2014年10月30日木曜日

情報が洪水のように氾濫する時代に

先日の日曜日、2代目仲間の社長さんと昼食を共にして。
最近の銀行金利の話、投資の話などをしている時に。

インターネットがもたらした情報社会について。
その功罪が話題になりました。

いつの頃からでしょうか?

ネットが発達して、情報が多すぎる「過多の時代」といわれて。
やがて情報の「氾濫の時代」といわれるようになったのは。

まるで洪水のように、スマホやパソコンを開けば。
ありとあらゆる情報が、ドドドッ!と私たちを飲み込むように迫ってきます。

おもしろいもので私たちは、情報を自分も気づかないうちに。
一種のフィルター、色つきメガネで取捨選択しています。

たとえば「XXは危険だ!」という情報と。
反対に「いや!XXは危険でない!」という2つの情報があったとします。

この時に、無意識のうちに「XXは危険」という感覚や価値観など。
反対に、無意識のうちに「XXは危険でない」という感覚や価値観など。

氾濫する情報から、意識しないまま自分の視点に合致する情報を求めて。
そのような情報に触れることで納得して、結論を導き出しているのです。

このように、客観的に正しいか?正しくないか?とは関係なく。
主観的に決めているにも関わらず、多くの人が納得や賛成していると。

まるで、それが客観的に正しいように感じてしまう。

情報が瞬間的に、しかも個人個人が思いのままに拡散できる時代。
何を言っているか?どんなことを言っているか?その情報の中身よりも。

自分とは正反対の感覚や価値観を受け入れる。
誰が言っているか?本当に信頼できる人を見極める。

このような自分磨きが、2代目経営者には求められていると思いますが。

「さすが2代目は先代より器が大きい!ココは思い切って投資です!」
「そうですよ!新しい時代は、2代目の若い発想で経営も進めなきゃ!」
「そろそろ2代目のカラーも出しましょうよ!社員さんも、それを望んでいますよ!」

などなど。的確な情報提供や助言なら良いですが、得てして私たち2代目に多いのは。
おだて、お世辞、ヨイショの類であり、それに対する2代目側の極端な毛嫌いです。

別の言い方をすれば、2代目ゆえのアセリや先代などに対するコンプレックス。
そこから生まれる無用なプライド、心の壁、過大な警戒心やひねくれた見方。

ココにつけ入ろうとする人たち、そのような人たちと真摯な人もゴチャゴチャに見る2代目。
2代目経営者に限らず、古今東西の権力者やリーダーが陥りやすい落とし穴です。

昔と比べものにならないほど、速く、広く情報が拡散して氾濫を起こしている今の時代。

ますます大切になっているのは、先ほどお話したことに付け加えると。

自分とは正反対の感覚や価値観を受け入れるため、経験の幅や深さ、度量を広げる。
誰が言っているか?本当に信頼できる人を見極めるため、自分の心を磨く、心理学を学ぶ。

ということになると思いました。

その一方で。これまでは、情報の共有や交流がなかなか出来なかった人たち。
遠く離れた人、世代を超えた人たちなどにアプローチできるようになったことで。

たとえば、近隣や地域内では把握や連携が難しかったこと。
また、マニアやマイナーな存在として周囲から認識や認知されなかったことなど。

少数で、力が比較的にない、たとえば地域に密着した中小企業にとって。
情報社会の発展は、大きな可能性をもたらしたと思います。

もちろん、そのような共有や交流、連携や認識にも。
多彩な感覚や価値観の受け入れ、信頼できる人の見極めは欠かせません。

そしてネットだけでなく、リアルにいろいろな人と会うこと。

経営者だけでなく、セールスやマーケティングの担当者にとっても。
リアルにお会いした、息づかい、表情、視線などが大事な情報となる。

このような時代にも、なってきたと思いました。

2014年10月27日月曜日

張りぼて社長で終らずに

新規事業のアイデアを考えるとか、何か新しいことにチャレンジするとか。
自分に変化を求めるとか、気分を一新してフレッシュな状態にしたいとか。

このような時は、意外と形や見た目から入るとよいかもしれません。

旅行に出る、部屋の片付けや模様替えをする、普段は着ない真っ赤なシャツを着るなど。
環境、服装、仕草、雰囲気が変わることが、今の自分を変えてくれることにつながるでしょう。

その上で、いつまでも形や見た目のままでいると。
それは張子の虎であり、見かけだおし、中身のないニセものになると思います。

たとえば、見た目はオシャレでカッコいい男性でも。
キレイな服を着て、スタイルが良い女性でも。

話してみたり、食事をしたりしてみたらガッカリした。
このようなことは、普段の生活でもよくあることです。

考えてみれば。2代目を継ぐために会社に入る、そして社長になることは。
要するに見た目、形が次期の経営者、社長になったことを意味するのではないでしょうか?

そこから先、経営者や社長として中身をどう詰め込むか?
周囲から信頼されるホンモノの経営者や社長になれるか?

そのために、どれほどの覚悟をもって行動しているか?
時間、手間、プレッシャー、精神的な苦労など、エネルギーをつぎ込めるか?

