2015年7月17日金曜日

商いの判断は、すべて一目ぼれ!?

え~本日も、備忘録。
越後屋の商い帳シリーズです。

うん?備忘録?越後屋の商い帳?
何だ?この話は?と思われる方は。

このシリーズの第1回目「むかし、むかし、あるご城下での話」編と。
前回の「チャンスは、つかめない・計れない・わからない!?」編をお読み下さい。

備忘録の解説や全体のあらすじが書いてあります。

ではでは、そういうことで。
お話の続きのはじまり~、はじまり~です!・・・・・・・・チョン!チョチョチョン!

○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○  ○

越後屋は、ゆっくりと。

「まず知りたいのは、チャンスや良いタイミングというものは
なぜ自分でつかめない・計れない・わからないのか?その理由や原因だね?」

と言い、武蔵屋の顔をじっと覗き込みながら言葉を続けます。

「もう一つは、チャンスだ!良いタイミングだ!女神にオレは出会った!と思っても
実は落とし穴、ピンチ、悪いタイミング、というように魔女みたいなヤツがいる理由や原因」

そう!それです!と言わんばかりに、武蔵屋は大きくうなずきます。

「その上で、女神に化けた魔女を見抜く法則を知りたい、ということだね?」

ここまで武蔵屋の若だんなの質問を確認すると。

「では、最初に・・・
なぜチャンスやタイミングは、つかめない・計れない・わからないのか?から・・・」

相変わらず、片方の手に杯(さかずき)を。
もう片方の手は、そっと女将の手にやさしく添えながら。

「武蔵屋さん、商いってもんは、チャンスの後にピンチありとか、
ピンチの後にチャンスありとか、こう言われているのは耳にしたことがあるでしょ?」

こう言うと、越後屋は武蔵屋をひとにらみ。
にらむ、というよりじっと彼の目を見つめた、という感じでしょうか。

・・・・・この人は、酔っているのか?それともシラフ?わかんないな・・・・・・

武蔵屋は、するどく自分を見つめる相手の心を探るように。

「はい・・・たしかに、たまに・・・いや、よく耳にする話ですね・・・」

言葉を選びながら答えました。

「言いかえればチャンスとピンチは表裏一体、コインのオモテとウラ
クルクルと変わりやすい、パッと!ひっくり返るという話であるんだけど」

越後屋は、こう話すと、たたみ掛けるように語りかけます。

「昔もそうだけど、単純に情報量が増えて、何百倍にもなった今なら、
まさに混合玉石、チャンスを見分けがつきづらくなってきていると言えるな・・・

チャンスや良いタイミングをつかまえて一気に簡単に儲けたという話とか
反対に、ちょっとしたタイミングや出来事で大きなトラブルに巻き込まれた話とか

これをおもしろおかしく、注目を集めたい、目立ちたいとか、ウケを狙ったり
ロクに自分の目や足で調べもしないで、これこそ正論だ!真相だ!と言い放ったり

こんなヤカラが、ネット屋とか、かわら版屋などで幅を利かせているわけだね・・・・
これがつかめない、計れない、先が見えない、という表面的な原因なんだけど・・・」

ここまで一気に話すと、杯をグッと飲み干して。
フゥ~と一息、空いた杯をすっと女将に差し出して、酒を注いでもらいながら。

「そもそも、人間なら誰でも持つ2つの心、考え方があって
一つは世の中のどこかにチャンス、おいしい話があるにちがいない、こういった願望や欲望と

もう一つはチャンスか、良いタイミングか、正しいか、間違いかなど、判断するその基準が
実は必ずと言って良いほど、人は偏っている、これが根本的な原因と言えるだろうね・・・」

と続けるのですが、何やら眉間にシワを寄せながら。

「でも情報量が増えて、細部までわかることで、チャンスやタイミングが分析しやすくなって
かえって見分けや区分けがしやすくなる、客観的に見られる、私はそう感じるんですけど・・・」

武蔵屋の若だんなは、こう言うと食い入るように越後屋を見つめました。

「そうだね、たしかに選択肢や情報量が多ければ、分析はしやすいかもしれない
細かいところまで見えるから、細かい違いもつかめるかもしれないね・・・」

今度は一転、目を細めてやさしい眼差しでとなりの女将を見つめながら応える越後屋。
自分の話を真剣に聞いてない、目の前にまるで自分はいないかのようなその態度に。

「でしょ!しっかり分析して、よく吟味すれば
チャンスや良いタイミングを見わけられるんじゃないですか?」

少しムッ!とした武蔵屋は、やや大きな声でまくしたてます。

「ところが武蔵屋さん、その選択肢や情報に
最初から色や膜(まく)のようなものがついているとしたら?」

そんな武蔵屋の様子もかまわずに、越後屋が女将に微笑みながら。

「一体、どうなると思う?そう女将、お前さんはどう思うかい?
最初から色つきメガネで、世間様やまわりを見ていたとしたらさ?」

と語りかけると。

「いやですよ、越後屋のだんなは・・・武蔵屋の若だんなが真剣に話しているのに
そんな目で私を見つめて・・・色メガネは色メガネでも、ちがう色がお顔に出ていますよ・・・」

と微笑み返して女将が応えるもんですから、見てられんわ!とイライラしながら武蔵屋は。

「そうですよ!越後屋さん!女将とイチャつくのは後にして、今は私と真剣に話してくださいな!
私ゃ~どうしてもチャンスやタイミングをつかんで、庄内屋の若だんなを見返したいですよ!!」

ついホンネがポロリ、と出てしまいました。

おやおや、ヤッパリね!と思いながら、おだやかな表情を浮かべる越後屋が。
そのまま武蔵屋の若だんなの方に、やさしい眼差しを振り向けると。

「いやいや、悪かった、悪かった、武蔵屋さん、真剣に聞いてないわけじゃないんだよ
いやね、最初から色メガネで見ている、というのは男女の仲も同じで・・・そう、一目ぼれね・・・」

と話すもんですから、武蔵屋はますます興奮して。

「だから!商いの話をしているんで、男女の恋仲の話をしているんじゃんないんですよ!!
第一、私ゃ女に一目ぼれするような軽い男じゃありません!一目ぼれしたことないですよ!!」

とまぁ、お酒で赤くなった顔をさらに赤くして。
かみつくように話すと、越後屋はさらに優しい顔になって。

「いいかい、若だんな、女に一目ぼれしたことがない、ということが違っているんだよ
人は男も女も、恋仲になるのはすべて一目ぼれ、そして商いの判断も、すべて一目ぼれさ・・・」

またまた女将を見つめながら応えたもんですから、さぁ大変。

「商いも一目ぼれ!?そんなわけないでしょ!そんないい加減なことで商いはできないでしょ!
一目ぼれで商いしたら、失敗が増えて、いつか店つぶして、身代なくすのがオチですよ!!」

武蔵屋はヒートアップ、興奮もピークになります。

さてさて。百歩譲って、男女の恋仲が一目ぼれだとしても。
商いまで一目ぼれ、という越後屋の言わんとしていることとは。

この話は、またまた次回に。
いよいよ最終回、チャンスの女神が魔女に変身するナゾも解けます。

お後がよろしいようで・・・。

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