。
一里塚となるような会社、少し前を行くような会社。

自分の背中を押して、時にはきびしくお尻を叩いてくれる人。
ライバルとして認め、戦いながらも尊敬ができる会社。

このような人や会社を定めて、自分や会社の成長に合わせて。
次々と変えていくこと、夢や理想や目標を変えていくこと。

この考え方が、何より大事な気がします。

ではでは。また。

2015年4月14日火曜日

レスポンスの魔術師!

勝手な想像かもしれませんが。

自分が仕事をしている業界に関連したメルマガ。
たとえば新商品の紹介、新市場や新技術の情報などが出でいるものですが。

一つも登録していない方は、おそらくゼロではないでしょうか?

昨日の朝、そのようなメルマガの一つ。
ウチにとっては、バリバリの業界誌の電子版を受け取りました。

ご存じ、N経系が発行している雑誌の簡易版みたいなヤツですが。
興味を引く新商品の記事があって、資料をダウンロードできるとのこと。

そこで、早速にログインして。
次に「資料ダウンロード」をポチッ!と押すと、ページが変わります。

ふむふむ。冒頭に「個人情報の取扱い」の文面がドーン!とあります。

いつもは、いちいち「個人情報」の文面は読まないのですが。
冒頭にあったので、何気に目が勝手に追っていました。

ナニナニ・・・会社名?住所?電話?役職?もろもろ・・・へ?まさかね。

ネット上で、資料(無料)をダウンロードするのに。
今どき、コマゴマとした個人情報なんて収集するはずがない!と思って。

名前とメアドと職業だけ、登録(無料)してある身としては。
そのまま資料はダウンロードできるのだろう、と考えて。

いくつかのアンケートに答えながら、ページの最後まで進んで。
これでOK!と「資料ダウンロード」を再びポチッ!と押すと。

真っ赤な文字で「必須項目!」「必須項目!」「必須項目!」の嵐!

・・・この段階で、資料(無料)ダウンロードは止めました。

めんどくさいから?そうです!イエス!
個人情報の登録に抵抗があったから?そうです!イエス!

そして、何よりも。

コイツら(資料を配りたい会社、媒体を提供したN経系の会社)が。

アホ!だと思ったから、相手にしたくなかったのです。
そして「自分は招かれざる人物」の可能性があると判断したからです。

ネット上で無料の資料を配布する、サンプルを配布する。
無料の試供品を配布する、無料のモニターを募集する。

今回だけでなく、ネット上には何十、いや何百、何千とあります。

その多くというか100%、その目的は見込み客の情報を集めたい。
自社が提供する商品やサービスに関心がある人を集めたい。

もっと言ってしまえば、そのような方たちをリスト化して。
定期的に、またはタイミングを考えてセールスをかけたいために。

無料で、さまざまなものを配布するわけです。

その一方で、これはネットやメルマガだけでなく。
パソコンやスマホを使ったしくみだけでなく。

あたり前すぎて、今回のケースのような大手会社の媒体の担当者なら。
必ず知っていると思う、マーケティング(集客)の基本中の基本があります。

それは。

見込み客を集めて、彼らにセールして「お金を払ってくれるお客様」とするには。
いくつかのステップ、情報に触れた人が起こす行動の「階段」があって。

そのステップが高すぎると、階段を上ってこないので。
上りやすいように、工夫するといった思想が必要不可欠です。

無料もその一つ、気楽に上れるようにステップの高さを低くしているわけです。

ところが今回、最初の登録段階で。
いきなりコマゴマと登録させたのですから、ステップが高い!わけです。

そう、大事なポイントですが。
今回、私は「あきらめた」のでなく「止めた」のです。

別に今、こんな高いステップをよじ登る必要はありません。

あとで、たとえば紹介していた新商品のジャンルを扱っている問屋さんに話して。
カタログでも、なんでも取り寄せればいいのですから、特に困りません。

ハッキリ言って、この程度のオファー(資料の無料提供という特典)で。
簡単に個人情報、というかオレの情報が取れるんと思うてんのんか!アホ!という気持ち。

ただ。冷静に考えれば、最初からステップを高くして。
アホな、いや失礼しました!ホットで今すぐ買いたい!という取り組みやすい客を。

少数でよいので、集めたかったのかもしれません。

それなら、完全に私は「招かれざる客」です。

そうなれば、私が「止めた」のでなく。
彼らが私を「切り捨てた」ので、マーケティングとしては拍手もの!です。

まぁ、そこまで考えているとは思えへんけど・・・スンマセン!独り言です。
というのも、紹介されていた商品の属性や特性からして思うことですが・・・。

で。最近、ネット広告&通販で3年連続の日本一。
なんと「レスポンスの魔術師」という方が書いた本を読みました。



内容は、とやかく説明しません。

とにかく、ネットでのマーケティングや販売を考えている人は。
読んでおいて損はない、というか書籍代以上のリターンが確実でしょう。

一つだけ、おもしろいエピソードを。

先ほども話しました、無料での提供で。

①無料サンプル

②無料試供品

③無料モニター

この3つで、一番に良いレスポンスはどれだと思いますか?