それでもなお、結果が出ない、失敗した時に。
逃げ出すことなく、取り組めるか?などなど。

一言で言えば、本気になって真剣に社長業に取り組む。
わき目も振らず、目的や目標にフォーカスして経営にまい進する。

このようなことができないまま、先代からの財産や遺産で食いつなぐだけ。

たとえば。典型的な名ばかりの2代目社長、ナンチャッテ2代目社長には。

イイ年になっても、会長であるオヤジの言いなりのバカ、失礼!若社長。
先代が一線から身をひいたことを幸いに、金遣いが荒くなり遊興にふけるボンボン社長。

このような中身のない張りぼて社長、残念ながらそんな2代目社長を時おりみかけます。

もちろん、大切なことは「他人のフリ見て我フリ直せ!」です。

張りぼて社長を反面教師として、社長としての中身を充実させるために。
先代社長が元気なら、段階的に社長の「重荷」を背負うように取り組まないといけません。

その方法は、効果的な筋力や体力のトレーニングの方法に似ていると思います。

筋力トレーニングでは、たとえばジムのマシンとか、バーベルなどで。
10回程度が限界の重さ、負荷を筋肉に加えて、負荷と回復を繰り返しながら筋肉を鍛えます。

体力トレーニングでは、たとえば走るとかサーキットトレーニングなどで。
ある一定の運動量をインターバルを置きながらこなして、持久力や体力の向上をはかります。

というのも筋肉や体力は。

ケガにならない程度に破断やムリをさせ、それが回復することによってのみ。
筋肉は増大して、より太く、より丈夫に、体力はより強く、より回復力がつく。

このような性質があるからです。

これらと同様に、社長の中身も。
今の自分の行動や時間の使い方などを。

意識的に破断させ、病気やケガにならない程度の疲労感を感じて。
そこから回復すること中身が増大して、より丈夫に力強くなると思います。

もちろん。先代社長が健在のうちに、そのような取り組みができれば良いですが。
社長の「重荷」を一気に、突然に背負う立場となる2代目経営者も少なくありません。

中には、過大な負荷が筋肉を破断でなく破壊するように。
ムリな体力づくりが、かえって病気やケガを呼び込むように。

引き継いだ会社を倒産させたり、自分が病気で倒れたりして。

会社も自分の健康、心、体、大きく言えば人生も。
破滅や破壊させしまうような場合もあります。

これは。ある意味で、限られた特殊なケースかもしれませんが。

父親が会社の資産状況を詳しく教えないというか、後で考えてみれば意図的に。
隠した中で息子さんに社長を引き継がせて、自分は会長におさまった人がいました。

きびしい言い方をすれば、どんなカタチでも社長を引き継いだ以上は。
父親の言うことより、社員や現場の声に耳を傾けて。

会長の説明でなく、現実の数字をよく見るべきだとは思いますが。

社長を引き継いで数年後に、この会社は倒産しました。

しかし、どうしたことか。

債権者会議などに、最後まで会長である父親は顔を出さないまま。
精神的にも体力的にも追い詰められながら、すべて社長の息子さんが一人で対応。

会社を整理したあとは、家族を抱えながらどうにか再就職できたのですが・・・。

その息子さんは健康を害して、倒産から3年ほどで。
40歳代の若さで、残念ながら他界してしまいました。

このように社長の「重荷」とは、どんなカタチで引き継ぎ、背負うとしても。
命を削るほど、命をかけるほどの負担となる場面や場合もあると思います。

だからこそ。真剣に取り組み、自分を鍛え、社長として中身を充実させないといけません。

その覚悟も自覚もないまま、張りぼて社長でいることは最悪なことだとしても。
一方で。決して、ムリしてもいけないということも自覚しておいてほしいと思います。

2014年10月23日木曜日

新しい行動に出られない、行動を変えられない

なるほど。周囲の2代目経営者の仲間から。

成功した、うまくいった、と自分で思えないならば。
自分で満足する結果が得られていないならば。

その上で、成功したい、うまくなりたい。
自分で描いた結果を得て、満足したいと思うなら。

今の行動を変えなければ、何も手にできないし。
新しい行動を起こさなければ、何も変わらない。

と言われても、自分自身を振り返ると。

社員を思う心、家族を大切にする心、これこそ経営者として大事なこと。
このように思っているし、行動を変え、新しい行動を起こすというのは。

社員や家族に負担をかけるという面もあって。
新しい行動に出るときの足かせ、強力な磁力なる。

そして心のブレーキとなって、新しい行動に踏み出せない自分がいる。

このように思い、悩んでいるわけですね。

そうですね、たしかに経営者の新しい行動は。
社員にも、そして家族にも、同時に。

行動の変化や新しい行動を求める場合が多いと思います。

特に中小企業の場合、経営者と会社や社員はいわば運命共同体。
また家族も、たとえば銀行への個人保証など生活そのものが関係しているので。

もしかすると、行動の結果として会社が傾く、社員が路頭に迷う。
家族が家を失い、収入も減り、大きな負担を抱えることもあるなど。

新しい行動そのものより、行動の結果に対して。
不安があり、心にブレーキがかかっているのかもしれませんね。

他にも、新しい行動や新たな成功や結果を求めるよりも。
たしかに不満はあるが、それなりに現状には満足しているとか。

無意識のうちに、信じ込んでしまっていることによって。
頭でわかっていも、新しい行動に踏み出せない、行動を変えられないとか。

いくつかの原因が考えられますが、まず何よりはじめに。

心にブレーキをかけて、新しい行動が出来ない自分に対して。
OKを出す、または大切な人や信頼のおける人から「ねぎらい」をもらう。

このような行動に、少しだけ踏み出してみてほしいと思います。

というのも。新しい行動を起こそうとする、行動を変えようと思っても。
なかなか行動を起こせない、どうしても変えられないという状況は。

新しい行動を起こそう!行動を変えよう!としている自分と。
何かしらの原因で、行動を起こせない、変えられない自分が。

同時に存在している状態だからです。

つまり、新しい行動へGo!とアクセルを踏みながら。
同時に、それは止めとけ!とブレーキも踏んでいること。

そのため行動が空回りして、動けないのです。

では、どうすればよいでしょうか?

