「先輩、ホントにコイツはエライんですよ!」
・・・あれは10年ほど前のこと。
当時、地元で少しずつ評判が上がっていた新規開店のバー。
そのカウンターで、後輩のA君と2人で飲んでいた夜です。
後から1人で来た、後輩のB君が。
オレたちと肩を並べて、カウンターに座った時の第一声でした。
一緒にいたA君は、14才年下の後輩。
後から来たB君は、2才年下の後輩。
共に、ある青年経済人が集まる異業種の会で。
A君は現役、B君は卒業したばかり、私は卒業して数年が経っていました。
その青年経済人の会で、A君は自分自身のことでなく。
その会の諸先輩から、何かといろいろ言われていたらしく。
そのことに頭を下げていた、その姿がエライ!とB君は言い出したのです。
A君が何かと言われ、頭を下げていたこと。
それはA君の会社の先代社長、お父さんのことでした。
このお父さんもまた、同じ異業種の会に所属していました。
当然ながら、A君のお父さんを知る同世代の先輩方もいます。
そしてA君のお父さんは、自分にも周りの人にも厳格で。
周囲との摩擦を恐れず、ハッキリと意見を主張する方でしたので。
同世代の先輩方の中に、お父さんとハダがあわない方、嫌う方がいて。
A君は「オマエのオヤジは・・・」と、アーダコーダと言われていたのです。
このように、先代社長のことを世間からいろいろと言われる時。
特に男性の2代目社長が、父親である先代社長の評判を耳にする時。
数多くの2代目社長やその予備軍を目にしてきた経験と。
自分自身の経験からすれば、大きく3つのタイプに分かれる気がします。
というのも、考えてみれば。
2代目として先代から経営や会社を引き継ぐのは、財産の相続と同じです。
不動産やお金だけでなく、いろいろな目に見えない資産と負債が存在します。
先代に対する評価も、経営者として引き継いだ財産の一つ。
大事な資産もあれば、返さないといけない負債もあるからです。
そう、一つは2代目社長として自覚と責任があり、客観的に先代を見ているタイプ。
A君のように先代の負債を返しながら、社長として自分自身の資産を増やせていける人です。
二番目のタイプは、2代目社長として自覚と責任が薄く先代をライバルまたは無関係と考えて。
先代から相続しながら踏み倒して、社長として自分自身の負債を積み増している人です。
このタイプで、思い出すのは。
先代のお父さんとの約束を持ち出して、守ってくれるようにお願いした時に。
ある2代目社長が「そんなことは、先代に言ってくれ!」と怒り出して。
「もし文句があるなら、先代の位牌を自宅の庭に出してXXをかけてくれてイイから!」と。
言い放った事件です。
3つ目は、2代目社長として自覚と責任がほとんどなく先代にオンブにダッコのタイプ。
先代から本当の意味で経営や会社を相続してない、社長としてカタチだけの人です。
たぶん、このタイプの2代目社長は。
アナタの身の回りにも、何人かいないでしょうか?
肩書きは社長でも、先代にお伺いを立てないと返事ができない。
こんなことをしている2代目は、決して少なくない気がしています。
そんな・・・立派に先代からの資産も負債も引き継いで、自分自身の資産を積みまして。
自らの力でも、経営者として、リーダーとして、多くの資産を積み上げていたA君・・・・・・・・。
異業種の会で、数多くの若い仲間から慕われて。
社員を大切に、そして会社の業績をガンガンと伸ばしていた彼・・・・。
・・・そのA君が、10月半ば。
1年におよぶ闘病生活の中、社長としての職責を全(まっと)うしながら。
わずか40歳そこそこの若さで・・・・・亡くなってしまいました・・・・・・・・・・・・・・。
・・・このことを。
書き留めておきたい、と思いながら。
何度、このブログに掲載すべきか?迷ったことでしょう。
誰の眼に触れるか、わからないブログに書くべきことなのか?公開してよいのか?
自己満足の追悼記事にならないか?個人的に書き留めておけば良いのでは?・・・と。
悩み続けて、しばらくブログから離れていました。
たしかに、忙しく時間がなかったのも本当のことですが。
ブログを書く気になれない、それがブレーキとなっていたのも事実です。
そう。冒頭のバーでの話は、A君との思い出のエピソードの一つです。
それから、しばらくして。後でB君に話したのが、後段の先代の資産と負債の話です。
人は身近な人が亡くなった時、近しければ近しいほど。
それも、自分よりも若い人が亡くなった時にはなおさら。
心の整理がつくまで、より多くの時間がかかると思います。
そして亡くなった人に手を合わせながら、その人と自分の人生もふり返る。
いわゆる死生観を思い、生き残った者として、これからどう生きるべきか?と考える。
その結果。私の場合、ここにA君のことを記(しる)しておこうと。
同じ2代目経営者として、懸命に生きてきた彼のことを2代目横丁に記しておこうと。
それが先輩として、生き残った私の役目と思って。
今日、彼のことを書きつづる事にしました・・・。
A君のことは。
ただただ、残念であり、若すぎると思うばかりですが・・・。
その上で、このブログを読んでいるアナタに。
少しの時間、考えてもらいたいと願っています。
人は、生まれる場所と時間と。
亡くなる場所と時間は、自分では選べないといいます。
そうだからこそ、一生どころか、数年、1年、半年、1ヶ月とは言いません。
1日とも、半日とも、数時間とも、もしかしたら1時間とも言えないかもしれません。
30分でも、10分でも、今このブログを読んだ後の数分でも。
ホンのわずかと思える時間でよいので、悔いなく生きたいと。
このように思ってもらいたいと考えているのです。
これがA君のことをブログに記した、私の思いです・・・。
本当に、若すぎる・・・。
改めて、A君のご冥福を心から祈って。
合掌。
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