私たちのような中小企業の2代目経営者だけでなく。
政治家、そして歌舞伎や華道や茶道などの伝統文化にも。
創業者や創始者、初代、また3代目以降なら先代から何かを引き継いだ人。
継承者という立場の人が、ビジネス以外の世界に数多くいらっしゃいます。
そのようなすべての2代目が、さまざまな問題や課題を解決しながら。
先代から引き継いだ会社や家元組織などを守り、繁栄し続けるために。
お手本としたい1つの道筋があります。
能の世界で、世阿弥が父である観阿弥の教えをまとめたもの。
有名な「風姿花伝」の書にある「守・破・離」という考え方です。
守、まず先達の教え守り
破、教えを自分なりに破り
離、最後は先達から離れ自分の道を行く
だいたい、このような意味だと考えて良いかと思いますが。
この「守・破・離」の前に「型」をつけて「型・守・破・離」とする話もあります。
型、基本となるもの
さらに、私の臨床心理の師匠は。
その前に「師」とつけておられました。
師、いろいろなこと(型)を示してくれる人
ということで、合わせますと「師・型・守・破・離」となります。
まさに2代目とは、先代を良き「師」として。
場合によれば「反面教師」として、跡を継ぐ立場です。
その「師」が作り上げた、今のしくみや方法など。
その良い点も、また悪い点も、基本となる「型」として。
まずはしっかりと理解して「守」しなければ。
自分なりの「破」も、その先の「離」もできないのですが。
得てして私たち2代目には、先代に批判的な視点を持つ人も多くて。
基本となる「型」を学ぼうとしない、手を抜く傾向があると思います。
そして、自分なりの「破」を押し通す。
自分では、先代から「離」したとカン違いする。
その結果として、経営や芸事などで失敗する。
だからこそ、2代目はしっかりと「型・守」をするために。
厳しいことを言う方、先代と比べて甘さを指摘する方、苦言を告げる方など。
たとえば経営者なら、先代経営者である父親とか、社内の古参幹部とか。
外部の識者や先輩の経営者など、耳に痛い話をする人を遠ざけてはいけません。
「型」の「守」なくして、社内の改革や業務のカイゼンに走れば。
それは柱の細い1階に、無理やり2階を建てるようなものです。
もし柱が細ければ、どこが弱いのか?十二分に理解した上で。
社内の資材や人材で、補強してから2階を建てるとか。
補強する資材も人材もなければ、外から調達するとか。
そうしなければ、建物ごと倒れてしまうのです。
そして2代目が、経営や芸事で成功した事例を見ていくと。
2代目自身でなく、周囲の人、他のお弟子さん、先代の幹部さんなどが。
しっかりと「型・守」している場合もあります。
ところが「型・守」によって、先代からのやり方を守っていても。
周囲の環境、時代の変化や市場の変化は必ず起きますので。
先代からの引き継いだ「型」が通用しなくなる、成果が出なくなって。
やがて環境の変化や時代の流れについていけない、取り残される事態となる。
たとえば創業者の一代だけで、2代目、3代目と続かない会社とか。
2代目以降が「守」ばかりに走り、ジリ貧となって消えていく会社とか。
これらは、典型的な「破」が進まなかった事例だと思います。
そのため、必ず2代目は「破」の段階に進む場面になるのですが。
自分や会社などを取り巻く、さまざまな環境を「水」と考えて。
今の問題や課題(砂糖や塩)を解決(ソリューション:溶解)する。
「破」は、このような発想で整理して考えると良いと思います。
すると「破」の方法、現状の問題や課題を解決する方法には。
大きく分けて、次のような3つの方法があることになります。
1.少しずつ(塩や砂糖を)小分けにして溶かす
問題や課題を少しずつ、溶かすように解決していく方法です。
問題や課題を次のようなキーワードでとらえてみます。
分解・分別・小さく・少なく・たたむ・削る・減らす・砕く・割る・折る・引く・絞る、など
2.溶かす媒体(水)の量を増やす
水の量を増やすように物量を増やして、解決する方法です。
今の環境(水)を次のようなジャンルと発想でとらえていきます。
時間・人・予算・アイデア・テスト、など+増す・多く・足す・転換・連合・連携・合併、など
3.溶かす媒体の熱(エネルギー)を高くする
水の温度を上げお湯にするように能力やエネルギーを高めて、解決する方法です。
今の環境(水)を次のようなジャンルと発想でとらえていきます。
効率・手法・意欲・工夫・ツール、など+変える・交代・高くする・上げる・一新する、など
実は、この3つの方法は。
会社や事業、家元組織や芸事を継承するためでなく。
プライベートにおいても、大きくいえば人生においても。
自分のカラを破り、問題や課題を克服する方法として役に立ちます。
もし今、プライベートの問題や課題があるとしたらお試し下さい。
そして、いよいよ。
「破」まで進めば、最後は「離」となるわけですが。
一言でいってしまうと「離」とは、すなわち自分が新たな「師」となること。
つまりマスター、名人と呼ばれるような存在となることと同じだと思います。
こうして、次の代の人が「師・型・守・破・離」を改めて継承していくのです。
ではでは。また。
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