もし運転免許をお持ちなら、坂道発進を思い浮かべて下さい。

マニュアル車ならアクセルを踏みながら、ハンドブレーキを外してやればよい。
オートマチック車ならブレーキペダルから、足を離してやればよいのです。

そう。人は誰でも、もともと前に向かって生きていこうとする意識を持っています。
言い換えれば自動的に、オートマチックに前へ進もうとする生きものなのです。

だから。心のブレーキペダルから、少しだけ足をどけてやれば。
ゆっくりでも、スルスルと前進できるようになれるのです。

自分にOKを出す、または「ねぎらい」をもらうというのは。
このような行動であり、アクセルと同時にブレーキを踏んでいる自分に。

心のブレーキから足をそっと外す、そのような意味のある行動なのです。

まずは、まるでシャワーを浴びるように。

「いいんだ!今の自分で!新しい行動や行動を変えない自分で!」
「いいのよ!今のアナタで!新しい行動や行動を変えないアナタで!」

というように、OKサインや「ねぎらい」を全身に感じて下さい。

反対に、止めた方が良いのは。

「どうした!ガンバレ!新しい行動に出ろ!行動を変えろ!ガンバレ!」
「新しい行動に出よう!行動を変えよう!出なきゃダメだよ!変えなきゃいけないよ!」

とアクセルを踏み込むようなことです。

ブレーキをかけながら、それでもアクセルを踏み続ければ。
いつしか、突然にブレーキのワイヤーが切れて、暴走することになります。

暴走すれば多くの場合、衝突事故となり相手や周囲を傷つけたり。
自分自身が負傷したり、時には生命の危険に陥ったりするかもしれません。

そのようにならないためにも、まずは心のブレーキペダルから足を離す。
足を離せないまでも、足の力を抜くだけでも効果があるものです。

ぜひ、そのようなことから始めてみて下さい。

2014年10月20日月曜日

社長の不安と不満から生まれるグチ

創業者でも2代目経営者であっても、特に会社のトップ、社長である以上は。
会社経営の不安と不満が消えることは、社長でいる限り、恐らくないと思います。

もちろん、当然ながら不安や不満の大小や感じ方は人それぞれですし。
もし不安も不満もなく、社長として会社経営ができているなら、それはそれで素晴らしいこと。

業界や地域、もしかすれば日本や世界で一番に成功している社長として。
多くの方々から、評価されているような成果を手にしている方だと思います。

でも、私を含めて多くの平均的な社長。
しかも地方で日々、仕事にアセを流しているような中小企業の社長ならば。

今年度は売り上げも利益も好調だが、来年度はどうなるたろうか?とか。
次の主力の商品はどうしよう?市場の動向や景気はどうなるのだろう?とか。

大小の違いがあっても、何かしらのことに不安を感じて。
予想を立て、考えて、選択肢を作り、決断して、経営を進めていく。

また。

ウチの営業体制は今ひとつだな!それに生産部門もテコ入れが必要だ!とか。
なんて会社だ!そんな手を打ってまでわが社の顧客を奪うなんて!とか。

社内か?社外か?の違いはあっても、何かしらのことに不満を感じて。
状況を見て、考えて、対策を立て、実行して、経営を進めている。

このような毎日を送っていると思うのです。

ちょっと、突っ込んで話せば。
中小企業の社長ならば、必ずと言ってよいほど。

よほど自信がある、あえていえば過信していない限り不安は消えず。
よほど人格ができている、あえていえば甘い性格でない限り不満は消えないでしょう。

不安は、未来や将来について感じるもの。
だから人前でのスピーチ、スポーツの試合、音楽の演奏会の本番などと同じく。

準備や練習をつむことで、軽減できて。
実際の経験をつむことで、解消されていくものだと思います。

不満は、現在や現状について感じるもの。
だからある面では、成長や上達や進歩の糧であって。

社会や他の人の評価、自己評価を得ると軽減するが。
成長や上達を目指し、評価基準をあげると増加するものだと思います。

そして、不安も不満も。
一瞬にして消し去り、軽減してくれるのが感動ではないでしょうか?