答は、この本に出ています。

ではでは。また。

2015年4月9日木曜日

市場が商品でなく商品が市場をつくる時代に

さてさて。

40歳を過ぎたらお金をかけるのは。

(1)自分への投資
(2)思い出に投資

の二つである。

という言葉に出会いました。

あなたは、この言葉をどう思われますか?

たぶん、この「自分への投資」の中では。
多くの人にとって「心と体の健康」が、まず大きい気がします。

また。経験値、心、体のバランスが取れ、前向きでありながら。
同時に、守らなければいけない、助けないといけない、と思いがちな40歳代。

仕事でも、人生でも。

知識や能力が高くなり、いろいろなことも出来るようになりながら。
周囲から頼りにされて、責任の範囲も広がり、出来るのに手が出せない。

攻めたい、チャレンジしたい、冒険がしたいという気持ちや考えと。
守りたい、確実に増やしたい、着実に歩きたいという気持ちや考えのハザマで。

行動が、思うように進まないことがあるようにも思えます。

40歳を過ぎたら。

・自分の考えと違う人の発想を楽しむ余裕をもとう
・完璧を求めず失敗を楽しむゆとりを
・世間の体裁を気にして行動しないのはもったいない
・すべての人に好かれようとは思わない
・お金は人生を楽しむための手段

というように、冒頭の言葉には続きがあったのですが。

たとえば、趣味やオタクという分野は。
まさに、上記の5つに当てはまる世界ではないでしょうか。

考えてみれば、最近の成長しているビジネスのキーワードに。

自分投資の市場や商品
思い出づくりの市場や商品

があります。

今や、どの業種でも。

市場や顧客のニーズにあわせて商品をつくるのでなく。
商品が市場をつくる、顧客のウォンツを新たに喚起する商品をつくる。

こんな時代になり、特に価格競争は避けたい中小企業の経営者には。
このような発想と行動が、かなり強く求められるようになったと思います。

ということで、趣味やオタク、つまりコアなジャンルで。
自分投資となる、思い出となる商品やサービス。

このフィルターに、現行の商品やサービスをスクリーングして。
または現行の商品やサービスに付加したり、組合せしたりして。

どんな商品やサービスが生まれるのか?

新しいビジネスの予感が頭をよぎりませんか?


ではでは。また。

2015年3月31日火曜日

選べない、選ぶものがない時に

昨日、旧知の2代目経営者の仲間と食事した時のことです。

今、行なわれている地方選挙のこと。
ビジネスの現状や将来のことなど。

取りとめもなく、話をしていたわけですが。

ふと、話題に上ったのが。

人は。

生まれた場所や時間は、自由に選べない。
死ぬ場所や時間も、自由に選べない。

ただ人は。

生まれて死ぬまでの間に。
ものすごく多くのことを選んでいる。

たとえば、起きて会社に行こうか?休もうか?
何を着ていくか?ゴハンは何を食べるか?

仕事は何を先にするのか?どの方法でするのか?
どの程度まで仕上げるのか?何時までにするのか?

などなど。

1日に何十、何百もの選択をしている・・・という話から。

一方で、よく会社経営やビジネスの選択の場面で。

自由に選べない、一つしかない、とか。
また何を選べばよいかわからない、とか。

普段の生活では、数多くの選択肢から。
数え切れないほどの選択を経験しているのに。

選択肢が一つしかないと思ってしまう。
選べないと思ってしまう、選ぶものがないと思ってしまう。

これって、どうしてかな?という話題になりました。

すると、旧知の仲間は。

「そりゃ~今日は何を食べようかな?ってレベルと。
ここで選択をミスったら、会社が傾くとか、ビジネスが失敗するとか。
こんなレベルの選択とは、重さも緊張感も違うからさ、あたり前じゃん。」

と答えたので。

たしかに、選択の結果が生む重さが違ったり。
そのための緊張感が違ったり、これはあるとは思いますが。

たとえば普段のお昼ゴハン、多くの品が載っているメニューがあったり。
お店も定食屋さんやラーメン屋さんや蕎麦屋さんなど数多くあったり。

本当は多くの選択肢があるのに、おもしろいもので。
なぜか?いつもの店でいつものメニュー!ってことが多くないか?

