商売、ビジネスというもの、商いは。
自分が飽きないでやれること。
そしてお客様から、飽きられることなく。
お客様と商いを通じて、良好な人間関係が続くこと。
この2つが、大事であって。
人や社会や地域などに、迷惑をかけたり。
ウソで強引に売りつけたり、ダマしたり。
そういうことさえしなければ、自分の発想で自由に進めて良い。
このような考え方が、商いを進める上で大切ではないでしょうか。
同時に。
商売やビジネスを始めて、お店や会社を開くとか。
または商売やビジネスを継いで、先代からお店や会社を譲り受けて。
自由な発想の中で、自分の思うような商いをしながら。
自分のお店や会社を何十年、100年と続く老舗にすることは。
自分の発想や意欲だけでは、なかなか難しいと思います。
数年前のことです。
知人のMさんが、独立してお店を始めようとした時に。
当時、というか今でも市場環境がきびしい業界でのビジネスでしたので。
多くの方から「やめた方が良い」とか「もう少し景気が良くなってから」と言われたり。
資金に余裕があるから遊び感覚で始めたとか、影のスポンサーがいるんだろうとか。
勤め先とケンカして飛び出すのか!とか、つまらんウワサを流されたりしたそうです。
そのような中、私はMさんに「やってみればどうですか?」と話していて。
先日、Mさんから「どうして、あの時に賛成してくれたのですか?」と聞かれました。
それは、Mさんには業界でのキャリアも十分にあったとか。
人柄もよくリーダーシップがあったなど、一般的な理由もありましたが。
大きな理由の一つは。
「自己資金だけでやろう、借り入れが生じるようになったら止めよう」
とMさんが考えていたからです。
商売やビジネスを始める時、またはお店や会社を継いだ時。
コレをやりたい!アレをやりたい!こうしたい!など。
何をやりたいか?何をやれるか?と誰でも考えますが。
どうなったら止めるか?と考える方は、そう多くはありません。
商売やビジネス、商いは飽きないでやれることを。
どんなやり方でも、場所でも始めることはできますが。
どんなことになったら止めるか?
これだけは歯を食いしばってもやりたくない!
このような考え方から、常に見ていないと。
手遅れになり、致命傷を負うことが多いのです。
有名な例が、超音速旅客機「コンコルド」の話です。
コンコルドは、イギリスとフランスの政府の肝いりで。
共同で開発が進んでいた「夢のジェット機」でした。
しかし、すでに開発段階から赤字になる事が判明。
ところが、それまでの投資金額が大きかったため。
開発を止めずに、完成したのはイイものの。
赤字が大幅に拡大、より巨額の損失を生む結果となったのです。
そしてもう一つ、私がMさんの考えに賛成した理由は。
Mさんが、同業ライバルと競争しよう、マネをしようとか。
ドンドンとお店の規模を大きくする、売り上げを増やすなど。
そういう考え方とは一線を画して。
自分の求めたいお店づくりを目指そうとしていたことです。
もちろん、独りよがりに。
こんな店がイイ!と考えたわけではありません。
お店づくりの根拠、裏づけとなっていたのは。
Mさんが培ってきた、長年の業界での経験による「確かな目」です。
おもしろいことに、開店から数ヶ月の間は。
毎月のように、依頼した税務事務所さんから。
「このままだと、来月あたり運営資金がつまります!」
と言われ続けたそうですが、Mさんは。
「大丈夫、今月末までは売り上げがココくらいになるから」
と答えて、実際に資金がつまることはなかったそうです。
Mさんのお店は、開店から数年が経ちましたが。
同じ地域内の同業他社が苦戦する中で。
順調にお客様を増やし、多くのリピーターを確保しております。
思うに。このような商売やビジネスを見る「確かな目」は。
やはり本や講習では、決して身につかないでしょう。
行動を起こし、自分でやってみて始めて身につくものだと思います。
しかも、大小のさまざまな失敗や問題を乗り越えて。
始めて身につくもの、それが「確かな目」なのではないでしょうか。
残念ながら、ビジネスの神様、商売の天才と言われるような人にも。
お店や会社を始めると、想像もできないような失敗や問題が必ず起きます。
大事な点なので繰り返しますが、か・な・ら・ず!起こるのです。
もっと大きな視点で見れば人生において、人は何かのことで。
行動を起こせば、必ず大小の失敗や問題が起こる。
自分でやってみると、必ず大小の失敗や問題に遭遇する。
それは、じっと動かずにお風呂に入っていて。
動き始めると大小の波が必ずたつのと同じことです。
その人の能力や環境、年令や経験に関係なく。
自然なこと、起こるのが当たり前のことと考えられるのです。
その上で。
もし商売やビジネスで、何かの失敗や問題が起きた時に。
失敗や問題を解決しよう!という意欲や行動と同じか。
それ以上に大事なのが、止める!という選択ができること。
または。コレをしよう!アレに手を出そう!とするよりも。
コレだけはしない!アレには手を出さない!と決めていること。
これこそ、何十年と続く老舗と言われるお店とか。
2代目、3代目と代々と続く会社に共通する大きな特徴だと思います。
そう。ビジネスや商売を続けるために必要な「確かな目」とは。
商いを始める、手を広げるという将来を見据える「確かな目」と共に。
商いを止める、手を出さないという現実を見据える「確かな目」も。
同じか、それ以上に大切な視点だと考えた方が良いと思います。
しかし一方で、お店や会社を起こしたばかりの創業者や起業家とか。
お店や会社を継いだ2代目や3代目など、経験が浅い経営者にとって。
止める!手を引く!手を出さない!という視点は。
先ほどのコンコルドの例のように、なかなか持ちにくい視点です。
だからこそ、止める!手を出さない!を含めた客観的に広い視点を。
キチンと示してくれるような人物が、そばにいること。
自分のお店や会社の中、または外に必ずいること。
これが老舗や100年企業となるための条件の一つだとも思います。
そして、客観的な広い視点に基づく意見やアドバイスは。
得てして、耳に痛い、腹の立つ、自分の意見と反対のことが多いもの。
それでも、ちゃんと自分に伝えてくれる信頼のおける人物を見抜く目。
お世辞やご機嫌取り、ただ単のイエスマンに過ぎない人物を見抜く目。
これもまた、商売やビジネスに必要な「確かな目」の一つではないでしょうか。
このように。
自分自身が将来や現実を見据え、客観的に判断できる「確かな目」を持つ。
または「確かな目」を持つ信頼の置ける人物を見抜く「確かな目」を持つ。
この2つの「確かな目」があれば、大小さまざまな失敗も問題も乗り換えて。
やがてお店や会社の進化の糧となって、老舗や100年企業を築く幹となる。
これは私自身、かつて会社存亡の危機に直面した時に。
痛みと共に得た発想、常に磨いておきたいと願っていることでもあります。
今回は、お店を始めて数年経ったMさんとの会話から。
Mさんのお店も、きっと老舗といわれるようになると。
改めて感じた、その中で自分を振り返ってみた話でした。
ではでは。また。
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