感動は、期待や予想と結果や結末とのギャップに起こります。

だから不安も不満も、期待や予想をコントロールすることで。
小さくしたり、消したり、必要最小限にしたりできます。

また、不安や不満を。
長い時間かけて、少しずつ変えるのは習慣だと思います。

習慣は、期待と予想と結果や結末との一致により身につきます。

だから不安も不満も、期待や予想を適正に判断していくことで。
上手につきあいながら、年限や経験を積むことで軽減できるようになります。

その上で。ぜひ気をつけたいのは、不安や不満は。
つい、口にして自分自身や誰かに「グチりたくなる」ものだということです。

不安や不満、そこから生まれるグチは。
風邪やインフルエンザのように、知らないうちに感染を広げます。

ですから、あたりかまわずグチをこぼすのは止めましょう。

そして、もし。

あなたの周囲でグチを口にする人とか、口にすることが多い人がいるならば。
その場をソッと離れる、なるべく疎遠になるようにしていくことが懸命でしょう。

特に。トップである社長は、周囲に対する感染力も強いですから。
グチを自分が口にするのも、他の社長さんが口にしているのも危険です。

そこでグチりたくなっても、グチを聞くにしても。
まず相手と時と場合を選んで、感染対策を考えながら行うか。

どうしてもグチりたくなる衝動にかられる時には。
一人きりの時、誰にも聞こえない場面やところで。

グチるレベルでなく、大声で。

バカヤロー!ふざけんなよ!などと叫んでみることをおススメします。

繰り返しますが、よほどの人物でない限り。
不安や不満から生まれるグチは、完全にゼロにすることはできません。

それも。自分の家族や恋人だけでなく、多くの人たちの不安や不満を解決して。
自らは不安や不満をおさえる必要や場面の多い、社長などリーダーの人は。

不安と不満、そこから生まれるグチとは。
斬りたくても、斬れない縁があると自覚した方が良いでしょう。

なぜなら、不安や不満など、不安定な感情とそこから生じるストレスは。

先ほどもお伝えしたように、大声で叫ぶとか、スポーツをするとか。
行動で解消するしかないので、グチもそれらの行動の一種だからです。

上手に不安や不満をコントロールする、さらに利用する。
そして上手にグチをこぼす、何かの行動で解消する。

これも、社長には必要不可欠なスキルとして。
ぜひ身につけるようにしてみましょう。

ではでは。また。

2014年10月16日木曜日

2代目に大切な1つの道筋と問題解決の3つの方法

私たちのような中小企業の2代目経営者だけでなく。
政治家、そして歌舞伎や華道や茶道などの伝統文化にも。

創業者や創始者、初代、また3代目以降なら先代から何かを引き継いだ人。
継承者という立場の人が、ビジネス以外の世界に数多くいらっしゃいます。

そのようなすべての2代目が、さまざまな問題や課題を解決しながら。
先代から引き継いだ会社や家元組織などを守り、繁栄し続けるために。

お手本としたい1つの道筋があります。

能の世界で、世阿弥が父である観阿弥の教えをまとめたもの。
有名な「風姿花伝」の書にある「守・破・離」という考え方です。

守、まず先達の教え守り
破、教えを自分なりに破り
離、最後は先達から離れ自分の道を行く

だいたい、このような意味だと考えて良いかと思いますが。
この「守・破・離」の前に「型」をつけて「型・守・破・離」とする話もあります。

型、基本となるもの

さらに、私の臨床心理の師匠は。
その前に「師」とつけておられました。

師、いろいろなこと(型)を示してくれる人

ということで、合わせますと「師・型・守・破・離」となります。

まさに2代目とは、先代を良き「師」として。
場合によれば「反面教師」として、跡を継ぐ立場です。

その「師」が作り上げた、今のしくみや方法など。
その良い点も、また悪い点も、基本となる「型」として。

まずはしっかりと理解して「守」しなければ。
自分なりの「破」も、その先の「離」もできないのですが。

得てして私たち2代目には、先代に批判的な視点を持つ人も多くて。
基本となる「型」を学ぼうとしない、手を抜く傾向があると思います。

そして、自分なりの「破」を押し通す。
自分では、先代から「離」したとカン違いする。

その結果として、経営や芸事などで失敗する。

だからこそ、2代目はしっかりと「型・守」をするために。

厳しいことを言う方、先代と比べて甘さを指摘する方、苦言を告げる方など。

たとえば経営者なら、先代経営者である父親とか、社内の古参幹部とか。
外部の識者や先輩の経営者など、耳に痛い話をする人を遠ざけてはいけません。

「型」の「守」なくして、社内の改革や業務のカイゼンに走れば。
それは柱の細い1階に、無理やり2階を建てるようなものです。

もし柱が細ければ、どこが弱いのか?十二分に理解した上で。

社内の資材や人材で、補強してから2階を建てるとか。
補強する資材も人材もなければ、外から調達するとか。

そうしなければ、建物ごと倒れてしまうのです。

そして2代目が、経営や芸事で成功した事例を見ていくと。
2代目自身でなく、周囲の人、他のお弟子さん、先代の幹部さんなどが。

しっかりと「型・守」している場合もあります。

ところが「型・守」によって、先代からのやり方を守っていても。
周囲の環境、時代の変化や市場の変化は必ず起きますので。

先代からの引き継いだ「型」が通用しなくなる、成果が出なくなって。
やがて環境の変化や時代の流れについていけない、取り残される事態となる。

たとえば創業者の一代だけで、2代目、3代目と続かない会社とか。
2代目以降が「守」ばかりに走り、ジリ貧となって消えていく会社とか。

これらは、典型的な「破」が進まなかった事例だと思います。

そのため、必ず2代目は「破」の段階に進む場面になるのですが。

自分や会社などを取り巻く、さまざまな環境を「水」と考えて。
今の問題や課題(砂糖や塩)を解決(ソリューション:溶解)する。

「破」は、このような発想で整理して考えると良いと思います。

すると「破」の方法、現状の問題や課題を解決する方法には。
大きく分けて、次のような3つの方法があることになります。

1.少しずつ(塩や砂糖を)小分けにして溶かす

問題や課題を少しずつ、溶かすように解決していく方法です。
問題や課題を次のようなキーワードでとらえてみます。

分解・分別・小さく・少なく・たたむ・削る・減らす・砕く・割る・折る・引く・絞る、など

2.溶かす媒体(水)の量を増やす

水の量を増やすように物量を増やして、解決する方法です。
今の環境(水)を次のようなジャンルと発想でとらえていきます。