ところが、たとえば「今日こそは!」と思う商談やデートの食事なら。
いろいろ考えたり、時にはネットで調べたり、数多くの選択肢を集めて。

お店からメニュー、または品を出すタイミングなど考えるわけで。
重さや緊張感がある場面の方が、選択肢を増やして決めないか?

つまり、選択する緊張感や結果の重さでなく。

単に考えたいか?考えたくないか?めんどくさいか?手間をかけたいか?
もっと言ってしまえば、選択の結果から逃げたいのか?責任を取るのか?

いわゆる、思考停止に自分を追い込んでいるとか。
あとは好きか?キライか?など、感情的なものじゃないか?と話しました。

思うに。

たとえば目標や理想や夢といったものでも、何か一つに絞って。
それが100%手に入ること、これしか選択はない!と思い込んで。

その結果、逆に行き詰って目標や理想や夢を手に出来ない。
途中で、もっと適正な目標やより良い理想や夢があるのに目に入らない。

このようなことも、一種の思考停止、思い込みや先入観念とか。
意地や見栄、恥ずかしさなどの感情的なブレーキが原因ではないでしょうか。

考えてみれば。

何を選べばよいかわからない、選びたいものがないというのは。
典型的な思考停止であり、感情的なブレーキが働いている状態ですね。

目標も、理想も、夢も、たくさんあるうちの一つだけ手に入ればよい。
100%や100点満点でないけれど、70%とか65点なら、と考えてみる。

目標や理想や夢、そのための行動が決められない、始められない時。

実は多くの選択肢、方法や考え方、捉えたがあることに。
普段の生活で、私たちは誰でも多くの選択を経験していることに。

思い返せば、そうなんだよな~と思うことが。

意外と大切かもしれませんね。

ではでは。また。

2015年3月18日水曜日

忘れた頃にやってくるもの

ご存じのように今月11日は、あの東日本大震災から4年目の日でした。

テレビでは特番、新聞や雑誌では特集を組んで。
4年たった今も、被災者の方や被災地の復興が。

まだまだ道半ばであり、厳しい現状であることを報道していました。

その中でも、ダイヤモンド社のビジネス情報サイトにあった記事ですが。
個人的にはどんな報道より、胸にググッ!と来るものがありました。

妻を探して海に潜り続ける男の「秘めた慟哭」

・・・タイトルのように、震災の津波で行方不明になった奥さんを探して。
今もなお、海に潜り続けている男性の話なのですが。

もうお一人、この方と一緒に娘さんを探し続けている方もいまして。
悲しみの深さ、そしてそこから立ち上がろうとしているお二人の姿に。

思わず、涙腺がゆるむ記事です。

今年は、特にこの大震災の「風化」を危ぶむ声や報道が多いと思うのですが。
東日本大震災と共に、思い出して頂きたいのは。

今年が、阪神・淡路大震災から20年の節目であるということです。

その当時、ある2代目経営者が中心の青年団体に所属していて。
その週末に予定されていた京都での大きな会議のために。

1995年1月14日の土曜日から15日の日曜日にかけて。
神戸の2代目経営者のリーダーの方とスタッフ会議で東京にいました。

実は、今でもハッキリ覚えているのですが。
14日の夜に、東京で小さな地震があって。

「神戸は、あまり地震がないので驚いたわ~」

とその方は話されて、私も。

「いや~ウチの田舎も地震があんまりないんですよね~」

と応えたのを今でも覚えています。

その2日後、1995年1月17日の早朝。
神戸は大震災に襲われ、多くの方が命を落としました。

あれから昨日で、20年と2ヶ月。
東日本大震災からは、4年と2ヶ月と6日。

災害は忘れた頃にやってくる、と言われていますが。
1月17日や3月11日の前後に騒ぎ立てたマスコミも。

2ヶ月、1週間と経てば。
かなり静かになっていると思います。

もちろん、この2つの大震災や他の災害と比べれば。
私たち2代目経営者が日常で経験する、ビジネス上の失敗など。

取るに足らないかもしれませんが、事の大小に関わらず。
忘れた頃にやつてくる、という関係性だけは同じだと感じています。

あなたは2代目という立場として、経営者として。
今まで一番大きな失敗は、何になるでしょうか。

今は景気が良いとしても、また悪いとしても。
いついかなる時も、失敗の教訓は忘れずに活かしたいもの。

ふと我に返った時、日常の生活に追われている時に。
失敗こそが、自分の商売や経営の原点だと気づくように思えます。

ではでは。また。

2015年3月6日金曜日

創業者vs2代目経営者?それとも親子ゲンカ?

