2014年10月6日月曜日

「のれん」を守る!広げる!改革する!

先月の半ばのことですが。

日本経済新聞の電子版でこんなタイトルの記事を見つけました。

-守るべき「のれん」間違えた和菓子の名門-

【参考記事ページ】
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO77096180V10C14A9000000/?dg=1

書いている方は、帝国データバンクの藤森徹部長さんです。

内容としては。

500年以上も続く老舗中の老舗、上場企業でもある名門・和菓子屋さんが。
創業家20代目である社長が逮捕されるという不祥事を10年前に起こして。

その後は業績が上向かず、人事のゴタゴタも続いて。
最後は資金面でも、創業家からの無担保・無利息の支援に頼っていたのですが。

とうとう今年の6月、民事再生も不調に終わり破産になったという事件を受けて。
代々続いた老舗の「のれん」を守れなかった背景についてレポートしています。

実は、拙著である2代目横丁で配布していた小冊子。

2代目解体新書「なぜ2代目は失敗するのか?9割の人がハマる落とし穴」














  【A5版 27ページ】

に書いたのですが。

東京商工リサーチの調査によれば、今から13年ほど前の2001年に。
『「日本の企業倒産史上、特筆すべき現象の発生」があった』のです。

そう・・・・・・この老舗の和菓子屋さんの社長が不祥事を起こす3年ほど前。

2001年、業歴30年以上のいわゆる老舗企業の倒産が。
統計史上はじめて10年未満の新興企業を上まわりました。

これは、バブル崩壊直後の1991年には。
新興企業が、老舗企業の9倍も倒産していたことから考えても。
10年間で、老舗と新興企業の急速な格差の縮小と逆転があったことを示しています。

そして、今年2月の同じく東京商工リサーチの最新の調査によれば。

昨年2013年に倒産した業歴30年以上の老舗企業の倒産件数に占める割合は31.6%で。
前年より0.4ポイントアップ、過去15年間で構成比は最高を記録したといいますから。

新興企業との倒産比率が逆転した2001年以降も、着実に老舗企業が倒産する比率は増加。
一方で業歴10年未満の新興企業は構成比23.2%と2年連続でダウンしたというのです。

このような「老舗・冬の時代」の初期に、藤森部長さんが取り上げた和菓子屋さんの社長は。
業績低迷による株価下落から、上場廃止を避けるため架空の増資に手を染めてしまいます。

この事件の構図を藤森部長さんは。
『「のれん」の果たす役割』と題して、次のように述べています。

----以下、記事から引用----

この事件の構図は、歴史を背負うはずの社長の見通しが甘く、
海千山千の投資コンサルタントに目をつけられたことが発端に見える。

これは「だまされた」とする会社側、経営側の主張でもある。
しかし、本質は「信用」の意味を見失ったことにある。

上場維持による信用と、500年を超える「のれん」の信用。
どちらがより重要で、守るべきものなのか、取り違えてしまった。

古くから続く老舗菓子屋は多いが、上場しているところはわずかだ。

「のれん」の果たす役割の一つに「保証」がある。

「あののれんを掲げる店の羊羹は間違いない」

味、品質、といったものだけでなく、
作り手の信用までイメージさせる、強力なマーケティングツールだ。

しかし一方で、少しでも問題を起こすと、それは大きなしっぺ返しとして、
消費者からそっぽを向かれてしまうリスクもはらんでいる。

だからこそ老舗は「信用=のれんに恥じないこと」にこだわる。

---- ここまで ----

私たち、2代目横丁は。

「全力で暖簾(のれん)を「守る・広げる・改革する」を応援します」

をモットーにしています。

まさに、藤森部長さんが話しているように。

私たちも「のれんを守る」とは「信用を守る」ことだと思います。
しかし単なる社歴の長い「のれん」だけでは、決して「信用」は得られないのです。

考えてみれば。

一昔前、といっても四半世紀、25年くらい前までなら。
老舗という「のれん」だけでお客様や金融機関から高い評価を得ていました。
ところが、先ほど述べた倒産の統計でも明らかなように。

今の世の中、世間では起業家がもてはやされ、国も独立や起業を支援していますが。
老舗を継続させるのは、起業するより高度で困難な状況に13年ほど前からなっています。

世間では、よくボンボンだ!オジョウちゃんだ!甘ちゃんだ!などと言われますが。
2代目経営者は、起業家以上に厳しい自助努力が必要不可欠となったのです。

その結果、事業を継がせようとする親も、事業を継ごうとする子どもも減りました。
子どもに苦労をさせたくない、親とすれば当然の考え方でもあります。
子どもにしても、苦労が目に見えているのに継ぐのは蛮勇に思えます。

こうして老舗の「のれん」の多くが、引継ぎ手もなく。
日本中で、静かに降ろされ続けているのです。

同時に、きちんと信用を大切にしてきた老舗の「のれん」は。
今でも多くの方に支持されて、いろいろな「信用」も生みます。

この倒産した和菓子屋さんも、再生のために地域の方たちに署名運動をお願いしたところ。
わずか10日間で、1万2千人もの方たちの署名が集まったと言います。

もちろん、だからといって再生ができる保証はありません。
失った信用、地に落ちた「のれん」を再生する道は、厳しいものになるでしょう。

このような老舗の「のれん」の大切さと重さ。

私たち2代目経営者は、ひと時も忘れてはいけないものではないでしょうか。

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