時間・人・予算・アイデア・テスト、など+増す・多く・足す・転換・連合・連携・合併、など

3.溶かす媒体の熱(エネルギー)を高くする

水の温度を上げお湯にするように能力やエネルギーを高めて、解決する方法です。
今の環境(水)を次のようなジャンルと発想でとらえていきます。

効率・手法・意欲・工夫・ツール、など+変える・交代・高くする・上げる・一新する、など

 実は、この3つの方法は。

会社や事業、家元組織や芸事を継承するためでなく。
プライベートにおいても、大きくいえば人生においても。

自分のカラを破り、問題や課題を克服する方法として役に立ちます。
もし今、プライベートの問題や課題があるとしたらお試し下さい。

そして、いよいよ。
「破」まで進めば、最後は「離」となるわけですが。

一言でいってしまうと「離」とは、すなわち自分が新たな「師」となること。
つまりマスター、名人と呼ばれるような存在となることと同じだと思います。

こうして、次の代の人が「師・型・守・破・離」を改めて継承していくのです。

ではでは。また。

2014年10月14日火曜日

第二創業!飛躍する2代目、つまずく2代目

なるほど。

たしかに2代目経営者として、活躍している人たちについて。
本や経済誌、テレビ、新聞記事などで目にすると。

引き継いだ事業でなく、異業種の新規事業を立ち上げたりとか。
引き継いだ市場でなく、別の商圏や海外市場に進出したりとか。

それとも、先代から引き継いだ事業や市場と同じであっても。
今まで業界になかったような新商品や画期的なしくみを創造したりなど。

このように、新しいことに挑戦して。
会社を成長させている話が数多く出てきます。

よく「第二創業」といわれて。
2代目経営者が目指すべき方向だとされている事例です。

しかし反対に、新規事業や新市場、新商品とか。
新たなやり方やしくみなどに、ハンドルをきったばかりに。

引き継いだ会社を倒産させてしまう話も、同時によく耳にします。

では、このように「第二創業」で成功する2代目と。
「第二創業」を目指したために、失敗する2代目と。

この両者のどこに、違いがあるのか?
なぜ彼らは成功して、なぜ彼らは失敗したのか?

というご質問ですね。

いろいろな考え方や捕らえ方があると思いますが。
私なりの考えをお話しすると、まず失敗した事例を見てみると。

新聞やテレビ、本や経済誌、また調査会社のレポートなどで。
よく目にしたり、耳にしたりする失敗した会社の原因には。

あたり前のことですが、第二という言葉がついても。
創業とは、冒険(ベンチャー)であり、投資(賭け)ですから。

冒険に旅立つための準備や調査、地図(計画)の用意とか。
投資として、しばらく成果が出なくてもつぎ込める資金や人員とか。

この点の見通しや外部からの調達などが甘い、不確かなままに。
人やお金、技術など既存事業の経営資源が流失したり、脆弱になったり。

結果、第二創業の成果が得られないまま会社が倒れてしまった。
このような点を指摘したものが、ほとんどではないかと思います。

しかし、一方で成功した事例を見てみると。

2代目経営者に多いケースは、先代経営者が倒れるとか。
会社に「見えなかった負債」があって、継いでみて始めてわかったとか。

失敗した人と同様に、冒険に旅立つ準備や調査、地図もないままに。
投資に向ける資金や人員も不足した中、第二創業へ走りざる得なかったが。

苦境を乗り切り第二創業に成功した、という話が少なくありません。

さらに。このような倒産の危機や大ピンチを乗り越えて成功するという話は。
またまた第二が付いているだけで、ほとんどの会社の創業物語に必ずあります。

つまり、第二であっても創業である以上は。
準備や計画、資金や人員の見通しや調達が甘かったというのは。

あくまでも表面的なもの、結果論にしか過ぎないと考えます。

では、その向こう側にあるもの。

第二創業で、飛躍する2代目経営者、つまずく2代目経営者の違いはどこにあるか。

ズバリ!一言でいえば、それは「目的意識」の違い。

個人的には、このように考えています。

というのも。

第二創業であれ、業務のカイゼンであれ、未知なもの、未経験なものに挑む時。
また経験のある仕事でも、さらにプライベートのデートや旅行をしようと思う時でも。

大きくわければ、次の4W2Hで方法や計画を立てると思います。

Who(だれが?)
When(いつ?)
What(なにを?)
Where(どこで?)
How(どのように?)
How much(いくらで?)

進めるか?という具合です。

そして、これら4W2Hのかなめ。
4W2Hすべてのバックボーンにあるのが。

Why(なぜ?)という目的意識です。

何のために、第二創業をするのか?
なぜ今、第二創業に取り組むのか?

もっと言えば、さらに根本的なWhy。

何のために先代から会社経営を継いだのか?
なぜ自分は先代から会社経営を継いだのか?

これらは、たとえば第二創業で地域ナンバーワンになろうとか。
売り上げや利益を2倍にしようとか、年収1億円になろうとか。

このような目標ではなく、根源的な目的です。

しかも。ご存じのように第二創業、といわれるレベルの大改革は。

正直なところ、一般的に経営資源の乏しい中小企業では。
成功して、会社が飛躍したケースが相当に少ないと思います。

たぶん、第二創業に成功したといわれる2代目経営者は。
5人に1人?10人に1人?もいないのではないでしょうか?

直感的には。おそらく20人に1人、つまり100人中5人、5%くらい。
だからこそ、第二創業や改革に成功した2代目は目立つわけでして。

第二創業の成功!という栄光のウラには。
多くの失敗や挫折、大きな危険性があるわけです。

だからこそ、強い目的意識が必要不可欠であって。

この目的について、自覚して意識的であろうが、無自覚で無意識であろうが。
自分の心に刻んである、思い出せるような習慣や思い出す場面を持っている。

たとえその目的や行動の方向性が、仮に利己的なものであったとしても。

目的意識がある人、または目的意識を持ち続けられる人。
目的意識がない人、または目的意識を持ち続けられない人。

これが第二創業で、成果が得られる人と得られない人の違いだと思います。

同時に。経営やビジネスに限らず、何ごとにおいても。
光が強ければ影も濃く、光が広くあたれば影も広くなります。

光と影はセットで、すぐとなりに存在しています。

そう。第二創業においても。

光と影と同様に、飛躍して強く光り輝く2代目と。
つまずいて深い暗闇に引きずりこまれる2代目は。

表裏一体であり、その目的意識の差もわずかなのものではないでしょうか?