今、日本では。史上最高益の達成、賃金アップなど。
景気が良くなった、良くなりそうだとの機運があります。

ただし、ご存じのように。
それは大企業の話です。

一方で。

昨年(2014年)1年間の倒産件数は、9,180件。
それに対して休廃業や解散件数は、24,106件。

同じく倒産件数が、対前年(2013年)比で約11%の減少に対して。
休廃業や解散件数は、約5%の減少に止まっている。

※帝国データ調べ※

つまり減少率で2倍、件数で2.6倍もの企業が倒産ではなく。
2代目以降の事業継承者がおらず、自主的に消えているのですが。

これが、数多くの中小企業の実態ではないでしょうか?

その点から考えれば、創業者と事業継承者の2代目経営者が。
経営路線や時代感覚、会社の将来像などの相違から。

会社の内外の人を巻き込んで、喧々諤々(けんけんがくがく)となっているのは。

ある意味では贅沢な話、というか。

後継者がいない、継がせたくても会社や市場に将来性がないなど。
こんな事情を抱える中小企業の経営者から、見ればうらやましい。

そうです。

最近、大塚家具の創業者vs2代目経営者の衝突が話題になって。
普段は経済問題と縁が遠い、昼のワイドショーまで取り上げています。

どうやら。

1.創業者で父親の会長さんの経営路線
2.2代目経営者で娘さんである社長さんの経営路線

この2つが真っ向から対立している模様で。
その結果、他の経営者一族などの株主を巻き込んで。

3月26日の株主総会を目指して。
プロキシー・ファイト(Proxy Fight:委任状争奪戦)になっている。

社長さん側は「なりふり構わぬ増配の賭け」に出たとの報道もありました。

※3月2日付 日本経済新聞※

正直なところ、この手の2代目と創業者のぶつかり合いはよくあること。
というか普通の2代目なら、誰でも大なり小なり必ず経験するものです。

もし創業者とぶつかることなく、ハイ!わかりました!と。
創業者の意向や指示のまま、経営している2代目がいるとしたら。

その2代目は、果たして本当の経営者といえるでしょうか?

その点、社長さんをやっているこの娘さんは。
自分の路線や価値観、時代感覚を持っておられるようでして。

本当の2代目らしい経営者、このような一面があるようです。

しかし。話が大きくなって、骨肉の争いと揶揄され、ドンドンと世間に広がって。
株主を巻き込んで、口や顔には出さないけれど多くの社員さんにも迷惑かけて。

いわゆる「お家騒動」になっている点は、ケンカ両成敗というか。
この社長さんである娘さんにしても、父親の会長さんにしても。

もう少し、上手に進めることはできなかったのか?と思います。

これも地方都市で中小企業を経営している創業者や2代目なら。
世間体や風評が気になるものでして、まず騒ぎが大きくならないように。

「みっともない」ことは出来ない、世間にさらせない、と思いとどまって。
親子が社内でバトルをしても、外ではちょっと・・・ということが多い。

これまた、上場している大企業ならではのことなのでしょう。

もっとも思い出すのは、このような「みっともない話」を口止めするために。
社員さんが出社しない前の早朝、わざわざ息子の2代目仲間を呼び出して。

クギをさした親バカと比べれば、表立ってケンカする方が立派かもしれません。

まぁこのケースは、この父親の責任が大きい、というか。
自分でそんな教育をしておいて、今さら・・・という話だと思うのですが。

その点、息子さんの方がかわいそうにも感じてしまいます。

考えてみれば、週刊誌やワイドショーで面白おかしく、騒がれるのも。
大塚家具のケースを含めて、創業者vs2代目経営者の対立でなく。

この手の「お家騒動」は、家族や身内同士の争いが多くて。
しかも今回は「規模の大きな親子ゲンカ」になっているからでしょう。

夫婦ゲンカは犬も食わない、と言われて。
いつしか仲良くなることもあるようですが。

親子ゲンカは?と考えてみると。
本来なら、やはり自然に収まることが多い気がします。

ただ、この大塚家具のケース。
その行く末は、どうなるのか?と無責任に想像すると。

父親と娘、という男女の感性の違いも恐らく絡まって。
白黒がハッキリつくまで、どちらかがダウンするまで。

株主という第三者の関与もあるわけですから。
一方のKO負け、このような決着でしかつかないでしょう。

これを資本主義、欧米主義的な当然のことと思うか。
それとも、親子なんだから、と和の国の伝統的な価値観で見るか。

あなたは、同じ2代目経営者の立場として。
どのように思うでしょうか?自分なら、どうするでしょうか?

よろしければ。

ご意見をお寄せ下さい。
↓↓↓
2daimeshisyou@gmail.com

ではでは。また。