しかし、ちょっとした紙一重の差が大きく結果を分ける。
災害や事故などの現場では、生死さえも分けてしまう。

これもまた経営やビジネスに限らず言えることだと思います。

そういう意味では、目的意識が弱い人、強い人が存在するのでなく。
今は弱い人でも強くできる、反対に今は強い人でも弱くなる時もあるわけで。

もしよろしければ、自分で自分に質問してみて下さい。

自分は、第二創業をしたいのか?
したいとしたら、なぜしたいのか?と。

そして、第二創業をどうやってするか?どんな成功事例があるか?
どんな人が成功してその時のポイントは何か?を考える前に。

自分の意志、第二創業の目的意識をしっかり見極めてみて下さい。

それも、1回や2回でなく何回でも。
それも、表面をサラッ!と流すのでなく深く、より深く。

異業種に進出して、見事に第二創業に成功したある2代目経営者の方は。

「自分自身の血液型を変えるくらいの意識で臨んだ」と話してくれました。

それくらい、人が変わったね!と言われるくらいの行動や姿勢が。
第二創業を成し遂げるには、大事な要素となるとお考え下さい。

2014年10月9日木曜日

人の目と天の目

おもしろい言葉に出会いました。

その言葉は。

「人の目」というのは、気にするためではなく、利用するためにある

という一文です。

あたり前のことですが、人は社会生活を送る以上は。
老若男女、誰でも「人の目」の中にいると思います。

社長だろうが社員だろうが、幼稚園生だろうがおじいちゃんだろうが。
政治家だろうが労働者だろうが、お金持ちだろうがホームレスだろうが。

立場や年令や経験や知識など、一切関係なく「人の目」の中にいると思うのです。

もちろん、2代目という立場にいる人も。
まさに、いろいろな点で「人の目」の中にいます。

それも、たぶん取り囲まれている「人の目」が、他の人に比べると広くて深い。
しかも、たぶん尊敬やあこがれや信頼などでない目で見られていることが多い。

コイツ、ホンマに仕事できるんかいな?

大丈夫なん?こんな人が社長(家元・大看板)になるって?

何もせんでも手に入れただけで実力ないんとちゃう?

お飾りやからなぁ~ワシら現場のことは知らんやろ!

などなど。先代、社内の古参幹部、同業他社、取引先、世間一般など。
いろいろな立場からの「人の目」は、疑問やハテナマーク?のオンパレードです。

そのため「人の目」を気にしすぎる人もいれば。
反対に「人の目」を気にしなすぎる人が多いのも2代目だと思います。

ただし、残念ながら。気にしなすぎるような2代目の方へ、率直にお伝えすると。
もともと気にしていない方は、決して利用することができないと感じています。

また十中八九、この2代目横丁なんて存在を必要ともしていないでしょうし。
仮に。何かの関係でこの記事をお読み頂いているとしたら、お役に立てないと思います。

大変申し訳ないのですが、大切なお時間をムダにしますので。
ココから先は、他のブログやホームページへのご移動をお願いします。

そう。冒頭の言葉は、あくまでも「人の目」を気にしている方。
または気にしすぎている方に向けて「人の目」を利用すると言っていると考えます。

批判も、誤解も、ヤッカミも、中傷も、誹謗も。
警告も、忠告も、お叱りも、叱咤も、激励も。

気にするのでなく、利用する、プラスに、糧にしていく。
気にするのでなく、素直に受け止めてみる、耳を傾ける。

その上で。

「自分の道を迷いながら、歩いている子どものほうが、
他人の道で迷いながら、歩いている大人より好ましい」(ゲーテ)

という言葉があるように。
変化が激しい、さらに激しくなるであろう今の時代は。

周囲や「人の目」を気にしすぎないようにして。
自分の道を歩む気概と発想が必要になっている。

それが「気にする」のでなく「利用する」とした、本当の意味だと思うのです。

ところで、最近は自分の道を歩むとか。
我道を行く(Going My Way)と話すと。

ヒットした「Let it Go」の中に出てくるフレーズ。

ありの~ままでぇ~♪♫

という歌詞を思い出す方が、中にはおられるのではないでしょうか?

また「Let it:ありのまま」と耳にすると「Go」でなく。
それは「Let it be」では?とを思う世代の方もおられるかもしれません。

さらに直訳すると「Go」という方が「好きに我道を行く」という感じで。
「be」の方が存在そのもの、まさに「ありのままで」と思う方もおられるでしょう。

おもしろいことに、この2つの有名な大ヒット曲。

「Let it Go」と「Let it be」の英文の歌詞を読むと。

一つの共通点が見つかります。

実は「Let it Go」の前段には。
「Heaven knows I tried」という歌詞が出てきます。

前後の歌詞からして。私が冷たい風や嵐に挑戦してきた、耐えてきたことを。
「Heaven:天(神様)」は知っている、となると思います。

一方で「Let it be」では。
もっとダイレクトに「Mother Mary:聖母マリアさま」が現れて。

賢人の言葉として「Let it be」と話してくれたとなっています。

なるほど!この2つの有名な歌からすれば。

「人の目」を気にせず「Let it:ありのまま」であっても。
天や神様といった「天の目」があって「天の目」が認めてくれるから。

はじめて「Let it:ありのまま」で「Go:行く」であり「be:存在する」のだと。

このように解釈できるように思えるのです。

人が見ていなくても、天や神様が見ている。
日本風に言えば、お天道様が見ている。

このような感覚があってこそ、私は私よ!「ありのまま」でいられる。

特にリーダー、経営者、上司とか。
中でも、世間からきびしい目が向けられやすい2代目経営者という立場の人は。

天や神様、お天道様のように首尾一貫した価値観や考え方を。

やはり天や神様、お天道様と同じように。
どんな場合でも、どんな人にも、どんな時でも降り注いで。

自分の態度や行動にブレがないようにする、このことが大切ではないでしょうか。

余談ですが、女性から見て「ダメだ!コイツ!」と思われる男性は。
たとえばデートで自分にやさしくても、店員さんやタクシー運転手さんとか。

このような人に横柄な態度を取る人、首尾一貫していない人、だそうです。

そういえば。2代目経営者の中に多いのは、普段は紳士的なのですが。

夜の飲み屋さんになると、お店の女性に横柄な行動や態度に出る人。
先代や先輩経営者と違い、社員や後輩に対すると行動や態度が変わる人。

このような2代目の人は、天や神様、お天道様も見ていますが。
何より「人の目」が見ていて、さらに「人の口」には戸を立てられないものです。

金融機関の評価に「風評」という項目があるように、たとえ「風の評判」でも。
そして「人の評判」でも、中小企業の場合は信用を失うことがあるのでご用心を。

ではでは、また。

2014年10月6日月曜日

「のれん」を守る!広げる!改革する!

先月の半ばのことですが。

日本経済新聞の電子版でこんなタイトルの記事を見つけました。

-守るべき「のれん」間違えた和菓子の名門-

【参考記事ページ】
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO77096180V10C14A9000000/?dg=1

書いている方は、帝国データバンクの藤森徹部長さんです。

内容としては。

500年以上も続く老舗中の老舗、上場企業でもある名門・和菓子屋さんが。
創業家20代目である社長が逮捕されるという不祥事を10年前に起こして。

その後は業績が上向かず、人事のゴタゴタも続いて。
最後は資金面でも、創業家からの無担保・無利息の支援に頼っていたのですが。

とうとう今年の6月、民事再生も不調に終わり破産になったという事件を受けて。
代々続いた老舗の「のれん」を守れなかった背景についてレポートしています。

実は、拙著である2代目横丁で配布していた小冊子。

2代目解体新書「なぜ2代目は失敗するのか?9割の人がハマる落とし穴」














  【A5版 27ページ】

に書いたのですが。

東京商工リサーチの調査によれば、今から13年ほど前の2001年に。
『「日本の企業倒産史上、特筆すべき現象の発生」があった』のです。

そう・・・・・・この老舗の和菓子屋さんの社長が不祥事を起こす3年ほど前。

2001年、業歴30年以上のいわゆる老舗企業の倒産が。
統計史上はじめて10年未満の新興企業を上まわりました。

これは、バブル崩壊直後の1991年には。
新興企業が、老舗企業の9倍も倒産していたことから考えても。
10年間で、老舗と新興企業の急速な格差の縮小と逆転があったことを示しています。

そして、今年2月の同じく東京商工リサーチの最新の調査によれば。

昨年2013年に倒産した業歴30年以上の老舗企業の倒産件数に占める割合は31.6%で。
前年より0.4ポイントアップ、過去15年間で構成比は最高を記録したといいますから。

新興企業との倒産比率が逆転した2001年以降も、着実に老舗企業が倒産する比率は増加。
一方で業歴10年未満の新興企業は構成比23.2%と2年連続でダウンしたというのです。

このような「老舗・冬の時代」の初期に、藤森部長さんが取り上げた和菓子屋さんの社長は。
業績低迷による株価下落から、上場廃止を避けるため架空の増資に手を染めてしまいます。

この事件の構図を藤森部長さんは。
『「のれん」の果たす役割』と題して、次のように述べています。

----以下、記事から引用----

この事件の構図は、歴史を背負うはずの社長の見通しが甘く、
海千山千の投資コンサルタントに目をつけられたことが発端に見える。

これは「だまされた」とする会社側、経営側の主張でもある。
しかし、本質は「信用」の意味を見失ったことにある。

上場維持による信用と、500年を超える「のれん」の信用。
どちらがより重要で、守るべきものなのか、取り違えてしまった。

古くから続く老舗菓子屋は多いが、上場しているところはわずかだ。

「のれん」の果たす役割の一つに「保証」がある。

「あののれんを掲げる店の羊羹は間違いない」

味、品質、といったものだけでなく、
作り手の信用までイメージさせる、強力なマーケティングツールだ。

しかし一方で、少しでも問題を起こすと、それは大きなしっぺ返しとして、
消費者からそっぽを向かれてしまうリスクもはらんでいる。

だからこそ老舗は「信用=のれんに恥じないこと」にこだわる。

---- ここまで ----

私たち、2代目横丁は。

「全力で暖簾(のれん)を「守る・広げる・改革する」を応援します」

をモットーにしています。

まさに、藤森部長さんが話しているように。

私たちも「のれんを守る」とは「信用を守る」ことだと思います。
しかし単なる社歴の長い「のれん」だけでは、決して「信用」は得られないのです。

考えてみれば。

一昔前、といっても四半世紀、25年くらい前までなら。
老舗という「のれん」だけでお客様や金融機関から高い評価を得ていました。
ところが、先ほど述べた倒産の統計でも明らかなように。

今の世の中、世間では起業家がもてはやされ、国も独立や起業を支援していますが。
老舗を継続させるのは、起業するより高度で困難な状況に13年ほど前からなっています。

世間では、よくボンボンだ!オジョウちゃんだ!甘ちゃんだ!などと言われますが。
2代目経営者は、起業家以上に厳しい自助努力が必要不可欠となったのです。

その結果、事業を継がせようとする親も、事業を継ごうとする子どもも減りました。
子どもに苦労をさせたくない、親とすれば当然の考え方でもあります。
子どもにしても、苦労が目に見えているのに継ぐのは蛮勇に思えます。

こうして老舗の「のれん」の多くが、引継ぎ手もなく。
日本中で、静かに降ろされ続けているのです。

同時に、きちんと信用を大切にしてきた老舗の「のれん」は。
今でも多くの方に支持されて、いろいろな「信用」も生みます。

この倒産した和菓子屋さんも、再生のために地域の方たちに署名運動をお願いしたところ。
わずか10日間で、1万2千人もの方たちの署名が集まったと言います。

もちろん、だからといって再生ができる保証はありません。
失った信用、地に落ちた「のれん」を再生する道は、厳しいものになるでしょう。

このような老舗の「のれん」の大切さと重さ。

私たち2代目経営者は、ひと時も忘れてはいけないものではないでしょうか。

2014年10月1日水曜日

「ザクとうふ」の哲学

「ウチは先代(父親や義父など)の頭が固くて困る!」

「ウチは古参の専務がうるさくて、言うことを聞かないんだ!」

「ウチは株主の身内(母や義母や先代の娘=妻)が何かと口をはさむんだ!」

などなど。中小企業の2代目や3代目などが、創業者や先代から会社経営を引き継いで。
自社の改革や新しい事業展開など、やるべきだと思うこと・やりたいことを進めようとする時。

このような言葉を口にする場面に、よく出会うことがあります。

個人的な経験からすると。

この手の話をするのは、圧倒的に先代の息子さんや娘ムコさんなど男性経営者です。
先代の娘さんやお嫁さんなど、女性経営者の方から耳にすることはまずありません。

一方で、他の家族から猛反対された義父の夢を引き受けて。
奥さま(先代の娘さん)に支えられながら、年商を越える投資を実行して。

大規模な工場を軌道に乗せて、その後もM&A手法を駆使しながら。
会社の売り上げを6年間で4倍に、そして日本一のお豆腐の製造メーカーにした方がいます。



作者の鳥越淳司さんは、いわゆる「おムコさん」であり。
あの「ザクとうふ」で有名になった相模屋食料の3代目社長さんです。

相模屋さんでは、お豆腐と縁遠いと思われていた20歳~30歳半ばの女性へ向けて。
チーズのようにクリーミーなお豆腐を作り、イベントのランウェイでモデルに持たせたり。

京都の有名な料亭とコラボレーション、味を極めたお豆腐を作ったり。
誰もなし得なかった、衛生管理の行き届いたオートメーション工場を実現したり。

地方の一中堅メーカーであった相模屋さんを。
今や「飛ぶ鳥を落とす勢い」に育て上げたのが、作者の鳥越さんです。

もちろん、鳥越さんが歩んできた道は平坦ではありません。
実に多くの紆余曲折があって、支えてくれた数多くの人たちがいます。

いわゆるイノベーターとして、業界では非常識だ!とされていることへの挑戦。
販売先のスーパーの幹部からは、会長(義父)のつくり上げた会社をツブ気か!と言われます。

ただ実際に、このスーパーの幹部さんの言うとおり。
工場を作ることに夢中で販売先まで考えていなかった!という現実もあったのです。

このような状況を変えてくれた、相模屋さんと「心中する」とまで言ってくれた新規の取引先。
年商を超える投資に、単なる数値分析でなくメインバンクとなり融資をした地方銀行など。

鳥越さんご自身も、この本の中で「助けてもらって大きくなった」と述べています。

たしかに、人に感謝する、助けてもらった恩義を持ち続ける、というこのような考え方は。
すべての経営者、特に2代目経営者にとって大切な姿勢だと思います。

一見すると。

このような周囲への感謝や恩義を大切にしたから、改革を進められて。
周囲から協力や理解が得られ、改革がなし得たとも考えられますが・・・。

一方で、少し?だいぶ?ひねくれた見方をすれば。
それは、成功したからこその結果論!かもしれません。

実際に、2代目経営者が現状の打破や成長を目指して。
業界や社内の常識や慣習を変えたり、止めたりと改革を進めれば。

悪気があるとか、ないとかに関わらず自然な現象として。

人は誰でも、自分の環境や現状を変えることに大小の不安を持ちます。
また自分の実績や成果、やり慣れたことに手を突っ込まれることに不満も感じます。

2代目が改革を進めようとすれば、必ず抵抗や反対が起こるのです。

そして、多くの2代目経営者は。
冒頭のような言葉を口にして。

なぜ先代や古参幹部、社員、また周囲の関係者から抵抗されるのか?
ではどのように考えて、どのように周囲に接して進めていけばよいのか?などと悩み続けて。

周囲から理解されないまま、周囲を理解できないまま、改革を頓挫させてしまうのです。

ズバリ!抵抗や反対する人たちに感謝できるか?と質問されたなら。
私ならムリ!と思えて、やはり感謝の気持ちで改革は成功しない気がします。

では、鳥越さんは抵抗を受けながら、なぜ抵抗を乗り越えられたのか?

一言で言えば、個人的には「覚悟があった」からだと思いました。

覚悟とは、やはり私なりの解釈では「自覚+悟り」です。

自分へ向けた決意であり、自分や周囲を冷静に見つめ受け入れる気持ちです。

周囲の人に「覚悟しろよ!」と押し付ければ、それは脅迫になります。
困難や不利なこと、危険なことだと「自覚しながら悟って」受け入れるのが「覚悟」です。

この本を読む限り、鳥越さんは。

まずサラリーマン時代に「覚悟」を身につけたと思います。
クレームの嵐の中、土下座をしたり、罵声を浴びせられたりした経験をしているのです。

また娘ムコとして、相模屋さんに入社してからは。
生産現場に立ち、寝る間も惜しんでお豆腐作りを徹底的に学びます。

2代目として、先代が育て上げた会社をキチンと継ぐ「覚悟」を身につけたのです。

そう、やはり「覚悟」を身につけるには。

このようにドロをかぶり、ドロまみれになる経験が必要不可欠ではないでしょうか。

頭にアセをかき、わきに冷アセをかき、恥をかき、メンツを捨て、それでも進もうとする。
そんな「覚悟」を持った人には、周囲の人たちも必ず手を差し伸べてくれると思うのです。

先代や古参幹部や身内、社員、また景気の動向や業界の衰退や成熟化などを嘆く前に。
何より先に自分の「覚悟」のありようを考えて、もう一度、周囲や経営環境を見直してみると。

新たな改革の道筋が見えてくる、そんなヒントをもたらせてくれる一冊だと思いました。